出勤は湧く雲の峰眺めつつ 帰路三日月にそっと添われつ
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母さんの知らないあなたがいるようにあなたの知らない過去の母さん
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お裾分けタッパー戻りし娘よりカロリーオフのチョコが添えられ
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梅雨明けの空 高く舞ふ 燕の子 うまく飛べたね 見送りて夕
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片足を夏に突っ込むアディダスの鞄の底に海の白砂
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暮れなずみ 霞む雲間に 細き月 空梅雨過ぎし 帰路の坂道
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菜園の ひときわ肥る白ナスの 白き柔肌舌にとろけおり 
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西の空遥か遠雷聞こえきて夏の本気が見え隠れする
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夕暮れの 空があかねに 染まる頃 当直の吾子 他人ひとを救ひて
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持ち歩く日陰なのだと夫に説き 今や堂々日傘男子
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ピンクから青に変えたよバスタオル体感温度すこし下がりて
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ベランダの掃除の後に風呂掃除 びしょ濡れ上等 水浴び気分で /夏の休日
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笑点に和む夕餉を噴きとばすマグマの怒り闇に揺れをり
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担当の季節のしつらえ褒められて七夕飾りがくるりと回る
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ロビーから 子供の声と ペンの音 短冊作りに 微笑む翁
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ヒヨドリも 熟す実を待ち 空で鳴く ブルーベリーの 収穫間近
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好きなのにその裏側に苦しみも いくつになっても切なさはいる
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人の子も我が子のように愛おしみ「すごい上手」も「ダメだよ!」も言う
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目が覚めて眠れぬ夜はUtakataの歌詠む誰かもそうだといいなぁ
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東雲の 静けき朝に鶯の 澄み渡る声舞い降りるなり 
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医は神のいのちの光り手繰りよせ繕い縫いて明日へと紡ぐ
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労うかの如く すり寄る猫を撫で 冷えたビールと 週末の宵
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心地良き夕風さらり街を撫で日中ひなかの微熱鎮まりてゆく /真夏もこうだといいな
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卒寿まで独り住まいのない義姉の寂しさ如何に いっそう痩せて
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風にのり 遠く聞こえる お囃子に 身も踊り出す 商談帰り
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どんどんと狭い世界に生きているそんな気がして歩き始めた
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3時間遅れて届く配食にもはや仏の境地に至り/配達スタッフ急病で入院
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聴かずして声も聴けない貴方より聞かず通じる草花の声
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旅路にて 荷を預けたら 身軽なり 引き受けてくれた かたに謝恩の
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暮らしにも良き根が付けと半夏生たこわさ添えんふたくちくち
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