冷たい手バケツひとつに襤褸布ぼろぬのの恨み深まる水もしたゝる
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月のため外に出るのも億劫で綺麗でしたと嘘つきと成る
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あったかい日のあとにまた寒い夜酒蒸し作り昆布茶を飲み
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治らないわけじゃなくって治したくないから抉った もう別の傷
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彼のひとは 五月の鯉の吹き流し 取り残された心臓ひとつ
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街灯にユスリカの群れ 東京にまだ居場所のない四月の僕ら
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三十詩看板にときめく詠い手多いほど泡沫晴れるハッピーアワード
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往来の絶えた通りをからっぽの郵便箱が否認している
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じわじわと追いつめてやる敵陣にと金部隊をどんどん送る
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目に見えぬ 何かに追われ 日々の中 会いたい人に 会っていますか
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銃座にて 見据える敵は 幼き日 我を守りし 神戸のパン屋
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強き風 波の飛沫に舞ふ鼓動 武者は甲板髪を靡かせ
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風光る 花の木の下 桜散り 葉桜茂れる 匂いむせびて 果たせぬ想い やるせなく  
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衣替え 麻のシャツにはアイロンを ビール片手にハンガー眺める
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春の海 霞み渡りて 風光る 富士の雪嶺  凍つ風吹きて 白雲走り 旅の空
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「水の色は水色ですか」と問うている 朝日を弾く水面を見ている
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御仏の 心宿るは いずれなる 因果の果てを 見つむ火の鳥
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レモン梅ゆずに洋梨西瓜桃 酒の味付け心洗って
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沈みゆく心に色があるのなら きっと深くて深い紺色
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気づかいの小鉢ひとつを持て余し君にすすめる 月、満ち満ちて
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意を汲めば「広告$なき世の心地良さ」飾る短歌は清らかに映え
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懐かしき母校の前の桜の木闇にまぎれて校歌を歌う
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ロジックは「Utakataいいね」と言われたい立ち上げ人の熱きエールで
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蛙鳴く里山の宿台無しに 女房がんがんテレビをつける
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ひと搔きに揺れふた搔きに流されて 海月のごとく芯なき我が身よ
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堕天使が いつか天使に もどること 夢を見ながら 今夜も眠る
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一日の 終わりの癒やし 此処にあり うたかただけに 残せる記録
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忘れ物 したるが如く 振り返る 白花水木 楚々と咲く庭
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わたつみの 底の記憶を 懐かしみ 黒き螺鈿(らでん)の 貝は煌く /螺鈿の宝石箱
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惜しまれて 去るひとありき 池の面(も)に 春愁の渦 立ちて消え行く  /麻のゆき氏
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