漱石に挟まる栞「真くん」と 見つけてしまった母の青春 

きみの爪指す月見上げ肩寄せる忘れられない忘れたくない 

人ひとり愛するだけの適量も知らずに割れた揃いのグラス 

ティシャツ をじとりと濡らすこの頃はひと夜ひと夜にひとみごろ。初夏 

コンビニは欲望をほぼそろえられ 四季を愛でたくおもう以外は 

祖母亡くし十年が経ちケーキ買うめっちゃがんばる祖父と母には 

価値が無いように思える私でも 多少の需要はあるはずなんだ 

人だけに言語があるとは思わぬがあいにく人語しかわからない 

来世ではきれいな音の笛になるいくつも胸に穴があるから 

瓶に挿す名もない花がこの町で最初に看取る生き物になる 

初夏の夕ぬるくて湿った風に触れ好きでも嫌いでもない君と 

強さってなんなんですか つらくても泣くのを我慢することですか 

さよならはどこかで鳥が鳴いた夜仰いだ空は紫のジュレ 

デビューした蝿と一対一になりジリジリ握る新聞紙なり 

さみしさは机の上で首かしげ僕が気づくの じっと待ってる 

席替えで隣のヤツと笑ってる  だめだ気になる 数Ⅱは捨てた 

捨てられたあのテーブルが支えてた生活ってなんだったのかなあ 

深爪でじんじん痺れる右小指その先にもう夏がきている 

幼き日「あの子がほしい」の忘れもの 言えないんだな十七になりゃ 

近頃はここでまた逢え嬉しいよ月に腰かけ君の和歌よむ 

サービスのつもりだろうか淋しさと影を夕日は大盛りにして 

雨傘をかたむけきみは濡れながら胸にある詩の種に水やる 

いつの間にか 腐れ縁に なりました 耳鳴りは友 苦しみは友 

苦味あるチョコの心を持つあなた つつんでみてよ私はプラリネ  

シネマから現実戻る境界にたゆんでいたいエンドロール 

宿題は? おしめ替えつつ連絡帳  大田区在住 千手観音  

洗面所ふたつ並んだ歯ブラシを投げ捨ててから四月としよう 

あなたと同じリンスを使った夜 今の私はきっと可視光 

帰り道 君を降ろした後輪に 45キロの何かを乗せたい 

「生きる」のを諦めかけた日でさえも「生きた」証を歌として詠む