毎朝の 純白の心を 引き連れて 都会の空気に 汚しに行こう
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もう二度と会えないくせにインスタで仮想的にきみを繋ぎ止める
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白線を 母似し人と 渡り切り 「ありがとうね」と 安堵の温声
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君見つけ じっとり魅入る 炎天下 手元のアイスが 溶けてこぼれた
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ゆるやかに雷鳴一つあったあと雲は薄れる降らないままに       
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いいところだけを選んで抱きしめる器用なわたしでごめんなさい
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紫外線、他人の悪意、死の予兆 目に見えたなら避けられるのに
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いつだって決意の時は下腹に力を込めて闘っていた
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よく知った道を一本逸れただけ 燃えてるようなブーゲンビリア
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月赤く 地球の争い 嘆くよう 愛を忘れず 助け合えよと
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底なしの不安が情報食い尽くしあたまがいたいよねるねるねるね
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気泡たつガラスの海をはめている人差し指が連れ出す電車
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くねられてくねるくねらるくねられられる秋に返しを待つということ
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介護への道ゆるやかに歩む日々 枯れ葉と若葉の交わる木陰
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ともしきは気持ち良さげに飛ぶトンボ 残暑の空を気負わず進む
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頭では食べてはダメだわかりつつジャンクフードをむさぼる幸せ
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鉄筋製無名の墓標に出入りして 今日も市街/死骸の隙間を縫い取る
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足取りが重く進まぬその訳は味噌と人参のせいではあらず
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わたくしの気持ち次第で蝉の声 憂いにも悦びにも聞こえ
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もう一度 堕落きせきは起きるよふたりなら アダムとイブの末裔だからネ
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歌人うたびと担架たんかの空も絶え絶えに 黄泉よみへの一首を思い巡らせ
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AIが「風呂無理せず」と言うならば そうしてしまう自分がコワイ
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物体に宿る記憶に絆されて 季節を幾度見逃しただろう
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夏の夕 もはや長くて 空は澄み 人の長し なほも飽かざり
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さなぎでも愛してくれた君だから空へ行けるよわたしの羽で
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朝方に 風に紛れて 君の声 聞こえし夏の 空がまぶしい
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暮れかけて 行きつ戻りつ飛ぶ蜻蛉とんぼ 浅葱あさぎの空に弦月さがす
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唐揚げを揚げる妻の手さばきにほれぼれしながら飲む缶ビール
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縋りつく愛に未来があるのならルーブルのように綺麗に飾って
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ドア付近 手提げ片手に 揺るる車両 片手スマホに差す 晩夏の陽
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