心配がなかった頃のふりをして 実家の椅子に深く沈んで
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しあわせは甘いみかんに当たったり意外と そこらに落ちているらし
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「いつ来たの」何度も父に聞かれるが そのたび笑顔が咲くからいいや
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菓子折の ト書きよみつつ 餅めば 一向一揆の 兵糧が租と
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今日はまた 音もなく雪は おちてくる 軽やかに しかし明らかに地に
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手術中 静かな家族控室で飴ちゃん分け合う祈りの時間
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今朝の雨 百花開くを導きて 昼には細き春雨となり
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一口で僕の歴史を辿らせる 母ちゃんのスープは魔法と思う
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祈りつつ入試のあとの氷雨にも土わり芽吹く蕗のとうかな
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梅の花ミモザの花が如月の雨に濡れてる春呼ぶ雨に
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「ただいま」のあとの賑やか 就活も卒業も一旦、春に預けて
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時経てど 旅と映画と音楽を 語り笑ひし時代とき色褪せず
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冴へ返る今朝は 再び手袋をはめて通勤 雨の如月
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菜の花の香りがさそうお昼寝を土手の芝生でしてみたい春
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樹々の間に小さく聞こゆはそら耳か優し調べは春の声やも
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正解を選べなかった僕たちのノートの余白に降る、雪と酒
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日の当たる土手を歩かば足元に春の便りや土筆つくし三本
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現存の天守に続く急階段 戦の知恵を今に語らむ
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ヒヨドリに花芽を食まれ紅椿 一輪二輪春を待ちをり
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花粉など知らずに春の中にいたれんげ畑のわれが懐かし
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朝の陽にひときわさやき枝垂れ梅 花から花へ蜜蜂群れり
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雪柳 早も数輪咲きめて 陽射し無き日の慰めとする
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寒し地の雪は溶けたか二月尽 雪洞ぼんぼり灯る春近付きぬ
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庭の隅 二十年はたとせ共の古鍬よ出番失せては病を憂う
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編み上げて春はもうすぐそこだけど髪の悩みにベレーをかぶる
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令和の世 個性派クセ強 褒め言葉 悪事せぬなら己のままに
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裸木の坂の途中の大イチョウ剪定されて少し寂しき
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三月の イオンモールの 賑わいに あてもなく買う 春色ブラウス
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伊勢詣 神秘をまとふ その杜は 懐深く 人を誘なう
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雨催い 月は朧に薄れゆき 寂しさ募るひとり居の夜
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