古ぼけたアンパンマンのかばん見て若き私が私に微笑む 

折り畳み持たぬ我が子を気に留めてそわそわとする曇天の夕 

網膜に寝れない罰が焼き付いたよく知る比率した自傷癖 

花びらが踊っているよ下ばかり見て生きるなら充分よねと 

貸し出しのラベルのついた傘が(また虹が見られなかった)と悔やむ 

今生でいちばん嫌いな人間は俺なんだけど次点はお前 

うつせみ空蝉の 僕の心を 雨が打つ 次の夏まで 耐えろ空蝉うつせみ 

しわくちゃで震える五指は10円をつかんで落とす安酒がため 

ワイパーと雨のリズムがずれていく ゆがんだ街でぼくもずれてる 

ほんとうにやさしいですね水なしで飲めるくすりみたいにやさしい 

いいなそれ どこで買ったか教えてよ は?初期装備?生まれた時から? 

欲しいもの 誰もが笑顔の世界です(本音を言うと、五千兆円) 

なんだっけ夢で作ったあの短歌街がどうたらあの子がなんたら 

リサイクルショップに並ぶ百円の皿の前世のしあわせな家庭 

クリムトの 絵のごとくに 愛しあう あなたの首が 細く長く 

お互いにパニック映画のモブとして逃げてゆく方向が違った 

配管がつながるらしく水道がぼくのかわりに泣く午前4時 

四つ脚の 獣に戻せ ただ生きて 死ぬる為だけに 我は在りたし 

金曜日あの子は来ないと知りながら勤務表の縦軸をなぞる 

菜の風に吹かれて心は透きとおりやがて優しさだけになりたい 

本気では無いことくらい気づいてる 桜にだけは打ち明けておく 

悲しみの 静かな海を 胸元に ひそかに抱え 笑ってるひと 

良い敵を作るといいよ 物理では倒せない長持ちする敵を 

終了のサイレン、土のかおり、風、君の涙がこぼれて夏だ 

一斉に咲く花々の勢いに付いていけずにセーターを着る 

揚げパンのきな粉をそこらに 撒き散らし 大胆不敵に 笑ってみたい 

沈んでる 僕を案ずる 妻がいて 苦しむ訳など 絶対言えない 

血を抜かれ 骨もスープになってなお その〝卵〞だけは 守って下さい 

肌ひとつ 隔てただけで 君のこと 世界でいちばん わからなくなる 

眼を閉じて出所不明の光など見たくないから眼を開けている