重ね着た罪を一枚ずつ脱いで見せる裸も公然猥褻
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世界から逃げ出してしまいたい夜は 匿ってくれ よだかの星よ
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どこにでも誰にでもまた嘘をつく 「相手のため」を免罪符にして
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透明な砂がこぼれていくようなまだあたたかい夢をみている
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末娘の病の告白に泣く妻と動転かくすわれ医師なれば
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月見えぬ夜は大きな犬連れて 少し離れたコンビニ行こう
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母の背をとっくに越した小六がぎこちなく袖通す制服
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まどろみの夜ほころびゆく午前四時そっと犬と歩みゆくかな
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沸騰を知らせるメロディー「愛の讃歌」古いくりやにピアフの調べ
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雪見酒 兄の羽織と 酌み交し  赤穂の塩の 涙酒かな
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時雨去り一気に注ぐ陽の光 青き椿の葉を艶めかせ
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ショーケースの中の白き熊のと、が合う刹那黒熊偲ぶ。
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入口の 小さな白い 喫茶店 バナナジュースは 初恋の味
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波多き 人生なれど 刻まれし 愛と記憶は いろどりとなる
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旅戻り早速干しいも作業する無事に感謝し日常始むる
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仰向けでいびきかいてるミャースケにもはや野生のかけらすらなく
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小春日の温もりは母を 木枯しの厳しさは父を想ふ初冬
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初デート ママに内緒でいくからね ブタ公園で君を待つ僕
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曇天のたまに雨舞う一日は唯々ただただ明日の晴れを待ちおり
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同僚ともからの 旅の土産に 温もりぬ 忙しくとも 足痛くとも
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程々の緩さを秘めて仕事する真面目なあの娘に伝えられたら
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断捨離の荷をのせる時軽トラにとまった蜻蛉 秋の終わりの
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指先が母になりゆく初冬の夕 ポテトグラタン肉じゃがにする
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朝四時に使命を背負ってひた走り僕を追い越すはたらくくるま
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タクシーが角まがるまで両手ふる妻と吾なりの無事ねがひ
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デイケアでおしゃべりはずむ女性陣寡黙な小数男性陣よ
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聞き慣れた朝のアナウンサーの声 今朝は鼻声 流行りをる風邪
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批判することは簡単トゲトゲをもて余してはスマホをさわる
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もし恋がおわるとしたら ぱちん そんな音がなるのかな
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野薔薇のいばらは寒さに耐えて茎も実も赤くなりけり 空を見上げて
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