いつか来る別れを知らぬ顔をして みそ汁の湯気に家族は和む
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「普通」という名のバスをまた見送りて 私は私の歩幅で帰る
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プラマイがゼロになるよう神様が 与えてくれた私の余生
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「だめな僕」という付箋を貼りすぎて心は糊でベタついている
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天上の空を陣取る黒雲を店主と見上ぐ公園マルシェ
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赤き実の光りし庭の万両を啄む鳥と睦月が去りぬ
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竹を食むパンダの消えし園のなか働く人の靴の音ひびく
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アルバムをめくりて若き吾に問ふ 夢見た未来獲得出来たか
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きさらぎの 神に捧げる さかきには 新芽がのびて 雪のふる春
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葉の奥に過日降りたる雪残り単色ビオラに一色足したり
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「しわよせて笑うお前の顔が好き」と言われて汁粉煮るお人好し
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街宣の車さえ見ぬ過疎の町 真冬日静かに夕映えしき
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いつもなら隠さず物言う賢人の言わぬ本音に優しさを見る
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春近し ぬかるむ畑に空豆の 蒼き芽吹きが愛おしきなり 
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スノームーン最初に呼んだ人の名を知りたくなった二月の満月
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切り捨てて 痛まぬ心の鈍感を 冷静と呼び 鬼もこごえる
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優しさを 持ち合わせたる 君の目に 映る未来を 共に生きたし
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オレンジに熟すクチナシゆらゆらと枝葉の揺れる風冷えの午後
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雪にさす 朝陽あさひの色は 生成り色 忘却の彼方かなた 竹を編む人
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同じこと今夜も話す受話器越し 祖父はただ今二巡目生きる
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へこんでた 友が笑ってくれたから 昨日の失敗 しといてよかった
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ゆうゆうと冬田の空を旋回すトンビ眺めて通院の道
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月一度四季にて色変ふ山走り村里に湧く清水汲み来し
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カッタタタ大樹を叩くコゲラ来て静寂の底に立春の音
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冬の夜は甘酒ミルクに和みたり良く眠れるの魔法信じつ
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ひい孫が補助輪外しあぶなげに自転車練習冬の公園
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やわらかく煮える卵に託すなり ごめんと言えぬ私の愛を
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吾は良い このにだけでも 健康を 返してやりたい 切なる願い
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冬越せぬ 花のむくろを 土に埋め 来春にまた 逢はむと願う
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抱きあふはなくなりしこの年月を越えて息子の目はあたたかし
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