好きだよと言えば僕から離れてく その確かさで黒板を拭く 

明日からは泣かずに生きていけそうだ台風一過のしたたかな青 

朝が嫌、夜も嫌だし、昼も嫌。なのでおやすみ、冬まで夏眠かみん 

朝の五時きみのベッドは海となり寝息ふたりぶん浮かべてゆれる 

くつに砂が入ったままで出てきて提出をする退職届 

「ねえ今日の嘘の深さはどれくらい?」「きみは充分溺れられるよ」 

木陰から「じゃあな」と言って走り出す男児らの影夏のいろど 

宙を見詰めしきりに指を折る人は短歌を作る人かもしれない 

蠟梅の枝は箪笥の奥深くひそかに萎れたるままに春 

土曜日の午後に見つかる幸福論 夢のほとりに君がいたこと 

終わりよし濁さずなんて嘘だから儚い記憶のぼくたちの海 

折り返し過ぎた人生ルビをふり隠し通せば嘘も方便 

半休の朝畳の上に寝転びて独り本読む八月六日 

盆帰り先祖は何を思うやら子も孫も来ぬ迎え火に 

小利口な口上ばかり上手くなり喉仏には恥といふ文字 

夏休み帰省できない娘への お野菜お米 愛も送るよ  

掃除して読書して寝て飯くって寝て散歩する八月九日 

Withコロナ心の平穏保つためただひたすらに流しを磨く 

僕の手を 握り返して 来る君の その指たちが 好きと囁く 

‪才能が欲しかったけど嫌われる才能ならば欲しくなかった‬ 

庭先にエサを求めて来るセキレイ 私の不安もついばんでくれ 

悲しみをどうぞ旨味にしておくれあの娘に作るカレーライス 

ごらんあれ短歌のために作られたピンどめされたいびつな言葉 

次はないくせに「またね」を二度も言うあなたの爪に咲く曼珠沙華  

こんなにも引いては寄せるぼくがまだ波だった頃のはなしをしよう 

あやまちを犯さず挫折もしたことのないひとのいう『普通』がこわい 

あなたにも言えない秘密がひとつだけわたしの宇宙に取り残されてる 

小児から喘息は友 鼻セレブ共に携え 友とママチャリ 

草刈りの青い匂いが部屋に舞い紫陽花白く夏が居座る 

ふっくらと憂いを帯びた白蓮は波寄られてもなお人見知り