急に来た秋に焦って七分丈 引っ張り出してアイロンかける
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バスに揺られ外を見ていると何モノかが迫り上がって来て気持ちを塞ぐ
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叶わない願いというのもあるんだと納得しながら絶望する夜
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せっかちな秋の訪れ早すぎる 夏の名残に浸りたかった
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友よりの画像に一面「サンゴ草」佐呂間湖畔に秋の息吹が
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たはむれに吾を背負ひし四十吾子ひとり身残こし母老い逝けん
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軒先の朝顔今が咲き盛り夏のなごりの青色の花
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お料理が美味しかったと惜しげなく伝えることも生きる意味かも
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稲刈りが済んだ田んぼに爽やかな風吹き抜けて夏運び去る
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揚羽蝶 運ぶ蟻たち 粛々と 夏をとむらう小さな葬列
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対面す人の表情作るのは実は私だ先に笑おう
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姉に手をひかれ初登園父なき子にしなくてよかった愛しきかの日
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白黒で はっきりさせないこともまた 美しさかも 百鼠色
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そよ風が揺らすカーテン おはなしは ハッピーエンドでやめておいてね
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稲刈りの すすみ具合が あいさつの 田んぼの町の お通夜の席の
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人間の顔をしてるが本当は猫とか犬や兎な僕ら
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懐かしく夢にあらわる あの青い 花冠はなかんむりあかりに揺れて
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まな板の上に採れたてカボチャ待つ夫の出番半切り作業
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絶対やずっとを口にできる若さ 短所は案外綺麗だったね
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また一人 昭和のじいが 亡くなって 透明感が 増す秋の空
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高速のトイレ休憩置き去りに 修学旅行が一人始まる
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晴れた朝クリアに見える稜線のほんのり赤み頬紅みたい
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春先に ふとまた気づく 雫かな 知らす新緑 濡れた桃色
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読経の 僧侶の袈裟は 藍白あいしろに 金銀の雲 暮れてゆく秋
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掬い取る三日月の影を栞にし鉄道に乗る帰る明日に
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本日は快晴じゃないけど晴れているそんなところでいいんじゃないか
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自転車道横切る三毛猫しゃがみこむ動かぬ彫像しばし眺むる
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寒き冬高速徐行闇に浮かぶフェラーリ赤く熱波のよに燃ゆ
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内向きな心を外に誘い出す巧みな陽キャ救われる秋
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執着を手放した夜の青い月孤独なようで自由で身軽
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