風切りの音が路上をさらってく夜の始まり冬の始まり
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朝ぼらけ瀬々の網代木あじろぎ現れて霧よりくだる宇治の柴舟
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誰よりも早くコタツにもぐりこみ寝息をたてる猫をなでたり
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漆黒の 丘の稜線 なぞりつつ 月の輪の凛と 今現れぬ
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深夜の食事 危険だね 取り憑かれたように なんでも食べてしまう
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死ぬなんてそんな怖いこと言わないで、百年後まで徹夜しようよ
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青色に ラッピングした 恋という 砂糖菓子の溶け 雲のてのひら
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音楽の底であなたが手を引いてわたしは二人称に溶けゆく
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秋空は 淡く哀れに 泡のな 今亡き夏の 君の半袖 
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暁の寝覚めに鐘の音冴えて露は霜にや置き替はるらむ
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風の中まだ君がいる気がしてる道の向こうの堤防の下
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呼ばれたと何故か思えるこの町に光る水面に僕は映らず
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スープジュリエンヌ 皿に満たして 軽やかに 銀のスプーンの 泳ぐ午後の【千切り野菜スープの事です】
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ねえ僕も野球のルール知らなくて この世は少し息苦しくて
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久々に会えば思っていたよりも少し痩せてる父のかんばせ
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山並みが白く霞んで消えてゆく黒い砂漠を車は走る
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イエスマン 無駄な会議を ダラダラと 意味ない討論 手を動かせ
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エアコンの音が聞こえる 心臓に包丁を突きつけられた夜
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あれこれと日帰り旅行の計画を立てる日向でお茶を飲みつつ
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冬眠をわたしの胸にあく穴でさせたい迷子の野兎を抱く
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街路樹はいくつもあかりを吊り下げてひそかに星を養殖してる
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親も子も 毒も薬も 喰らいつつ お腹くだして うたかた処方
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朝の度植物たちに霧を吹くこれも一つの祈りの形
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通行人Aにも帰る場所がある 皆足速みな あしばやな初冬のビル街
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風に舞う 白き六花の 粒滲む 手弱女のごとき 君が睫毛に
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まつり果てて人影絶えた広場から梯子でピエロ星へと帰る
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塒から発つ白鳥を追う旅立ちぬ祖母送る日もみた景色かな/三回忌
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息子のとこ 行くはずだった しょうがない 今日はおうちで いい子にしてる
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きしのふたおやの声おもはする こはるひよりのやはらかな朝
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オリーブの深緑色ふかみどりいろ 空き瓶に薔薇生けてみて勤労感謝
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