黄昏に背中を押され手をつなぐこの温もりを何と呼ぼうか 

サングラスかけた案山子の手に蛙 隣のポニーただ草を喰む 

調味料入れに月光入る余地なくて私の主婦力しずか 

目醒めては我を再び我と呼ぶこの誰なるかを知らず未だに 

ガラス越し夏へと切った髪の毛と寂しく映る腕のヘアゴム 

忘れてた懐かしいあの祖母の家近い香りを復路で嗅ぐ 

さんざめく小鳥の声のなつかしく裸足の森の枝おれる音 

旧宅の当日消印有効の手紙の古きしじまの香り 

いくつもの海をこへたる鳥たちが異国の言葉でうたふふるさと 

8月のくびれに砂はとどまらぬ 天地返して折り返しの日 

こうすればモテると誰かが言ったから夏空に揺れるポニーテール 

終戦も敗戦も知らずぴらぴらと映えを求める僕らの自由 

戦争の授業目を伏せ眉寄せて聞いてる君の心が好きだ 

感性をひろってくれた森のくま 歌わないよと帰って行った 

アパートを選ぶときには駅よりも最寄りの海を気にして選ぶ 

意思疎通できると思っていたのだね たかが言葉がわかるくらいで 

木洩れ日と思えばいいよ幸せは光と影の綾なしてこそ 

塩素の香潮風の香に火薬の香夏の記憶は香りで残る 

秋を染め 冬に散った 椛場もみじばに 緑がえて 君を思い出す 

怖かった生きてくことも死ぬことも終わってたろう空がなければ 

君の言う「校歌はちゃんと歌いなさい」ってビブラートまで含んでる? 

もう二度と戻れはしない時の海今この瞬間を群れなす魚 

「ねえさんの彼女のつくるナポリタンまた食べたいよ」というと照れてる 

ためらったつもりはさらさらないのに結果としてのためらい傷よ 

鴨川に側溝白く流れ入り 今日一日も久遠となりぬ 

呆然と流されてきてふるさとの 荒れ果てし野にわれ一人立つ 

人ごみを抜けたけれども気づかないふりしてつないでいたいこの手を 

行く果てもあるわけないのに歩いてく何故だかそれが幸せだから 

焚かれる火燃えろよ燃えろ君の尾は天に届いて星になりそう 

落ちるのを我慢するかに花震ふ きみにわたしはひつようですか