翠星むいろ
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2025.05.17 下の名前が変わりました
酔って、眠って、忘れて、それでもふと思い出すような、そんな短歌を目指しています。

トワと呼ぶ小さき命よ永くあれ ヒト科の願ひ水にたゆたふ/熱帯魚飼育
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湖へ投げた小石のぬくもりが指の奥まで残るさみしさ
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勤勉に照りつづけたる太陽に貼ってやりたし冷えピタシート
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澄きとおる水面みなもにゆらぐ浮草を枕に眠る鯉ベタ愛し
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「生きているだけで上等」言祝がれ 相応しき身か ぢっと手を見る/誕生日
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静寂の夏を歩みし夜の道 町の灯りを花火とぞ見つ
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焦げつく日 この世をよそに袖ゆらし涼しげに舞ふ熱帯魚かな
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猫よ何故クーラー効かぬ部屋で寝る 仕事帰りのぼやきひとこと
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おずおずと熟れたすももを持ち上げるように抱いた幼いぬくもり
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サイダーの結露をなぞるつるつると流れていけよ昨日のヤケド
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焦げついた卵と朝を触媒についに生み出す母のオムレツ
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焼いた肌癒すつもりの冷たさよ 今日のご褒美スーパードライ
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風も無きあき地の空を颯爽と とんぼ二匹が縫いあげてゆく
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雨戸開け大暑の熱を身に受ける セミも項垂る真昼の静寂しじま
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買いたてのデジタル時計大合唱 跳ねる心臓 新しき朝
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宅飲みも居酒屋もまた楽しきや 茶漬け啜りてひとり思へば
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蝉しぐれ降りくる音に見上ぐれば朝の竹林ひかり揺れおり
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いつもとは違う道ゆく八時半 いつもと違う僕でありたい
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この度の遅延をお詫び申し上げ悼みを噤むホワイトボード
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照りつける陽に目を伏せて歩くわれ しかと前見て駆けゆく少年
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低気圧 陸にいながら船酔いのごとくに揺れる我が身のふしぎ
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背徳よ流れてくれと願いつつピザのおともに黒烏龍茶
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猫のは宇宙に似たり 照明のひかりが描く小さな星図
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小止みの間セミはかそけくさざめいて短き命を燃やすのだ いま
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暑さ負け 油切れたる機械めく身に沁み渡る出汁だしの一滴
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晴れだって泣きたいときはあるだろう 干すハンカチはきみにあげよう/天気雨
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街路樹と手を繋ごうとしてやがて取り除かれる蔓のかなしみ
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曇天に綾なす音の木霊して 遠雷と雨、セミにウグイス
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塩漬けのブラックオリーブ惜しげなくパンに挟んで至福のひととき
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沈む日の色を映して赤く生るトマトひとつを撫でて手折りぬ
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