人伝に流れ見るよりこの耳で 聞いた言葉をお守りにする
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灼熱のアスファルト這う虫のごと自転車こいで礼拝に行く
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たんぽぽの綿帽子らのささやきにそよと吸ひ込まれゆく白き蝶
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幼子が目に映るせかいのかけらをちひさきリュックにすくひ入れをり
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広島をヒロシマとふ名で呼ぶこの日祈りは深く決意は固く
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老いたに 足腰ささえる コルセット 行きは歩いて 帰りは抱いて
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老いたは 眼も霞んでる 時も近い それでもあなたは わたしの仔だもの
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お決まりの便りがあるのがよい便り 今日食べたもの今日のお仕事
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川の底海の底へと流れゆく誰も知らない静けさの中
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あんなに喧しかった劣等感の消える時はなんと静かな
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前を向き土を払って覚悟決め 歩みとともに君が薄れて
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火にくべて煙撒かれるあの船に あなたの影は見当たらなくて
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秋が来る 君の毛布の 内側に この幸せな 日々の隙間に
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この星は地軸がすこし傾いてお盆を過ぎれば虫の音聞こゆ
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テクストとタグの溢れた浩瀚こうかんの海に隠れた怪物を喚ぶ
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蝉はまだ夏おしみつつ鳴くけれど空にちらほら秋の雲あり
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貴方越し まばゆい光 見上げる背 流れる曲も あの日と同じ
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愛犬とお盆に父の墓参り きっと向こうで目を細めてる
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飛び跳ねる仔犬の体抱き上げて頬ずりすると小さき舌で舐め
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坂道で米を持ってはくれないが 家路を急ぐ理由は貴方
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素人が死を安直に表現の世界に持ち込む痛痛しさよ
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音漏れの環境音の中に知る 聴いたことないセミの鳴き声
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美しき 尖塔真直ますぐ 空に伸び 訪ねてみたき 異国の街々
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衰えぬ残暑の車上に舞い落ちた一葉きりの秋の先触れ
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あの子と観たい映画があるのに直接声をかけられない女々しさ
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何気なく時計を見ると3:11まよなかで言い得ぬ不安を抱いてまどろむ
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奥歯すら浮き出す程の綺麗事 受け入れまいと歯を食いしばる
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涼しげな 器のような 昼の月 空にはすでに 秋の食卓
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あの人はあんなに上手く泳げてる 僕はここでは息もできない
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ペディキュアをとって現る褪せた爪サンダルの跡甲に残れり
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