沙汰のなき子等を思いつつ睦月尽ユリ根の一片外す手とまる
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愛犬の いない暮らしに 慣れながら 「いってきます」と 手を合わせ
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思い出す貴方きみはどうしているのかな 元気な日々を送ってますか
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鉛筆と 紙があるのは いにしえの 森の恵みと 人類の知恵
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わが恋はオアシス見せる蜃気楼空しく消えた後の乾きよ
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「ありがとう」そのひと言の破壊力 「優しさ」引き連れ返ってくるね
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あと3人あと2人とドキドキす 辿り着かないオクラホマミキサー
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この星の裏側にある夕焼けをエンドロールと呼んで、見つめて
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雪害せつがいのラジオ聞きつつ炊事場すいじばは水のぬるみにはるおもはする
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この空の青の碧さを伝へたき人も無ければ開く口閉づ
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冬のおり 御霊みたまとらはる父母ふぼしあれば われ置きりてゆけ花の風
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転居して 磯鵯イソヒヨドリの声遠く 猫と暮らすも やや寂しくて
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幸せは案外そこに落ちていて踏んだ痛みで気づいたりする
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母遠く在りし日を知る梅の木や切られ砂利庭 残り香もなく
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くるくると渦を巻き巻き咲き誇るラナンキュラスは心の深部
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凍土から解放されし球根はいつもの通り花芽をつける
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恋う鴨の旅立つ前の水面には二羽で名残の線を弾きけり
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母親を移動する際全体重あずける時だけ男になりたい/(体力なくて⋯)
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世界から消えてなくなる夢を見た 朝の光に血脈を透く
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幼少に祖母と過ごした春の日がふと蘇るセビアの色にて
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冴えかえる桃の節句に雪舞えば言の葉凍えとこに潜りぬ
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柔軟さ失い老いの加速する義母を案ずる日々始まりぬ
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ひさかたに君の消息聞く午後は少しの道も遠廻りせん
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自分の目信じて探す好きなもの うまくなりたい短歌をもっと
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ベッドではラジオ楽しむ聴き逃しひとり静かに文芸選評
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まばゆける車窓に揺れる虹の糸 蜘蛛の啓蟄 うらやみてひる
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わがたま幾度いくど冬の背 見送れど 凍え篭もりて知らず啓蟄
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うつせみの身を追い立てし春のに彼岸のつとめ思い出し
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ありがとう あきらめかけた夢のこと 笑わないで聞いてくれてさ
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暮れなずむ空 輝ける明星に 憂ひ忘るる ほんのひととき
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