目の前を日焼けした子が駆けてゆく慌てなくても夏はあるわよ
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いつだって元気なふりの向日葵の夕暮れの背にかける労い
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あなたから巾着袋をうけとったわたしが死ぬるわけにいかない
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おみやげを見ると死ねない わたしの死後の親しき人をおもいみるから
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我がつまの作りしカレーは絶品で娘を誘う口実にもなり
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今日もまた暑くなるのか 涼風と虫の音いたる朝の平和よ
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ねこたちに休みはないから日曜も同じ時間にご飯をねだる
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午後7時 「暗くなった」と呟いた 鬱で休んで 無駄にした夏
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金髪が風にたゆたう今ぼくは秋のはじめの一つと数ふ
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風呂上がり ブローがさほど苦じゃないし汗も吹き出ぬ 秋なんだなと
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中華まん夏に食べるも一興だ明日セブンで立ち食いしよう
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船の往く中川運河の倉庫群 荷役に残る昔の欠片かけら
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リンゴ酢の空きビンごみに出てたから親近感がわく出勤前
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我ながら美肌だなあと自画自賛アラ還なれどシミしわは無し/リンゴ酢効果?
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シクラメン居心地いいのか十ヶ月 次々現わる小さなつぼみ \ 11月からずっと咲いています
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生かされて何とは無しに生きている防災準備は何もしてない
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木々の枝葉がわたくしの頭を撫でて慰めようとしていた土曜
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納豆を食べる程度の気構えでぜひ面接にいらしてください
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すくわれて向こうに行けと流される小魚になり途方に暮れる
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日々を詠む うたの しずくの 集まりて  渇く心に 慈雨のじんわり
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シャリシャリと月の形の梨を喰む夜暗がりに小さく泣いて
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同クラは出ない 水泳決勝戦 大歓声に プールが割れる
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澄んでいる空のかなたにいる人へ 見えるか 私が抱いた赤薔薇
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秋の夜に見上げた月の正円を最初にきみに伝えたかった
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敬老の心こもるる飾りつけ集う笑顔に感謝あふれて
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あんたってなかなかひどい奴だよね 高天原たかまがはらを向いてむくれる
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手に入らないならなんで光ったのって言いたくもなるまばゆい瞳
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青薔薇を地上で眠る横顔のとなりに置いて消えていきたい
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「異常なし」を確かめに行くクリニック心配性の病は治らず
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透けている血管の青と紫を今更ながら優しく撫でる
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