冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
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新しき鎌を買い来て庭掃除 師走の声に背中押されて
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すり林檎食べた数だけ成長し食べたくなった三十八度
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黄金の花梨をぎし指先に可憐な花の面影を追ふ
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つまの間にとっぷりわが猫の浸かると足りなくなる掛け布団
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やる事とやる気が上手くからまらず「まぁいっか〜」がわたしを救う
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降る雪の白き光は集まりて紺碧の空に結晶の色
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無為むいのまま 降りつづく雪 こうなれば 有為ういであろうか 飛ばない飛行機
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闇を抜けたどり着きしや病院の灯りのすくう砂金のいのち / おかげさま、落ち着きました
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老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
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健診を終えた安堵の空腹に熱いお茶漬けご馳走となり
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この夏に 花を咲かせし 百日紅 冬の鉢植え 実でも彩る
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真っ白なスイトピー達ひしめいてシロツメクサが成り立っている
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ピカピカと光る首輪の犬がいて目尻が膝まで垂れ下がる僕
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へし方「社長」と呼ばれ せた方「先生」と呼ぶ 昔の夜街よまち
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窓開けて透明な空気冬ざるる消えてゆくならこんな朝がいい
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二軒分 家事と介護を こなすには 知恵を絞りて 手抜き息抜き
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雨後の午後 和らぐ寒気かんき 曇天のもと 南天に 光りぬ雫
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去る人の残り香宿る年の瀬に白きサツキの帰り花咲く
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琥珀色 アイスティーに 癒されし 海辺の席で 心ゼロにす
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満たされぬ心インナーチャイルドが悲鳴あげている そして爆買い爆食またも
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玄米も米は米だと言う君のあげ足を取る言葉が欲しい
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窓向こう結露でかすむその真中雪に埋もれる一輪があり
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「寒いね」と言ってもそれはひとり言 「寒いね」と笑う君がいたなら
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律儀なり 気配かぎつけお出迎え 一人と三匹それも良きかな
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仕上がった刺し子が風に揺れている 水につけると際立つ色合い
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「もう少し考えさせて」断わると決めてるきみの優しい演技
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突然の手術の姉を見舞う午後思いがけない笑顔に出会う
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いなり寿司けんちん汁に串揚げを作り孫待つ猫とじゃれつつ
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柔らかな光あふれる雨上がり 心地良さげに冬薔薇ふゆそうび揺る
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