秋風の鱗に頰を撫でられて確かに違う風の熱量
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打ち水の小庭に涼むわが腕に精霊バッタ跳び乗り憩う
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娘ならいつかどこかへじゃあねする遠く知らない国へ嫁いだ
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ひさしぶり母さんが降りてきたような夜空の花火あたしはここよ
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かき氷味を覚えた一歳は 大きなあーんで兄の後追う
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ペコちゃんにふと会いたくてモンブラン舌をベロリの永遠とわの六歳
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ただいまと 長女猫あのこに囁き お供えの 金魚ゼリーは 下げよか悩む
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想い出は美化されていくそんなもの 強く感じて受け入れていく
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雑念を振り払うごと風呂掃除一心不乱黒ズミをとり
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濃桃のグラジオラスの咲く朝は白露と聞きてまだ残る夏
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無花果を採りて一つを゙半分に分けて食むなり行く雲見つつ
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いつまでも若いつもりの柄Tティーがやはりイタいと還暦を知る
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変わりゆく夏の暑さに変わらじの冷やしてかじるきゅうりの美味さ
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エアコンという名の檻から出られない今年の刑期はちょっと長めか
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随分と減った子どもの靴の裏毎日駆けたひと夏思う
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颯爽と走る若者つい見とれ 背中を見送る私と老犬
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画面には笑顔溢れると孫が 心によぎる会えない寂しさ
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キラキラと 川面光りて 鳥が飛ぶ まだまだ夏は 終わりを告げぬ
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寝息たて すやすや眠る 愛猫きみは今  夢見てるらし 口元動く
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空っぽの米の売り場の貼り紙は人通る度ヒラヒラとせり
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ボッチってそんな惨めに見えるのか? あんなに自由で癒しの時間とき
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ポンコツの 身体からだを杖に 生きてゆく 信じて行くさ 三十一みそひとあれば
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いつだってぼくらはきっと若すぎる 上手くできないことばっかりで
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異業種の人との会話面白いそんな見方もあるのか気付き
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大量の洗濯物をなびかせばただそれだけで生きてる感じ
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葉をりてほのと立つにはっとする 木末こぬれまで充つ檸檬の息吹
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丁寧に暮らすに憧れ手始めに食卓に花を一輪飾る
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吹く風にその身任せて青田揺れ 穂垂ほたる夢見る黄金おうごんの道
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こんなにも大きな墓石その裏でひとりぼっちの蝉の亡骸/自由律を定型に詠み直し
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シャリシャリと よき音立てて梨を食む 美味しいねぇと目を細める母
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