もう戻ることはできぬと知っているカナカナカナとひぐらしが鳴く
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新築の お墓に あるじ 納めれば あかねの空に しろいアジサイ
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一匹の 蟋蟀こおろぎの声 ききながら 眠りにおちる とがなくて死す
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山の端の ちっちゃな青空を めざして 雨を泳ぐよ くじら12 / ドライブBGM
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ゆるるりと回り灯篭動き出す走馬の影見し宵闇の道
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てのひらに収まる小さなスニーカーそんな季節もそろそろ終わり /吾子三歳
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あの家のノウゼンカズラ見えたなら歩幅広げし吾の決め事
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掃除機の手を止めじっと立ちつくす今この時刻原爆落つと
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トマト枯れ 空いたところに 半額の ヒョロきゅうり苗 植えたらすくすく
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山並みが 重なるはるか 遠くまで ここにいるよの 木霊を待って / 山の日
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盂蘭盆會の ご先祖たちは なに思う 帰るところが あれば嬉しい
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ピクリとも 動かぬ森の 木々たちの 沈黙の底に 流る水の
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魂の 入れ物ひとつ ぼんやりと  駅のベンチで 電車 見送り
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文字も無く駅そば写真のライン来る立山かまぼこに思ふ旅先
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エアコンを切らば朝まで虫の声こうして秋は日々近づきぬ
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虫食いの あとは涙の かたちして くもり空にも 朝顔は咲く
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バス停は人影も無くこの夏を閉じ込めるよに降る蝉時雨
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この夏も仕舞いの市民プールからふわり飛び立つシオカラトンボ
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みまかりて三十余年経し夏に初めて訪いぬ亡父ちちのふるさと
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行くことは叶わぬけれど山車だしが出る長月二日今夜宵宮
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新米と秋刀魚購いささやかな幸かみしめる十三夜かな
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いくつもの花びら風に舞ってゆく夏の化身の百日紅ひゃくじつこう
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あした咲く つぼみさがして 安堵する 半分いじょう かれてる朝顔
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「女だし 告白なんて しないわよ」 あぐらかいてちゃ 先を越される
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秋茄子の光る畑や熟したる無花果見つつ通院の道
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デジタルの目覚まし時計を逆さまにして眺めてる夏が終わる日
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ひりひりと波立っていく心なりほんの些細な出来事なれど
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雷光の度に強まる雨音を一人聞いてる音の無い部屋
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石垣に垂れ下がる葛花咲きてシジミ蝶いく蜜を吸いつつ
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亡き夫の好みしおはぎ供えんと朝から小豆コトコトと煮る
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