解体の音もさみしき秋の雨誰かが住んだ家が無くなる
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木犀の香り今年も漂って案外僕らは幼いままで
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海底を二万マイルも行くように静かに静かに寝ます おやすみ
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帰宅してシャワー浴びれば流れゆく私の形の見えない何か
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包丁を逆さに持って皮をぐ ゴボウの白さにいつも驚く
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多じゃなくて個になりたくてもがいてた 白い校舎に捨てた青春
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ブレーキをかけてしまった感情にもういいよってねぎらう夜更け
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見た目より中身が大事と言う口で綺麗なパンを選んで食らう
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分厚めの 段ボール箱に毛布敷き  冬じたくして あのミケを待つ
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舟を漕ぐ母が歌いし子守唄 眠れぬ夜は胸に起こして
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正気ではやってられない世の中に なじめる狂気 身につけて冬
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真夏には木陰をくれた くぬぎの葉  お疲れさま と ほうきでなでて
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ふつうなら とっくに憎まれてるはずの 前世がたぶん猫だった人
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過ぎてゆく時の速さに溺れぬようきみを楔と定めていたい
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鮮やかな靴下を履く うつむいてしまった時の励ましとして
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残高を指でなぞって考える いくらあったら逝けるのだろう
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錆びついた故郷の外を知ってなお時折よぎる寂しさがある
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すこしだけサドルをあげて来年のぼくの視線で走る自転車
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撒いたあと歳のかずだけ食み豆をわたしのなかの鬼にも投げる
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歳ひとつ脱ぎさるごとに柔くなる 幼さゆえのこわばりを解き
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この電車動くと君は過去になる雪がやむころ想い出となり
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君がまだいる頃に買った洗剤を使い切れずに歳を重ねる
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何にしよ? やっぱりカレーね 好物の 夫退院「うまい!」と頬張ほおば
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理解とは「理性で分かる」ということで こころは未だ無知のただなか
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我を越え三児の母となったよ 出産終えて貴女あなたはまぶしい
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年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
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創作の泉じゃないのよ傷口は カサブタ剝がすのたのしいけどさ
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「チャッチャッチャッ」もう聞かれない足の音 歳老いてキミはひたすら眠る /ののの様へ
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いつからか背に寄り添った諦念の顔をまだ見ぬふりをしている
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伊達眼鏡 さりげなくUVカット 気持ちだけでも お洒落してみる
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