想い出す時間が徐々に減っていく 気づかないふり今日も明日も
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薔薇のトゲプチッと取ってツバつけて 鼻の頭に可愛いピノキオ
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実家ではやかんで10分かけていた湯たんぽづくりケトルで2
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綿棒を鼻の奥まで差し込まる あの検査が厭で医者には行けぬ
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天海の冥色めいしょくまとい鬼気ひそみ背に打ち寄せる波の慟哭
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綿棒の検査を受けて結果待ち 「はずれ」を願う妙な籤引き
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なぜダメか教えてほしい 自販機に拒絶されてる硬貨はわたし
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「じれったい」安全地帯の曲を聴く コロナの症状一進一退
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晴れ渡る 母の生まれし 日に思ふ 空襲逃れ 生き延び『ツナグ』
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私から旅立ち誰かの物になれ集めて生やしヘアドネーション
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嫌いだよ好きでもあるよ人なんて完全無欠は息もできない
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山の湯で近くに熊が出たと聞く 湯船に溶けし凝りが戻りぬ
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インフルやコロナでなくとも風邪は風邪 微熱こらえて営業回り
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死んだなら何が出来るか知りたくて試しに死んでも戻れませんよ
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奮発しピザを取ったがその味が塩分過多で吐きそうになり/味覚障害?
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秋風が思い出ばかり連れてきて私の心とばされそうだ
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誰だってまぶたの裏に隠し持つ今よりもっと高かった空
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ポケットの中繋ぐ手は温かく 1月の海寒さ感じず
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かまどから離れぬままの母せかす匂いに待てぬ腹鳴る夕餉 / 追憶 五人きょうだい
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さりげなく餅の話題をはさむ母そうきたかって話題をそらす/介護
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冷へ込みの深まりぬ 霜月の朝 止めるアラーム 冷ゆる指先
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眼下から 紅葉こうよう映る せせらぎを 無で眺めつつ カニを追いかけ
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ふかし芋もはや多くは口にせずなお父へ湯気届けたくあり
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天守から 木曽川眺め 時が過ぎ 携帯アラーム 我にかえって
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線路沿ひ 微風そよかぜ揺蕩たゆたススキ 通勤を飽きさせぬ風景
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アゲハ蝶 ビオラの花の 蜜吸ひて 西陽に光る 美しき羽
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自分では死ぬことさえも出来ないとベッドに乗せられ管を繋がれ
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ダンディーで 寡黙な喜寿の わが部下は ポテト大好き 笑顔でほおばる
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行きつけの店 バースデーサプライズ 居合はす客からも拍手を浴び
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空泳ぐ鯨の雲の腹の中 肋骨あばらをくぐるピノキオと我
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