薄墨に さかづきをもつ君がいて 光るわたしと 二人きりの空 / 三日月と明けの明星
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もう戻ることはできぬと知っているカナカナカナとひぐらしが鳴く
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新築の お墓に あるじ 納めれば あかねの空に しろいアジサイ
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一匹の 蟋蟀こおろぎの声 ききながら 眠りにおちる とがなくて死す
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山の端の ちっちゃな青空を めざして 雨を泳ぐよ くじら12 / ドライブBGM
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掃除機の手を止めじっと立ちつくす今この時刻原爆落つと
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トマト枯れ 空いたところに 半額の ヒョロきゅうり苗 植えたらすくすく
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山並みが 重なるはるか 遠くまで ここにいるよの 木霊を待って / 山の日
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盂蘭盆會の ご先祖たちは なに思う 帰るところが あれば嬉しい
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ピクリとも 動かぬ森の 木々たちの 沈黙の底に 流る水の
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魂の 入れ物ひとつ ぼんやりと  駅のベンチで 電車 見送り
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虫食いの あとは涙の かたちして くもり空にも 朝顔は咲く
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この夏も仕舞いの市民プールからふわり飛び立つシオカラトンボ
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あした咲く つぼみさがして 安堵する 半分いじょう かれてる朝顔
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隣家となりやの 煙突屋根の 三角の 影がとどけば 開く秋の戸
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ひりひりと波立っていく心なりほんの些細な出来事なれど
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雷光の度に強まる雨音を一人聞いてる音の無い部屋
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石垣に垂れ下がる葛花咲きてシジミ蝶いく蜜を吸いつつ
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亡き夫の好みしおはぎ供えんと朝から小豆コトコトと煮る
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稲刈りの すすみ具合が あいさつの 田んぼの町の お通夜の席の
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露結ぶ 中秋の月 おぼろげに 絶えた虫の音 静かに包む
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錦繍を バックにわれを 撮るつまの 落ち着きのなさ 笑う十勝岳
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溶け残る角砂糖こそ甘かりし夜更けてそこに灯る思い出
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熱闘は 悔し涙に たそがれて 雪のにおいの 空を見上げる / 日ハム
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雪道の 峠のカーブ 右ゆけば トンネルあかく 我を吸うなり
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豊作の冬瓜欲しがる人わずか所在なさげに小屋の隅っこ
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人びとは 縦横無尽に 行き交いて ひとりたたず 駅コンコース
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桜葉さくらば 一葉ひとはのこらず 落ち果てて 届かぬ手紙 どどと着くよに
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風邪の子に焼くオムレツの甘い香と休む仕事の後ろめたさと
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鳥渡る 諏訪湖の水辺賑わかせ冬を遊べや春帰るまで
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