喀血す母仔合はさば一羽の鶴となりなむおりがみのゆび
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草帷子桔梗に芒婦人花秋の地獄のすずしきを染め
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秋闌けて漢方學者薬種店硝子戸へ首晒せるあはれ
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急ぎ旅なれどコスモス風に揺れ吾を迎える ふるさとは秋
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眠れない夜ひとり作るオムライス 丁寧に丁寧に慰める
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無い尻尾しっぽ一生懸命振る老犬 分かる分かるよあなたの気持ち
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いっそのことザーザー降りになってくれ 運動会に天気悩まし
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寒がりははや懐かしむ暑き夏 冷え込む朝に靴下を探す
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里芋の葉っぱに転がる朝露で書いた短冊 七夕懐かし \羊の皮を被った山羊さまへ
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ふんわりとおさまの匂いにくるまれる 布団を干して今日は幸せ
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週末は息子が当番皿洗う 指図さしずはしないが平和の秘訣
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思わずに「うわー」と叫んだ 箱の中シダに包まれ松茸あらわる
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運動会 上手にくるりと前回り ポーズも決まって にっこり五歳
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母の手を優しく引いてる 息子かな? 二人の姿 我に重なり
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発表会 一年続けた猛練習 あっさり流れる 選挙のために
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イヤイヤ期の扉を開けたか 一歳半「やーだ」「やーだ」とママを困らす
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キョロキョロと 置いてきぼりに気づいたか  白鷺しらさぎ 一羽 仲間の後追う
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スッキリと枝切りされた柿の木々 実りを終えて青空仰ぐ
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嗚呼こんな時もあったよね 姉妹きょうだいで 母の遺影の写真を探す
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終焉の時が近づき母想う 夏の再会 も一度かみしめ
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うたごころはや死にしかば現實の實ももたざるはなごろもかな
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さればいにしへの戀はらからの今際の面散る昨日いきてしか
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山の端へけぬるかたへへ花霞たつけふをかぎりのいのちならまし
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まこと亡びとももふ歌たらざりしいきのこりとはわがことならば
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佛頭焚かれ やかれもせずにをのをのがとらはるるは上手ならずや
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人間に意思などあらじ 「むかふ家に百合の黄の花がたつたやう」
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さばさばさばこきくれなゐのはねごろもたててふるなむしらかみのゆき
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やっちゃった! 気が弛んだか ぎっくり腰 嗚呼また始まる 動けぬ日々が
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祖母の手に見える干し柿焦茶色しわくちゃだけどそのぶん甘い
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君が過去詠んだあらゆる葛藤がどうしようもなく私でもある
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