気付いたら視線は自然と斜め前 あなたを見ぬようドリルに耽る
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誕生日も血液型も知らない 占える手段は名前だけ
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天気予報に嘘つかれ 夏の名残を薄手のセーターで迎える
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傘の中滲む視界に出た弱音雨は優しくかき消してゆく
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クレープが焼けぬようにと願うのは まだ二人帰りたくないから
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半袖で 風を切るのは 終いかな いまだ30℃ 近くてバグる
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咳をして 皿を洗って片付けて お風呂をためて 泣いても 一人
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ひとひらの落ちた銀杏が集まって アスファルトに黄色のおめかし
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在庫過多 安さに負けて 買い足した 大根をまず ふろふきにして
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利きわけて相寄る友を待つあひだ戯る木葉こばの環にまぎれたり
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椋鳥の大群賑やか大宴会 味をしめたか柿は食べごろ
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いつかまた明るい短歌うたを詠みたいな 秋空のよな澄んだ心で
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卵黄を使うレシピに紐づけるシフォンケーキのつくりかた 秋
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ドジャースの長引く試合めくるめく雪・雨・霙 由伸の男気
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好きだったはずの秋を愛せない今あなたが隣に居ないから
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九十年 重ねてもなお 溌剌と 自立素晴らし 理想の姿
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偶然に 信号待ちで ふれあって 交わす挨拶 「良い一日を」
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ももひきや古き職場はしのぶにもなほあまりある寒さなりけり
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砂かぶり動かない ママの卵焼き ぼくひとりレジャーシートをたたむ
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切り花のコスパ日割りで考えるそんな僕にも秋のひだまり
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雪虫と 風吹く街は 碁盤の目 故郷の友と 歩く裏路地
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十七年たくさんの幸せ有難う! 愛犬キミのお家よ 骨壷を置く
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この世をば我が世とぞ言わむかんばせで 昼寝決め込む小さき犬よ /本日の愛犬
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室内の 静寂やぶり 加湿器の 水飲む音が コポコポ響く
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まったりと 猫と留守番 金曜日フライデー あえて音なき 部屋でUtakata
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足音を まるで忍ばず タカタカと 物申したく 吾探す猫
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犬と僕と、他には何も要らぬから どこか遠くの場所ほしへ往きたい
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たましい と いう名の核持つ 単細胞 そう見えるかな 空からの雪
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老眼に優し 暦求めて 買ったのに サイズ間違え 途方にくれる
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墓前にて頭を垂れる父の背にこの二十年はたとせの星霜の積む
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