晩秋の色葉散る庭大輪のキダチダリアの薄紅揺るる
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起きるため眠る獣の四畳半 金魚はいつも横を向いてる
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空白に勝手に咲いた水仙が勝手にしおれて勝手にさびしい
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もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
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気が楽と言うけど私の心臓はそれどころじゃないの貧乏ゆすり
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あぁ、君のいつも上がった口角は僕を倒せるやわらかい武器
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朝四時の空気の匂いは 独りきり コンビニ着くとヨシダさんいる
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暮れてゆく部屋の机上にスリープの明りの点滅するコンピューター
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哀しみに刹那打たれて落丁の次第に増えし人生を生く
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海に僕捨てられたからヴィーナスに片腕あげた十六の冬
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乗っかって ノリに海苔にもノリノリで 君と黄身とが踊り出したり
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「こんばんは お疲れ様です」業務連絡のようなメッセージが君は好きなの?
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去りぬ人 恋しき君の影追って 追っては追って 僕は夢を知る
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あの頃の 優しさ故の涙抱き   ただ此処に飾る 我のドライフラワー
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焼酎のソーダー割に柚子ザクザク「酔いどれ天国」一人気ままに
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シャンメリー そっと冷蔵庫の隅に入れ クリスマスに向け 気分高める
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全部見て全部忘れる生きているご飯を食べるまだ生きている
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通ぶってあれやこれやと試しつも 白いご飯にまさる快なし
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ゆく秋の名残惜しきは枝々えだえだに僅か残れる桜紅葉よ /明日から冬らしく
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納豆に日頃の苛々ぶつけても健気に美味い ごめんね。納豆。
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夕餉まであとしばらくの間がありて 寝転がったら眠ってしまひ
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「納豆を高速回転させるとき 苛々してるの覚えて置いて」
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あんずって故郷のアイスの味に似てる よねって言われて微妙なあんず
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仰臥して鳩尾あたりに手をかさね 呼吸をひとつ、もひとつ深く
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学校の音楽室からもれてくる練習曲を月も聴いてる
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窓に寄り 鰯雲見れば 君が弾く チェロの低く 空に溶けゆく
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シナプスはようの粒子にときめいて月に微睡む雲の白網
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アイルーのケープも干して 日は暮れて ちま猫ちゃんは おかおをあらう
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列を成す 億の細道 あー神よ 仏よ祈る 夢子夢太郎
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亡き母は荼毘に付されて小仏を骨壷に入れる箸が震える
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