亡くなりし犬のにほひの残る家 庭の白梅シラウメ今年も咲いて
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何らかの麻痺毒として観てしまう海のむこうの選手の知らせ
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裏庭の 容積率が 満ぱいで 津波のようだ 押しよせる雪 / 早春
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胸を打つこの衝動に動かされ裾をまくった この板の上
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君のこと画面越ししか知らなくてでも愛しくてこの距離感
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失敗を恐れず真っ直ぐ努力する 君は本当にひかっているよ
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だって、あたし君の顔好きだし ちょっとのミスだって許せるし
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言の葉が 胸に詰まって ヒリヒリと 痛む夜には うたかたが効く
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病棟の 父への葉書に歌一首 余白で伝わるものの多かれ
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何のためでもない僕のちょっとの愛と勇気と少しの苦悩
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音もなく 去りゆく人の 面影を うつしもせずに 春の十六夜いざよい
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いつだって 桜が散りゆく速度すら すぐ追い越して 遠ざかってく
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三月が 三日くらいで 過ぎ去った ような気がする まだ雪が降る
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長旅をしてまで会いに向かいます 片道切符花束ひとつ
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春暁落雪図庇はばつらぬきとほるまで槍穂を著けと聖霊ふたつ 
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今生を辞してあちらの歌会に持ち込むための詠草を編む
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仕事辞め日向ぼっこで短歌詠む 理想は遠く現実はみじめ
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新刊の出ない隣のブースから伸びた行列ばかりが見える
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鉄骨のジャングルを縫い白黒の検非違使は追う咎人のかげ
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ゆめ知らず智慧の階段踏みしめて錬金化学に塩基無水・素
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そのせなにちいさな羽のあることを知らない君はあの町を出ない
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ビデオにも戦争がありいくつかの戦後をくぐるこの部屋がある
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百億の花粉を載せて春風は鼻腔の奥に受精を目指す
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口もとの ブルーラインが お気に入り 白いマグカップ 珈琲たっぷり
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やどかりにとって浜辺は限りない事故物件が並び立つ街
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幼子は狭き我が家を駆け抜ける まだまだ寝ないと親から逃げて
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ラジオからゆったり流れるピアノ聴き気分は高級ホテルの朝食
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地下鉄の席取り合戦負けた日はこっそり筋トレお尻と脚の
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八重桜 共に過ごした年月が 古き団地に静かに咲いて
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千の風 愛しき人の元に吹き 涙乾くが一番嬉し事らしき
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