この街に引っ越してきたその日から閉店セールの服屋に入る
17
イヤフォンをそっと耳にかけてくれた 嫌な言葉は音が壊した
17
雨、雪、風 桜も縮こまるかに見えて 開花の準備を着々とせむ
17
一人きり心細い日 背に貼ったカイロの優しい温もり沁みる
17
母親は見苦しいほど子を思うたとえ自分が壊れようとも
17
シャキシャキが好きだったけどすりおろす祖母とならんでサンふじをむく
17
暖かき陽射しを受けて風笑う 地表の全てを等しくなでて
17
慈悲により 生き直すこと 覚悟して 平安目指した 大樹寺の門
16
私はね、見よう見まねでやさしいの だから私のうわべだけ見て
16
二切れを来ない娘に取っておくラップの下で涙するシフォン
16
新しく同じ携帯色ちがい頭よせ合い老のノートレ
16
同じこと 楽しく話す お祖父じいさん また聞きたくて 初めてのフリ
16
よく笑うレンタル着物のカップルが 城下町往く 絵に描いたよな青春
16
あの海を、あの山を吹く風々が、わたしの街も吹き抜けて往く
16
まだ若き紫木蓮しもくれんの華奢な枝 大き蕾を抱き風に耐え
16
沸いた湯で紅茶を飲めばため息と少し寂しさ蒸気にのぼる
16
きらきらと窓辺で白いひげ光り ねこは目を細め春を待ってる
16
赤紫蘇と梅酢に漬けた蕪ほのりピンク春らし食卓飾る
16
漸くの晴天なれど洗濯物ほしものの部屋干し悔し花粉多き日
16
卵かけご飯の茶碗につかまって胃だけを満たす一人居の朝
16
カップルが 手話で会話 静けさの 中に漂う 幸せの時間とき
16
エレベーター降りる人が先なこと知らないままに大人になる人
16
美しき所作持て出さる茶を飲みて 集いは終わり弥生月来る
16
巡礼の旅へこっそりじじとばば あと追う孫の泣き声を背に
15
大正六年の 木型でこさえし雛菓子をおこしもの 亡父母に供えし雛より先に
15
花手水 黄色桃色 増してきて 目にも楽しき 春の装い
15
わがままな かれがとにかく だいすきで あまやかしすぎ わかってるけど
15
ダイエット本ネットで注文した瞬間もう安泰と思う悪癖
15
花見山 あか白黄色 梅香り まだかまだかと 春の風待つ
15
山の端に黒雲長く横たわり狭きすき間に夕陽沈みぬ
15