ドアが開き目の前に見えるエレベーター 今日は乗ろうか私はシニア
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眠るの耳元にそっと「さんぽだよ」ささやく夫に優しさを見る
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君だった何かの残滓 苦しさも夏雲とともに忘れていく
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ビルケナウにガザの髪触れ合ひ混じり死の後も死者なりき兄妹
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木香薔薇の花言葉を純潔 死へかけがへのあるものならば
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萌黄野へ蝶たちぬわづか血をふふみおとうとの吹く Gute Nacht
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急かされているかのように生きている まずい気がする まずい気がする
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恥ずかしい思い出ばかりが甦る 恥を知らずに生きてきました
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気に入りのクッキー缶に本年の七夕飾りしまい納涼
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夏休み静けさの中出勤す 校庭にははや工事の足場
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音も無く陽炎かげろうゆれる濃い桃の百日紅さるすべり咲く 誰も居ぬ午後
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マスカラが 溶けてにじ滲みし スクリーン 閉じるまなこ眼に 沁みる『ルックバック』
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「まだ読むの?」疲れた兄ちゃん逃げたいが 一歳あと追う「もういっかい!」
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海底を二万マイルも行くように静かに静かに寝ます おやすみ
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祭り済む小さき村に笛の音の聞こえた様な秋の風吹く
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この街のいたるところに残る靄 嫌いになっても消えない呪い
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この手だけ、終ぞ会えない、届かない 藍夜が鎖すその菫だけ
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分厚めの 段ボール箱に毛布敷き  冬じたくして あのミケを待つ
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ホラー映画見て寝られなくなっている自分 なんだか愛おしいよな
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冬空に明星一つ煌々と遺す光は地上を照らす /追悼 谷川俊太郎様
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心から溢れた「またね」が困らせた 俯いた君  嘘だよ ごめん
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冬風と戯れるよに舞うとんび 空は遥かに広くて青い
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粗大ゴミ置き場置かれた姿見に映る私に見覚えは無く
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親という 一番近い歴史見て 繰り返さぬと誓ったんだが
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なすすべも ないと思える夜にこそ ハチドリ習い 一滴の歌
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お野菜は三食取りなと言った日から 確かに歳を取った気がする
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もふもふの愛犬いぬの形の空洞を抱えて生きる ささ身を供える
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ありがとうそのひと言ももらえずに 今日という日が静かに終わる
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足下に からだくっつけ 横になる 年老いた犬 ふわりあったか
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切り開く未来の意味を持つと知る 父が娘へ 贈る包丁
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