亡き夫の好みしおはぎ供えんと朝から小豆コトコトと煮る
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稲刈りの すすみ具合が あいさつの 田んぼの町の お通夜の席の
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露結ぶ 中秋の月 おぼろげに 絶えた虫の音 静かに包む
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錦繍を バックにわれを 撮るつまの 落ち着きのなさ 笑う十勝岳
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溶け残る角砂糖こそ甘かりし夜更けてそこに灯る思い出
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熱闘は 悔し涙に たそがれて 雪のにおいの 空を見上げる / 日ハム
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雪道の 峠のカーブ 右ゆけば トンネルあかく 我を吸うなり
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豊作の冬瓜欲しがる人わずか所在なさげに小屋の隅っこ
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人びとは 縦横無尽に 行き交いて ひとりたたず 駅コンコース
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桜葉さくらば 一葉ひとはのこらず 落ち果てて 届かぬ手紙 どどと着くよに
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風邪の子に焼くオムレツの甘い香と休む仕事の後ろめたさと
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鳥渡る 諏訪湖の水辺賑わかせ冬を遊べや春帰るまで
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白壁の土蔵を覆う蔦紅葉きらめき揺るるそよ吹く風に
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替えの効く生を受けても 代替のそいつは僕を詠えないだろ
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檜葉の枝杉の木の枝花屋にて並び始めて冬の訪れ
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大陸の 友と語りて笑いあう 小さき外交 祈りかさねて
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雪よりも一足先に白散らせ 月夜が照らす 八重の山茶花
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五平餅売らる茶店の灯も落ちて紅葉祭りも日暮れて終わる
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老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
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玄関は吹き溜まりなり 帰り来て最初の仕事落ち葉の掃除
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一列にまとまるムクドリ鳴くを止め首傾げ見る駅向かふ人
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どの家も玄関明ければその家の安堵と云ふ名の匂ひのありて
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日常を 普通と思ふ 幸せが 戻らぬ事に 気付く年の瀬
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来る日々をせわし暇だと呟きて矢の飛ぶ速さで春夏秋冬ひととせは過ぐ
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土をわり芽吹く緑のえんどうの産声聞こゆ木枯しの笛
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好きだから時間をかけてやわらかくふっくらくらと黒豆を煮る
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吾の雑煮 息子美味いと 好評価 妻の遺影に 笑顔で供へ
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図書館で多めに借りていた本をようやく読める一月五日
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冬ざれの色無き山のふところに黄色に灯る八朔たわわに
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ひび割れた 吾の手のひらの ぬくもりで いやせるものが 有るのだろうか?
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