ストロベリー・ナイト・ケイクス 君の頼みでも一緒には死ねない
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断乳に張り裂けるほど泣く吾子を 抱きしめる夜 卯の小晦日こつごもり
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日の出前目標時刻を確認す夜を越えたと証明させて
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一歳半 床に突っ伏し駄々こねて 小さな神様 にんげんになる
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君が今 深夜つぶやく絶望を 母は知るのか友は知るのか
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尾張の地 風に向かいて歩く時 どれほど寒かろ雪しまく郷
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感性は縦横無尽に飛び交いて 空詠む人も 鳥詠む人も
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落花生 投げては拾いまた投げて 吾子はよびこむ わがいえの春
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帰り道、雪に埋もれた路地裏は 何処とも知れぬ 白いまぼろし
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家人寝て、一人コトコト小豆炊く 静かな夜の季節を惜しみ
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子どもとの昼寝に勝るしあわせは 中々無くて家事は山積み
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10秒で 返信しないで ポストから 片道3日が ちょうどいい距離
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亡くなりし犬のにほひの残る家 庭の白梅シラウメ今年も咲いて
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イヤ、イヤ!と どこか得意気一歳半 言葉が気持ち運ぶを知って
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幼き日姉弟こどもが登った桜の木 伐採前に最後の開花
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「これ、どーお?」上から下までユニクロで気だけは若い白髪しらがの夫は
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お上がりの息子のシャツ来て鏡見る「若返ったわよ!」にニタッと笑う
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卒業と入学のの春風は、こぶしの白い花を揺らして
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言の葉が 胸に詰まって ヒリヒリと 痛む夜には うたかたが効く
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病棟の 父への葉書に歌一首 余白で伝わるものの多かれ
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途切れなく次々飛び出す昭和歌謡  ジュークボックスと呼ばれた夫は
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春嵐も過ぎゆき晴れの門出かな 澄むよに青い空よ続けよ 
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会議後のカラオケくらいさ楽しみはリタイア出来ぬ夫のつぶやき
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黙々と 靴見て歩く道すがら 顔を上げて と桜に言われ
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十六年一緒に暮らしてようやくに分かってきたかも 犬語なるもの
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私より料理がうわ手の娘婿「お母さん、包丁研いでおきました」
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「ニャーオニャーオ」動けぬ老犬我を呼ぶ いつからキミはねこになったの?
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「がんばれ!」の声援受けて後ろ足動かぬ老犬朝のお散歩
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キミ達も伐採されてしまうのか今年が最後 桜のトンネル
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入園式いよいよ今年で三十回 白髪しらがに似合うよピンクのネクタイ
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