体力は基準ぎりぎりオーケーと 施設に並ぶ筋トレマシン
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ちゃっかりと僕の寝床の中央で寝ている犬に「もしもし」と言う
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富める日本。夢遊病にてくちずさむ約束手形に偽眞珠母 生る
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賛成の萬歳響く駅前に傀儡のごと晴着――濡れかへ ら ず
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溌溂と晧歯剥きつつ小綺麗なる口蓋言ふ 「原爆もたば」
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いくつものゲタがならんだ三世代ほど未来から来たラブレター
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「あれー」っと短期記憶があやふやで脳裏をよぎる認知の二文字
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免れぬ老いではあるが胸底に忘れたくなき乙女心よ
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とりどりの百合の花咲く庭園に蜜吸うアゲハ陽に煌めいて
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いたずらを𠮟られそうな柴犬がソファーで狸寝入りをしてる
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家庭科でどれくらいまで習うだろう娘のジャージに千鳥がけする
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むきだしの心に傷がつくたびに 強さと弱さの歪みに流離う
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さきどりの幸せに溺れてふやけた心がめくれてヒリヒリするの
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オアシスの活断層の深くへと沁みていくような湿潤療法あなたのみず
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君が居ぬ 夏祭りなど 意味もなく 花火の音が 心底を突く
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流れゆく誕生日の群れもうすぐに夢が叶うと夢も無いのに
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美しい 語彙の源泉 かき混ぜて 生まれ流るる 無数の泡沫うたかた
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夕飯に取り出す玉子は小さくてにわとりも今夏バテと聞く
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何もせず 夜中になって 後悔を する夏休み 抜け出したい
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暗がりに 見つめる一点 ナツメ灯 私は何を してたんだっけ
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猛暑から蝕まれつつ起床するふとした仕草で足がつります
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一匹のイワシとなって終電の漁火いさりびめいた明かりに向かう
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条約に隔てられてもなほ海は絶へず微分可能な球面
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この歳で記憶の中の恋愛は全てきれいに磨かれている
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来年の 歌会始を 夢に見て 最初の歌が 百面相
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熱狂の舞台で不意に音が止み 今日も貴女の幻を見た
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よい人と認められたいあなたには悪い心が潜んでる
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あんな風に死ねればと思わせた父の大往生
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心臓を掻きむしりたい悔しさも灰になったら誰も知らない
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白桃とプラムの香り 線香と夕立あとの路上の香り
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