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ピクリとも 動かぬ森の 木々たちの 沈黙の底に 流る水の
音
(
ね
)
54
魂の 入れ物ひとつ ぼんやりと 駅のベンチで 電車 見送り
59
虫食いの あとは涙の
型
(
かたち
)
して くもり空にも 朝顔は咲く
66
あした咲く つぼみさがして 安堵する 半分いじょう かれてる朝顔
49
隣家
(
となりや
)
の 煙突屋根の 三角の 影がとどけば 開く秋の戸
43
白黒で はっきりさせないこともまた 美しさかも 百鼠色
63
稲刈りの すすみ具合が あいさつの 田んぼの町の お通夜の席の
47
露結ぶ 中秋の月 おぼろげに 絶えた虫の音 静かに包む
46
錦繍を バックに
吾
(
われ
)
を 撮る
夫
(
つま
)
の 落ち着きのなさ 笑う十勝岳
44
溶け残る角砂糖こそ甘かりし夜更けてそこに灯る思い出
52
熱闘は 悔し涙に たそがれて 雪のにおいの 空を見上げる
/
日ハム
33
雪道の 峠のカーブ 右ゆけば トンネル
明
(
あか
)
く 我を吸うなり
43
人びとは 縦横無尽に 行き交いて ひとり
佇
(
たたず
)
む
駅コンコース
44
桜葉
(
さくらば
)
は
一葉
(
ひとは
)
のこらず 落ち果てて 届かぬ手紙 どどと着くよに
44
風邪の子に焼くオムレツの甘い香と休む仕事の後ろめたさと
51
バレンタイン あなたの為にリボンつけ 気持ちに蓋をし自分で食べる/「真心」
14
白壁の土蔵を覆う蔦紅葉きらめき揺るるそよ吹く風に
41
積雪は 十九
糎
(
センチ
)
きのうまでの 浮かれ気分は 静かに埋まる
52
替えの効く生を受けても 代替のそいつは僕を詠えないだろ
19
檜葉の枝杉の木の枝花屋にて並び始めて冬の訪れ
46
大陸の 友と語りて笑いあう 小さき外交 祈りかさねて
56
雪よりも一足先に白散らせ 月夜が照らす 八重の山茶花
20
五平餅売らる茶店の灯も落ちて紅葉祭りも日暮れて終わる
42
ほほ笑みは 生後三日の
児
(
こ
)
が語る キユッ とあがった ピカピカの頬
47
老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
38
玄関は吹き溜まりなり 帰り来て最初の仕事落ち葉の掃除
30
フード越し風が鳴るのを聴いている星瞬いて流れて消えて
53
一列にまとまるムクドリ鳴くを止め首傾げ見る駅向かふ人
39
どの家も玄関明ければその家の安堵と云ふ名の匂ひのありて
53
親の前 泣けない子供 たちはどこで 泣いてるんだろう 声がきこえて
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