0時過ぎ 魔法は解けて 乗り損ね 中身空っぽ 馬車だったもの
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秋雨が 世の塵洗うを 聞きながら たまの長風呂 吾の塵洗う
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俺のことを悪く言うのならあいつのことはもっと悪く言うべき
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遅まきの誕生祝いと次男の誘い紅葉の下の足湯に浸かる
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待つ人の 無き家の灯は 消え果てて 今庭に灯す イルミネーション
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美しき 薔薇のカップを 並べ置き 誰ふるまう事なく カモミールの茶
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繰り返し感じてしまう苦しみも 今世だけのラストワン賞
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薄氷うすらいの ごとき夕月 ふち欠けて 羽虫の飛びて 闇に溶けゆく 
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だけど、まだ、歩けるんだと言い聞かす がらんどうに埋めた強がり
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愛犬の匂いの残るこの布団 そおっと下ろす小さな骨壷
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こがらしに震へぬやうに足許を 脚絆きゃはんの如く守るウォーマー
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ベランダで スマホを空に 向けながら 平安の夜と 同じ月見る
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雨の日も頑張って風の日も頑張ったけど晴れの日サボってた
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忘れたい事柄 ホワイトボードのマーカーの如 消し 前を向く
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十七夜じゅうななや仰ぐベランダ 澄む空気 夜半よわ寒気かんきの戻る立冬
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年末の空気をまとう街を抜け 排水口を掃除する夜
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秋空に緑まぶしき柚子の葉や たわわなる実の黄も鮮やかに
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昔日せきじつの秋の 祖母との思ひ出を繋ぐ 鬼灯ほおずき 隣家の庭に
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悔いばかり蘇りきて寝付けずに夜の静寂に雨音を聞く
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厳密に選別されるジャガイモの気持ちがわかる人間ドック
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歩けばこそ見ゆるものあり秋の野に知らぬ花の実紅く熟して
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一つ石二つ体を寄せ合いて一つ衣の夫婦地蔵よ
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硝子越し写る景色が現実で 爪を立てても響かぬ身体
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公園のメリーゴーランド子供らを大人に変えて一人老いゆく
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串カツを 味噌鍋浸し はふはふと ほおばる友は 無邪気さ溢れ
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出逢えたと思う 海で街で本棚で 痛みだけが似てる貴方に
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鈍色の空に真っ赤な柿一つ少し痛んで魂の如
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誰だってまぶたの裏に隠し持つ今よりもっと高かった空
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帰宅して扉を閉めて鍵かけて 社会人Aの魔法が解けて
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「内緒だよ」教えてくれた公園で不意の初雪芝を覆った
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