歳下の 僕の後ろを 歩く君 桜も見ずに 先に逝くとは…
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儚くも 踊り子の様 ひらひらと 季節は進み 我も踏み出す
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いつからかドアがきしんで声を出す度に知らせる家族の帰りを
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八重桜 共に過ごした年月が 古き団地に静かに咲いて
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老眼鏡かけても読めず虫めがねサプリのちらし「ご注意事項」
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「千の風…♪」 歌いながらの 墓参り 君去りしから 百箇日となり
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しゃべらない息子が居ればうっとうしい 居なきゃ淋しく部屋覗いたり
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仮面劇にはたれもが左右へへだたりて中央には翼賛図、曲々し
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統計の父ありて確実に死すきみらやさしかる絞首臺へ誘ふも
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頼まれてさらりと上げるブラインド 香炉峰の雪はないけど
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春祭り黄砂のすきま漂って空つき刺さる赤いふうせん
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煩わし日々のあれこれ蹴散らして 癒しのボサノバ聞いて眠ろう
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花水木 主役の下で エビネ蘭 鯛つり草が 静かにゆらぐ
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川の辺でトランペットを吹く学生 澄んだ音色が空に溶け込む
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特売日珈琲チケット二冊買ふ 知る人来ない安らぎの場所
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デゴイチは黒煙を上げ二年ぶり待ちわびた春歓声が湧く
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渓谷を白波立てて船の往く 谷は知るまい空の広さを
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長旅はいかばかりか 「ただいま」のひと言残して眠りこける息子
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真夜中に乳液のフタ閉めながら思い浮かべる君の指先
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山駅舎 待ち合い隅の招き猫 左手上げて人来るを待つ
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若冲じゃくちゅうにわとりは夜ぬけ出してとなりのちょうついばんでいる
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誰だって誰かを失い生きていく 色んな後悔心に綴じて
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折り鶴がカサリと落ちる音ひとつ引き戸の指を引き留める朝
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芝生には立ち入り禁止のロープあり 輝く初夏の聖域のよに
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ガラス戸の夏の光が肌に染むフローリングに虹が映りぬ
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あの時が 最後だったと思い出す 未来が見えて だきしめる今
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熊避けの鈴の音聞こゆ緑道で 白き雲見し夏がまた来る
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九州の醤油は甘いいっぱいの砂糖を入れるように彼女も
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ひそやかに小さな本棚組み立てる 幼子眠る土曜日の午後
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18時半の夕空明るくて 人生全てを一瞬許す
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