玄関に母が寄せ植えしてる花学校帰りの僕に優しい 

地の上に着くかと見えて跳ね返り狂おしく舞う夏の夕立 

揺らぎいる哀しい予感祈りをり貝の風鈴小さく響く 

なに!!という顔で来る犬 なに!!という顔のまんまで撫でられる犬 

探査機が超新星の呆気ないおわりに「あっ」と声を漏らした 

おれだけが過去形として耳にする誰と誰々の恋の経緯いきさつ 

にんげんがこわい、と嘆く君の手に そっとざくろの飴を差し出す 

即身の仏か祖母は細くありクーラー入れぬと意地を張りつつ 

叫びたる鋭き獣棲むわれにコーティングする無害な糖衣 

遊ぶ子もなく夏の日に晒されてオブジェとなったパイプの遊具 

生きるだけで開いていく傷口にイヤホン挿して輸血する夜 

本名も顔も住所も知らないのそれでも貴方に恋をしている 

ポケットの鍵握りしめ帰る夜を道の窪みに子蛙光る 

桃を食む君の笑顔を想ひつつ僕は売り場をいったり来たり 

かわいらしいカフェのメニューに「かぷちーの」ふぅんなるほどふぅんなるほど 

避け歩くかたつむり踏む事なきようこの優しさは誰にも見せず 

父親といまだ手探りしずしずと我れを沈めてなごやかである 

紙パックたたんだ先に感謝の字こんな世界になればいいのに 

そらを飛ぶ順番待ちをしてるような満月の夜の放置自転車 

朝顔は閉じていたって美しい君も無理して笑わなくていい 

ハンガーにかけて干すシャツゆっくりと回りて僕に向き合ってくる 

泣くひとの群れに弾かれ見も知らぬひとに焼香してる火葬場 

青臭い春の記憶を置いてきた 海が見えてた花盛りの町 

君は僕だけを自転車の後ろに乗せて共犯者にしてくれる 

太陽がよみがえった日 凍ってた五億年前の電話が鳴った 

君が幸せであれ幸せであれと希う僕も赦されたい 

濡れた髪 塩素のにおいとぬるい風 先生の声が呪文みたいね 

しんとうをめっきゃくしたら北極でくまがとぷんと海にとびこむ 

開きゆく花はみだらに炎天下 一夜限りの生きざまを ただ 

太陽に 背を向けて立つ 向日葵ひまわりと 僕とは同じ 性分しょうぶんなんだな