十円を 落として覗く 自販機の 下に転がる 拾われぬ春
3
新緑を 眺める貴女 笑顔見て このままずっと 時を止めたい
3
日がなぱたぱたぱた水の落ちる音いつかひとつの大曲となる
4
ラジオから流れる天気予報「雨」修行出るなら今しかないか
8
おきざりの夏蝶ばかりわれをおき帷子色の屍ひしめかせたり
5
つまらないおとなになったあの時のかえらぬ傷が疼くのだった
7
ブランコが高く上がれば上がるほど 美しくなる 重力の虹
39
人間は いったい何本人生で フライドポテトを食べるのだろう
34
キャトルミューテーションを指示せし宇宙船内に呻きて置かるトランプの脳
4
一歳半 床に突っ伏し駄々こねて 小さな神様 にんげんになる
58
女子会で 今の子みんな美形だと 昭和の普通が口々に言ふ
30
北海道に新婚旅行夢見てた妻とハワイも今は難病
7
ゆるるりと昭和漂う喫茶店 同じ匂いの友と語らふ
21
幼き日姉弟こどもが登った桜の木 伐採前に最後の開花
14
車窓には 田んぼの緑 果てしなく 来世をさがす 旅のはじまり
32
暑いのに 冷たさに負け 五臓六腑 ゆっくりじんわり しみるポタージュ
23
夏木立 陰のみどりは 黒ぐろと 海を思わす 深い深い海
24
浄土にも セミの時雨しぐれは あるかしら つんざくような エンドレスコール
30
恐竜の 絶滅みたい セミの声 花野はなのに息吹く 虫たちを聴く
31
アジサイが まだ青々と 咲いている チクチクするよな 酸性の土
32
無花果いちじくのほのかに甘い風香る 無花果の木の小さな木陰
39
満月を明日と待ち侘び本仏に備えた麦茶に夜もそぞろに
13
血の海に 子を落としたる えんありか サンゴ草咲く 海原に立ち 
31
魂の 傷がその人 たらしめて そこはかとなく 悲の彼岸花
47
愛用の お花鋏も 四十年 いちども研がず チカラワザで切る
31
各各かくかくの 流儀にそいし 雪國の 仕舞いはすすむ さいごの竜胆りんどう
31
いわし雲うろこ雲とか昔日の人々海を愛していたね
40
寒さ増し川原に集う野鳥にもヒタヒタ寄せるインフレの波
18
冬空にスノームーンは冴え冴えと凍土に咲くはスノードロップ
22
わだかまる。漢字の由来 知るにつけ 永い歴史の 人の魂
42