好きだよと言ったところで変わらないあなたは何処へきえたのですか?
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戸惑って熱い想いは返されて私が何をしたって言うの?
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敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり
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父殴てる馴犬哀し。頸枷に「愛われを創れり」彫られて
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街路樹の向こう側から吹く風が不意に浴びせる夕立の余韻
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流体に 心細げに飛ぶ 燈 祖から受け継ぐ 今が幸せ 
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私は国立理系院卒です迷えるチンポを探しています
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歴史喪失そののち四月朔へと雪 長靴の裡入るけがれ
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灯籠に宿りし御霊流れ行く暗き水面に月影揺れる
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引いたばかりの大吉すべて燃やし凶を木に結び いっとき 不安を味わう
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長命の蝉が仲間の亡骸を前に鳴くのを躊躇っている
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焦らずにゆっくり行こうと君が言う 何年経てば側にいられる?
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猛暑日にピーポーピーと気にかかる故郷に住む老いた父母ちちはは
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月は秋 時を得たりと啼く虫の 声聴く吾は無常に惑ふ
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月明かり眺めているとふと想う 同じ光を見ている人を
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飛び跳ねる仔犬の体抱き上げて頬ずりすると小さき舌で舐め
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取り出して放置わずかでしんなりと入れ歯にやさし夏チョコレェト
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手のかかるでかいペットのようだなと言葉通じぬ母見て思う
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生い茂るぶどう棚下首かしげ乙女ぶりたる我を恥じ入る
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「ここを出て家に帰る」と義母は言う黙らすために「私と暮らす?」
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笑い皺深くなるほど愛したい秋の光で鏡眺めつ
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ぷかぷかと波に揺られてゆく舟は姉の精霊舟ふねなり小さく手をふる
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校庭にこの声聞けぬ夏休み寂しさ覚え秋学期待つ
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Amazonの段ボール箱溜まりゆく僕の物欲ごと潰したれ
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去る夏を惜しむ心に陽水の歌うカナリアすっと沁む夜
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幼子と何度も何度も観たトトロ 十五になった君とまた、観る
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安堵すらできないままでいる長い長い廊下の列に並んで
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僕のこと 好きだと言ったの 嘘ですか 嘘だと言うのが 本当ですか
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あの当時 会えばケンカのあの子とは 二十四歳いまだに続く 幼友達
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季節って それぞれ匂いがあること 初めて知ったこの歳になり
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