死ぬ人は不幸ではない無になって解放されて忘れ去られて
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無為むいのまま 降りつづく雪 こうなれば 有為ういであろうか 飛ばない飛行機
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急患の我乗せ闇裂くハンドルに娘の手あり初の高速
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滝の音聞こへ来そふな油絵の水霧飛び来て吾にかかるごと
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フード越し風が鳴るのを聴いている星瞬いて流れて消えて
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財布から証明写真こぼれ落ちあの頃の僕と不意に目が合う
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闇を抜けたどり着きしや病院の灯りのすくう砂金のいのち / おかげさま、落ち着きました
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老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
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色褪せし表札にある取り消し線 故郷に残る旅立ちの日よ
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冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
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窓帷カーテンを開ければ 冴へり 冬の朝 細き残月 見ゆる青空
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ベランダで「どこから来たん?」ひとりつ 日なたのまろき てんとう虫に /九階
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雨あがり 澄んだ夜風に 洗われた 桜の枝に 蕾が一つ
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夏からは病に伏すという君の住む街は雪 今日も明日も
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軽々と大き除雪車あやつりて百人力の隣の亭主
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寒さ増し 形見の衣 まとふ冬 妻の帽子と 父のジャンバー
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腹を押す医師の温もり身に沁みて眠りに落つる冬ざれの夜
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二軒分 家事と介護を こなすには 知恵を絞りて 手抜き息抜き
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蝋梅ろうばいの 花芽迎へし 山寺に 母の手引きて 歩む石段
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六十路なる吾の通信簿 理音四 国美社が三 数体下がり二
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東北の冬の青空ありがたし磐梯山の雪の輝く
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突然の手術の姉を見舞う午後思いがけない笑顔に出会う
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降る雪の白き光は集まりて紺碧の空に結晶の色
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いなり寿司けんちん汁に串揚げを作り孫待つ猫とじゃれつつ
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柔らかな光あふれる雨上がり 心地良さげに冬薔薇ふゆそうび揺る
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寝つかれぬ虎落笛もがりぶえをも聞こえぬ夜三十一の糸編んではほどく
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愛犬の逮捕に走る 転がったワインのコルク咥えて逃げた
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想い出は街をぐるりと歩いた日 兄の遺した紬をほどく
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へし方「社長」と呼ばれ せた方「先生」と呼ぶ 昔の夜街よまち
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窓開けて透明な空気冬ざるる消えてゆくならこんな朝がいい
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