水無月の雨に打たれてヤマボウシ一人バス待つ私の横で
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梅雨晴れ間しばし賑わふ公園に赤児はじっと遊ぶ鳩見る
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わすれんぼ治らぬままにまた今日も迷子の鍵に冷や汗の滝
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朝市を覗き歩かば懐かしき老人会で編みし伯母の籐かご
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暑くとも日射しが欲しや今日の日は干し物揺らす少しの風と
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二度寝して 始まり遅い 休日に 雨が加勢し 雨音を聴く
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幼児おさなごを膝に抱えて二人して歯磨きしてる今日は父の日
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二時間で二つ県超へ湯に入らば湯煙り向こふの方言温し
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本当か天は二物を与えずとたった一つもくれないくせに
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慣れぬ手で ズボン繕う 雨の午後 空も心も 潤む梅雨入り
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久しぶり自分の顔をアテに呑む ビジネスホテルのデスクの鏡
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浄土では父や母には会えたのか少し急いで旅立ちし兄
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ぽつり立つ清流の岸の釣り人に幾年経てども亡兄が重なり
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フル・ムーン 「もう赦して」と 願っても 御仕置つづく 変われぬ私
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雨音に包まれながら目を閉じる 雨のメロディー音符が踊る
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愛猫にれるぬくもり 体温と 甘えてくれるその優しさと
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檸檬の実 ゆっくり膨らみ 成長す その愛しさや 主張もせずに
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改札の軒 水無月の つばめの巣 親鳥を待ち かおを出す
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飽かず降る雨に包まる鎮守森 息深くせば緑沁み入る
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恨み辛み人を呪って逝くよりも『無』になることが尊いものだ
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黎明れいめい慟哭どうこくの如 荒れ狂う風雨 硝子戸叩く 水無月
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軽やかに洗濯物ほしもの乾く嬉しさよ 梅雨の晴れ間の小さなシアワセ
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船の旅日本一周ご夫婦に土産をもらいちょっとジェラシー
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道標みちしるべ  示され歩く この道で 出逢えた人に 渡す言霊ことだま
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イヤホンで占領された子の耳に「行ってらっしゃい」は届かなくて
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梅雨の夜深層心理うごめけば罪の淵より湧き出づ祈り
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借景なりあたらし朝の窓外のサツキ紅白愛でたき花よ
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雨がたずね土やはらかに微笑めば庭の友らが豊かにいそしむ
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酔いざましがてら 語らいゆっくりと 同じ速度で友と 駅まで
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雨が止む一瞬狙い駆け出した だるまさんが転んだみたいに
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