冬空に明星一つ煌々と遺す光は地上を照らす /追悼 谷川俊太郎様
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心から溢れた「またね」が困らせた 俯いた君  嘘だよ ごめん
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冬風と戯れるよに舞うとんび 空は遥かに広くて青い
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粗大ゴミ置き場置かれた姿見に映る私に見覚えは無く
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お野菜は三食取りなと言った日から 確かに歳を取った気がする
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もふもふの愛犬いぬの形の空洞を抱えて生きる ささ身を供える
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ありがとうそのひと言ももらえずに 今日という日が静かに終わる
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足下に からだくっつけ 横になる 年老いた犬 ふわりあったか
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切り開く未来の意味を持つと知る 父が娘へ 贈る包丁
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やる事が 終わらぬうちに また別の 優先順位が 割り込んで来る
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転寝うたたねのふくらはぎから沁みてくる猫がいてくれることの幸せ
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簡単な 引き算すらも ままならぬ かたむいていく 我の脳力のうりょく
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満月に誘われるよに南から一等競い春風は吹く
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今日も待つ昭和レトロの喫茶店指切りをした仲でも他人
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「撫でさせてやってもいいぞ」と横たわり撫でるまで猫はそこに居る。ずっと
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気負い過ぎ空回りする吾を見て楽に行けよと風花の舞ふ
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優雅なる馬車に引かれて春は来る轍にとりどり花々咲かせ
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図書館の 棚で偶然 目があった 私を見ていたような 背表紙
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幼少に祖母と過ごした春の日がふと蘇るセビアの色にて
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カーテンの隙間からさす陽の光 私の闇夜も照らしてくれれば
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こんにちは、僕らの夢まで行きましょう。手を繋いで、ほら駆け出して!
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また一つ冬を超えたねたなごころ皺に塗り込むハンドクリーム
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図画工作評価一の奴が描くみたいな 空しやがって あっぱれ三月
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履歴書の特技の欄にいつか書く「自分の機嫌 取るの上手いです✴︎」
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四千キロメートル北へ行く旅の途中の白鳥かれらそっと見守る
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雪解けて道幅広くなった帰路春を思えど不馴れな景色
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踊る猫の瞳の向こうの鉄塔までおいで うろこ雲なら僕が殺した
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一晩で春には成らぬグラデーション嵐の夜の風音を聴き
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戦争の 反対は 趣味  儲からぬ それでも豊か 歌も平和も
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コンクリの隙間を割って首もたげ 咲いたタンポポ 春よ春よと
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