朝からの細雪舞う二月尽せっかちな春また背を向ける
34
クッションに頭乗せ 毛布を被り 飼い主の寝姿のよな犬
34
沈丁花 花の香りを 全力で 主張する様 命短く
34
嫁、娘、母の三役こなしつつ、守るつもりが守られる日々
34
小夜更けて微睡みのとこしとしとと芽吹きの庭に木の芽雨降る
34
啓蟄の鼓動を聴いて走り出す泥濘ぬかるみさえも軽やかにゆけ
34
咲き初めし辛夷こぶしふるえる春寒に園より流るひな祭りの歌
34
徒歩・電車 往復三時間かけて今日も届ける着替えと笑顔 /面会は15分間だけ
33
思ひ出と共に 今も手元に残る あるじなき 祖父母の家の鍵
33
こわさないように避けて歩いてく 春の夕焼け宿す水たまり
33
雪解けも彩り褪せしさくら草 運命さだめを生きる輝きの外
33
足を止め 朧月夜を背景に 梅を眺めつ 風に身ゆだ
33
言の葉に悩み 窓外そうがい眺むれば 曇天の夜半やはんに朧月
33
春風しゅんぷうを浴びつ散策 梅咲きぬ家の 窓辺にすわる黒猫
33
軽トラが集い田畑も春支度 雲雀ひばり囀る長閑のどかな日和に
33
初鳴きの鶯の声つたなくて梅も笑って花びら散らす
33
雛壇の人形は 雨声うせいを聞きつ しづかに宴 氷雨ひさめの弥生
33
ゴミの日にゴミ出し出来ない母なのに小言文句はすらすらと出る
33
独り身が 語る事無く 桃節句 頬と心を 氷雨が叩く
33
さ、寒い。冬は去ったと思ったらちょっと待ったと春のドカ雪
33
のそのそとわらじ虫出で明後日あさっての啓蟄しらすや夫に捕わる
33
「私」だけ 忘れなければそれでいい 父の笑顔は永遠の陽だまり
32
仕事終え電車乗り継ぎ夫の元 明るい笑顔に疲れも飛びぬ /明日退院
32
気を抜いた背中の写る一枚にどこの老婆と目を疑いし
32
枯れ茎のあじさい見れば芽吹きゆくみどりごを抱く弥生のいのち
32
「最高」を上書き続ける夜のなか 平和だなんて僕らが決める
32
殺すなと 描いた太郎の 缶バッジ 見かけて少し 泣き面に 春
32
人間の尊厳捨てて戦火撒く魔王の賭けにいのち散りゆく
32
紅梅の花笠のうえ網目には天海に澄む夕暮れの月
32
湯たんぽを好んだ義母の気持ちなどよわい経てこそわかる気がする
32