列王に名を遺すてふみづからの榮代の後までいくさせむ
18
女王蟻に肖し式服の白纏ふ偶像たらむ。宰相寫眞も
30
ほうばったチョコマーブルが錠剤にみえて「最近だいじょぶそ?」
8
語らいをためらいをそして歳月を その手と共に重ねたかった
13
友夫婦郷里さと の幸負い亡夫つま墓前上京せしはありがたきかな
25
三人旅「ここに君なきこと寂し」竹馬の友の云ういとうれし
24
幼日をさなびを語り馴れ初めを語りて話しは尽きぬせせらぎの宿
29
繰り返し 貼って剥がせる シールです でも人生は 一度きりです。
14
縦長のきみとを繋ぐこの画面 無くてもわかるさ話し振りまで
15
砂かぶり動かない ママの卵焼き ぼくひとりレジャーシートをたたむ
14
終わりまできっと読めない 世界から長い手紙をもらったけれど
16
隠された職人のわざ用の美に思考の奥行き今に息づく
37
ひこうきの澄んだ轟音そらあおぐ 青から白へこころは黄色
18
秋冷えに子どもと湯船につかりをり 父と数えしとおまでのうた
21
目に涙浮かべて走る環状線 不意に流れたくるりのせいだ
10
夢であれ現実であれねむらせてくれるのならばどちらでもよい
9
愛犬の匂いの残るこの布団 そおっと下ろす小さな骨壷
49
初詣神様なんてそっちのけ今年の夢の話をしよう
8
昼下がり炊事に片付けお洗濯私はちょっとしたマエストロ
17
その昔 子らに問われし E.T.やく しかと答えた 得体の知れない友達
15
おまえだけイメージ良いの俺という悪がいるから成立してる
25
FRIDAYスクープされたタレントの横でモザイクの俺と彼女
30
じゃが芋を黙々と剥くピーラーは二十余年の現役選手
47
どことなく春風に似ているようで似ていない秋の風の匂い
10
そばにいてほしい時ほどさみしさに強くなってくわたし演じる
53
風切りの音が路上をさらってく夜の始まり冬の始まり
41
白色のコートに引っ付く雪虫が彩る模様はポルカドット
9
鵠沼の 小さなカフェで 海見つつ クロワッサンで 特別な朝
22
ファミマにはもう売ってないとろろそば終電帰りの霜月の夜
15
ガラス越し淡く舞い散ることもなく 変わらぬ私 置いてゆく秋
22