初冬より空き家の庭の寒桜 満開近しと主待ちをり
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見上げれば紅梅咲いてこの空のどこかにきっと精霊はいて
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思い出が まだ とんがっていて入れない 部屋の中にも 午後のお日さま
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震災後 三十一年 過ぎし朝 竹灯籠に 祈りを込めて
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公園の隅の厠に臘梅の一枝いっし隠れて春を呼びおり
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やっと来た群れ作らずも良き時代 至福となりや一人の時間
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梅田から 西宮まで パン背負い 徒歩で避難所 友を探して
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朝の雪かがやきに目をひらきつつ かじかむ指を光にかざす
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ひとり飲む酒のしずかな熱(ほとぼ)りよ 蕎麦屋の隅に歌の芽を待つ
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身体冷え 立ち食いソバの ありがたさ 春菊天も 味わい深く   
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たっぷりと愛(かな)しき父の背を流す 何も持たざるわが手のひらで
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片付けの動画を見ては感動し雑多な部屋で安堵し眠る
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この頃は切手のように嘘を貼り僕はどこまで遠くへゆくか
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珍しく雪予報出た眠れぬ夜 何度も確かむ五センチ窓明け
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隠し事してはイヤよと医師に言う 祖母はお茶目な少女みたいに
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触れ合える距離に居ながら一番の秘密を抱き林檎を剥けり
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「忘れた」と言えぬばかりに声を張る祖父の孤独をまともに見れず
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父母ちちははと布団にくるまれホッとした 息子に残る三歳の記憶 /忘れない。阪神淡路
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朝採れで 白菜手にし 仕事場へ 存在感は ダルマ以上で
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時おりに伊吹おろしの吹く川辺 カモ数え往く小春日の日は
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空洞のある老木なれどポツポツと白梅咲けりぬくき日差しに
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初物の伊予柑贖い 両手にて 抱えて春の 遠き足音
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「ごめんね」を言えぬまま積む言の葉の 尖りて母を、僕を、傷める
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春節を 前に渋滞 するダンプ 除雪の雪を 山盛りに積み
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役立てず吾は猫なり窓のそば日向のなかに外を眺むる
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健診を 終へて解禁 唐揚げを 同僚ともと味わい 残業続く
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ニラレバと 餃子で友を 偲ぶ夜 震災前の 笑顔懐かし
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こんなにも切ないものか愛してた人から届く「退出しました」
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片付けて 額に汗の 冬日向 はちみつ紅茶 ひと息入れる
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報われぬ思いを抱え帰る日は鯛焼き買っていちごも買って
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