沸点は十分承知してるから トドメのひと言決して言わない
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セキレイの後に続きてのんびりと抜かさず歩く冬の温き日
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字が綺麗それだけなのに得をする人柄までも綺麗みたいに
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火葬場で 「皮はどこへいったんだ」と 子供が発した ぴったりな言葉
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人知れず春の種蒔く人のよに雨はそぼ降る日の出の前に
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星冴えて 雪のあかりが ほの照らす 遠ざけてきた さきぬくもり
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朝六時下弦の月が不安げに抗癌の日に付き添いて来る
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いつの間に六十路を超へし変わりたる嗜好に思考これ摂理なり
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病床の 妻と分け合い 食べた美味 いつの時代も 桃の缶詰
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音楽を流さず家事をこなしてく 無音の音を今日は楽しむ
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家の中行く先々に時計有りせかす用など有りはせぬのに
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音程が狂い過ぎててサビのとこ来てやっと知る『粉雪』なのか?
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経年の 劣化も変化も 美しく 風雪に耐え 楠の立つ
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大寒の陽は燦々と白梅の固き蕾に枝の雀に /三月の陽気
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夜明け前 下弦の月が 照らす道 田舎の家々 灯りがともる
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冬の朝登りの坂を走り来たマスクの子等の荒き息聞く
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難題の関税・安保・温暖化そこのけそこのけトランプが来る
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あちこちの 不調を抱えた アラ還の 話は咲きぬ 梅より先に
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老い二人 きみらが帰りし昼下がり 畳む布団に匂ひ残りをり 
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人生の 切符は一枚 みな平等 片道切符で どこまで行こう
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ふくふくのスナップえんどう筋取らば青き匂ひに母の浮かびぬ  /お手伝いの記憶
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しまむらに明日あした行こうか明後日あさってか  本気で悩む笑えて幸せ
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あんぱんと豆乳で栄養補給する そんな日もアリ 明日は来るさ
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根雪積む故郷の友手習いのシマエナガ歌う絵手紙届く
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鍋の出汁沸いて昆布を取り出せば冬はゆったり時間がすぎる
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可燃ごみ提げ来る老婆に声ひとつ電信柱の上からカラス
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花のない庭にまぶしき甘夏や酸甘の美味いのちの満ちる
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力強く先頭に立つ君だから押し付け過ぎてごめん親指
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悩み事 黒縁写真に 話し掛け… あの頃もっと 話せば良かった…
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補助具着け歩くワンコに歩を合わす若者の眼に温もり宿る
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