人草絶ゑて弔鐘へ祷る慰霊碑へ霙 皇帝とは誰なるか
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敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり
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知らせ受け義兄あにの葬儀の準備する 近づく台風 不穏な朝に
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蝉の声 嵐の前の静けさか 手持ちぶさたにシフォンケーキ焼く
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とん、とん、と幼きわれの背をたたく母の指にも似たる雨音
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いつもより数分早く出た朝は空も街もなんかパステル
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ガチャピンよおまえはどこを目指すのか己が極地の地平線行く
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冷めきった紅茶をレンジであたためる心の温度は取り戻せずに
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病床の猫にチョッキを編んだ日は独りぼっちの今日を知らない
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人生を達観したかのそんなふうまるであなたはみつをのようだ
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マフラーからはみ出た耳たぶの林檎色きみがかわいく色付く季節
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高い空飛行機ゆっくり交差して西と南に見えなくなった
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柚子の木に柚子の実のなる庭ありて売却物件なるぞわびしき
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一月の日射し明るき林間を母と歩けば冴ゆる阿夫利嶺あふりね
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鳶色という言葉知るあの人を思い出してるその眼差しを
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リハビリの窓に眺める茜雲音も無くゆく日を追いかけて
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ひらひらとなにか舞ってる見上げれば白く小さなあゝこれは雪
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ファミレスで2時間位もてばいいこれが笑顔のタイムリミット
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自転車を漕ぐ間に昇る朝の陽の熱に溶けゆく真白き吐息
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年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
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手挽きミルゆっくり回す日曜日眠る我が子を起こさぬ様に
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冬七に春三分程日の光 少し切なくなる白い色
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満月に誘われるよに南から一等競い春風は吹く
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ぼたもちを 自分で作って 棚にのせ 偶然じゃない けれど幸せ
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風の吹く夜更けにバスを待ち居れば影絵の森に怯える月夜
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図書館の 棚で偶然 目があった 私を見ていたような 背表紙
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戦争の 反対は 趣味  儲からぬ それでも豊か 歌も平和も
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因縁の対決は大盛り上がりだったカメラじゃなくみなスマホ
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もう父に 届かぬ歌を 詠む夜道 去年の桜は今年もそこに
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朝食あさは抜くぼっちランチの今日の日は たまごサンドを頬張る予定
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