訃報に喪服がないと焦る夢見た 服なんか最後でいいのに
5
我が未来剥ぎ取るように飲むクスリ残り数えつ今朝も九つ
9
クーラーがきいた部屋から飛び出た瞬間みたいだな9月の五時
4
一期だけ見たアニメの完結みたいだ 元彼の「結婚した」は
7
春の日に子供は地面を見つめて舌から下に水を落とした
2
半袖に死んだ猛暑が縋りつき「また来年」と約束をした
5
よるふけて下宿にかえる苦学生 おばさんの 味おにぎりのまつ
12
生きてれば 些細なことも 一苦労 楽ではないよ 貧乏暮らし
3
すこやかに個性を競ふ老若に男女にみな同じかほのうたかた
5
水たまり 輝く粒は、ランウェイで私を照らすライトの代わり
4
白球を追いかけている人たちを横目に独り下校する夏
13
隙間から導き出した結論を消しゴムで消してまた最初から
11
久々に一人の朝食これもいい ジャズ聴きながら家事後まわし
33
二度咲きは小さく可憐 夏空に薄紫の藤の花咲く
26
口角に残っただけの笑み残しどうせなら恥 楽しめよ俺
17
おお涼し!ふるさとの朝 天然のクーラーの中で深呼吸する
24
真夏日も桜の木陰で癒された 照りつけるにキミが恋しい
18
大空にピンクの大輪 芙蓉咲く 色鮮やかに「夏だ!夏だ!」と
22
「暑くても食べらさるしょ」の祖父の字と富良野メロンのあたたかき涼
30
読みきれぬほどにメールはくるけれど一番ほしい君からこない
18
「てへぺろ」の絵文字で終ったラインみてちょっと笑ってえんぴつを折る
14
日灼けせる空地の壁へ病みしまま囲はる弟切草のおとうと
6
英靈碑肩欠けて零る菊の蘂 かくごとくひと殺むるは雄
5
わが祖父は英靈か 虐殺ののち肩口に消ぬる緋の初霜が
6
ぼく達の歴史にわたしはいないからヤグルマギクの花言葉って  ?
6
温かいココアを飲めばとろとろと身体の中に灯火ともる
32
明星の方に向かって漕いでいく今日もなんとか稼いだ帰り
39
冬晴れの団地の中の公園は遺跡のようで空は静かで
56
靴下を、二枚重ねてもよいのだと気付かないままで越した冬
21
咲いたから急いで君を呼んだけど来ずじまいだね死んだミニバラ
8