白菜のまるまるひとつ贖いし乳児を抱くごと大事にかかえ
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夜半過ぎ 香りにつられ 屋台寄る お湯割り握り ラーメンを待つ
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「伝えたい・・」拙い歌に想い込め風の便りに願いを託し
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帰省せし吾子の見事な食べっぷり 老いの夫婦われらに眩しき程の
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金木犀もくせいの香る陽なたに黄蝶二羽ひらり束の間の秋とたわむ
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悪夢しか 出ないおまえの存在を 覚めて叫んで 己を呪う
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隠された職人のわざ用の美に思考の奥行き今に息づく
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美味しそー単なる気持ちを発しても褒めてもらえたようで嬉しい
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半月でコキアの色は赤み増し季節の進み確かむ秋の日
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昨日観た映画の続き生きる様、絶望じゃなく、希望を持って
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朽ちし葉は螺旋らせんえがき舞ひ降りる 露天風呂から眺む晩秋
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秋風の淡き夕日に密やかに秋明菊は細き手をふる
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くもらせて雨を降らすも人ならば 晴らせて照らす故も人なり
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弾む声足取り軽し乙女らよ我にもありし青春の日々
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木犀の香る坂道一歩づつ杖を頼りに空仰ぎつつ
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名月を丸く見たくて度の強い眼鏡欲しくなる十三夜かな
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切り花のコスパ日割りで考えるそんな僕にも秋のひだまり
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難病で 召されし吾子の 墓参り 心落ち着く 秋の一日
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満たされる事なき渇いた魂が無表情の下叫んでるんだ
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こがらしや 赤み増しゆく マンリョウを 「さき桜桃さくらんぼの如」 と君
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薄氷うすらいの ごとき夕月 ふち欠けて 羽虫の飛びて 闇に溶けゆく 
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少しでもお金に愛されたいからと財布に付けたローズクォーツ
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静寂の 秋の夜長に 君想い 歌奏でるは ああ小夜曲セレナーデ
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秋時雨止みて差し込む陽の光 吾子去りし部屋そっと明るめ
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雨戸開け施設の義姉あねの家じまい開くアルバムに手を止め見入る
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おまえのな 出来ないことと行けぬとこ 我独り往く 共通おもいではない
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落葉らくようの木々はそれぞれ色のなく白樺の幹とカラマツの黄と
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木枯しの一号雲を掃き清め澄みし御空に十三夜月
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午後に聞くオルゴールの曲優しけり尖りし吾を撫でるが如し
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別れ際君にあげたあのブラシ二人の仲も解きほぐせたら
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