色褪せし表札にある取り消し線 故郷に残る旅立ちの日よ
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吾子見送おくる寂しさ笑顔に隠しつつ テールランプに手を振る寒夜 /また来年
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ちま猫も添ひ寝の母の甲斐ありて 野生の力四肢に漲る
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柔らかな光あふれる雨上がり 心地良さげに冬薔薇ふゆそうび揺る
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時間だけ共有できぬ貴方とは鏡のような共鳴がある
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シャンプーが少量で足る洗髪はうれしくもあり悲しくもあり
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流れゆく 三途の川の 河原にて 閻魔と石積み いろは帰すまで
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鶴ヶ多賀盛岡姫路伊賀上野松山熊本城に行きたい
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薄暗き師走の雨は細々と師走の門の瓦を濡らす
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でかい犬 ああでかい犬 よだれ滝 尽きることなくボールを濡らす
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すやすやと眠る子の頬がほころび健やかであれと願うばかり
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キャベツしめじ ウインナいれて 焼肉のタレで一品 ビールが欲しい
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印象派絵画のように思い出は霧の向こうにベンチがひとつ
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緩やかな心中じみたまどろみに選ばなかった向こうを思う
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女子からの手書き便箋手にとれば 五十年余の刹那を隔て
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雨後の午後 和らぐ寒気かんき 曇天のもと 南天に 光りぬ雫
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賀状出す我が人脈も狭まりて卆寿を越せば僅かとなりぬ
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老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
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いなり寿司けんちん汁に串揚げを作り孫待つ猫とじゃれつつ
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核兵器も物価も知らぬ猫はおおきく手を振り歩く園児に威嚇したり
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名も知らぬ星を紙コップのサイダーに落として互いに一口ずついただきます
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円の価値はゴミクズとため息をつくあなた無職実家暮らしゴミ出し親任せ
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眼に見えぬwifiの糸を手繰りつつ 顔無き憎悪救いはいずこ
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父母を父母と呼ぶこと出来るそれって当たり前じゃないよね
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亀ちゃんも磨いてもらゆる 微笑まし 綺麗になって 新年ですね😸🐢
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何もかも忘れて眠れ ひとときは 晩ご飯なんて 何かはできるさ
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5時時報防災無線ふりそそぐ主よ人の望みの喜びよ/毎年冬はこれ
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あらおかし小六の子より「いいね」来る野鳥の写真 世代を越えて
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壁に揺れる光の網を綾取りで取って取られて朝のうたかた
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とびきりの笑みで手を振る いま下を向いたら泣いてしまう気がして
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