紙芝居 ぼんたん飴と 散歩道 あの日から来た 今日のやさしさ
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行き場ない 迷子の気持ちと 手をつなぎ 耳を澄まして 道場の朝
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大雨の中すずめが飛んでいく電車は朝から止まってるけど
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訃報に喪服がないと焦る夢見た 服なんか最後でいいのに
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クーラーがきいた部屋から飛び出た瞬間みたいだな9月の五時
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一期だけ見たアニメの完結みたいだ 元彼の「結婚した」は
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春の日に子供は地面を見つめて舌から下に水を落とした
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半袖に死んだ猛暑が縋りつき「また来年」と約束をした
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よるふけて下宿にかえる苦学生 おばさんの 味おにぎりのまつ
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すこやかに個性を競ふ老若に男女にみな同じかほのうたかた
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水たまり 輝く粒は、ランウェイで私を照らすライトの代わり
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白球を追いかけている人たちを横目に独り下校する夏
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隙間から導き出した結論を消しゴムで消してまた最初から
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先生の手作り温泉大にぎわい お泊まり保育「ああ、いい湯だなー」
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久々に一人の朝食これもいい ジャズ聴きながら家事後まわし
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二度咲きは小さく可憐 夏空に薄紫の藤の花咲く
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口角に残っただけの笑み残しどうせなら恥 楽しめよ俺
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おお涼し!ふるさとの朝 天然のクーラーの中で深呼吸する
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真夏日も桜の木陰で癒された 照りつけるにキミが恋しい
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大空にピンクの大輪 芙蓉咲く 色鮮やかに「夏だ!夏だ!」と
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「暑くても食べらさるしょ」の祖父の字と富良野メロンのあたたかき涼
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読みきれぬほどにメールはくるけれど一番ほしい君からこない
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「てへぺろ」の絵文字で終ったラインみてちょっと笑ってえんぴつを折る
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硝子戸一枚へだて漏れきこゆ工兵のこゑ 大伯父よ去ね
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日灼けせる空地の壁へ病みしまま囲はる弟切草のおとうと
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英靈碑肩欠けて零る菊の蘂 かくごとくひと殺むるは雄
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温かいココアを飲めばとろとろと身体の中に灯火ともる
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ぶちぶちとちぎれた心にバターを塗ってこんがり焼いた後に捨てる
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「うごいたね!」一歳にっこりママを見る キミももうすぐ兄ちゃんになる
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祈るよにいだきよせるよ言葉にはならぬ気持ちに突き動かされ
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