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娘
(
こ
)
の机使ひて思ふ引き出しの何処に悩みを仕舞っていただろ
49
まだわたし道を聞かるる人にあり冬海岸にほのと
南風
(
はえ
)
立つ
43
急患の我乗せ闇裂くハンドルに娘の手あり初の高速
41
前歯ない姪が「ひみつ」と金平糖くれてゆっくり溶ける手のひら
40
(
三十路
(
みそじ
)
)
にて天に召されし君の子の訃報に嗚咽の涙が滲む
39
バゲットを竹刀のように持つ母のシチューの味に辿り着けない
37
五平餅売らる茶店の灯も落ちて紅葉祭りも日暮れて終わる
37
刺し子模様 ひと針ひと針色重ね 無心の先の華やぎが良し
37
還暦を過ぎれば
時間
(
とき
)
は滝のごと流れ落ち行く悩む間もなく
37
冬を耐え花を咲かせよ林檎たち陸奥に明るい春を呼ぶため
36
ほほ笑みは 生後三日の
児
(
こ
)
が語る キユッ とあがった ピカピカの頬
36
歯科に停められた車は全て白 差し歯するごと吾も駐車す
35
北風の冬の朝には日が澄んで歌の言葉を
解
(
ほど
)
いてくれる
35
新聞の暮らしの作文音読す五回つかへし自分の声聞く
35
足跡は新雪踏みて倉庫まで「犬のトイレはここではないよ」
34
三十年ここで寝たんだ このベッド
主
(
あるじ
)
無き部屋 淋しさつのる \ ようやく独立!
34
町内のコスモス咲きし空き地には家が建つらし整地がされて
33
三十年住み慣れた家を後にする また新婚ね 小さなアパート
33
七割は幸せな人が三割を補充しに行くコメダ珈琲
33
母伏して 徹夜付き添い 入院し 『帰りたい』との 母を説き伏せ
33
積む雪のはじめは六花ひとひらのあまねく広く銀世界見ゆ
33
財布から証明写真こぼれ落ちあの頃の僕と不意に目が合う
33
死ぬ人は不幸ではない無になって解放されて忘れ去られて
33
滝の音聞こへ来そふな油絵の水霧飛び来て吾にかかるごと
33
冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
33
可愛いさの裏に秘めたる「毒」に似た「苺」は赤い最終兵器
38
解けて降りツルツル路面の出来上がりそっとすり足 雪降りつづく
32
黄金の花梨を
捥
(
も
)
ぎし指先に可憐な花の面影を追ふ
32
地獄へと続く道のり振り向けばあなたのくれた優しさの花
32
無為
(
むい
)
のまま 降りつづく雪 こうなれば
有為
(
うい
)
であろうか 飛ばない飛行機
32
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