学者から琥珀と呼ばれる木の涙 太古に言葉は存在しない 

かなしみに痛苦、いっさい僕のもの 誰にもやらぬ君にも見せぬ 

未消化の まだ二十一の彼の死に  隠れてこっそり手向ける線香 

空からの光線が降る今日もまた日傘の君を次々追い抜く 

出来るなら 君の吐息を 吸い込んで 光合成を してみたい朝 

深追いの夢にうなされ寝返れば夢の裏側雨音ばかり 

日輪に背き親にも背きそっぽ向くながき脛もつ向日葵眩し 

Angerの あなただったか Ankerは いなくなった日 失った自制 

韻律の棹を逸れゆく雁にして嗜みほどの薄ら髭もつ 

明朝体フィルムカメラの文字列は 耳のそばでシャッターを切る 

この夏の思い出が欲しかったんだ 言い訳ばかりの線香花火 

百里飛び 深々吸い込む 穂の風は 霜降りよりも 美味だな烏 

君の焼くオムレツを思い出しているちょっぴり欠けた黄色い月に 

ガチャガチャと偶然を楽しんでいるつもりだったね君も私も 

この指に露店で買った百円の指輪でもはめて好きだと言って 

幸せに 良い思い出だけ 持ち去って 愛したことは 後悔しない 

あやまちを犯さず挫折もしたことのないひとのいう『普通』がこわい 

「夏が来て」ここから先が歌えない 夏が来てなんだ? 恋でもするのか? 

絶望を 肺にありったけ吸い込んで 交換しようか 蠱毒のように 

うまいものたらふく食わされ艶々と円く描かれるわたしのおなか 

寝転んで 畳の縁の 文様を 数えてあそべる夏は過ぎてて 

シャワー機が 木枯らしのような 鳴き声で つまりそれだけ 年月を経た 

本棚にガラクタばかり載せたから廃品として本を手渡す 

「かったるい」の「たるい」のことを考えて「かっ」を無視してすみませんでした 

睡蓮を水蓮と書く陽気さは結婚したら消えちまったよ 

繋いだ手だけが二人を繋ぎ止める唯一無二の方法だった 

臆病な指が「あそぼ」を消していく 流行病はやりやまいを言い訳にして 

冷房に当たってすっかり固まったからだを起こし朝で解凍 

聲のない祈りをさけぶ人間は厠にくねる一本の管 

濁りつつ僕らを映す水たまり 駆けて飛び越え終わりくる夏