己から湧き出す怒り引き受けてうなりをあげて電車が走る
10
大空に 大鷹おおたかの舞う 夢を見て 腰は痛いが 心晴れやか
33
「感謝しかない」と言う人がいるけれど他にも何かあるはずだよね
10
夕飯は小皿並べて燗つけてゆっくり食べる一人で食べる
18
使用後に硬貨が戻るロッカーの百円のように無意味な夫婦喧嘩バトル
24
風切りの音が路上をさらってく夜の始まり冬の始まり
42
朝ぼらけ瀬々の網代木あじろぎ現れて霧よりくだる宇治の柴舟
16
誰よりも早くコタツにもぐりこみ寝息をたてる猫をなでたり
21
死ぬなんてそんな怖いこと言わないで、百年後まで徹夜しようよ
10
鈍色の空に真っ赤な柿一つ少し痛んで魂の如
52
音楽の底であなたが手を引いてわたしは二人称に溶けゆく
9
秋空は 淡く哀れに 泡のな 今亡き夏の 君の半袖 
10
暁の寝覚めに鐘の音冴えて露は霜にや置き替はるらむ
15
風の中まだ君がいる気がしてる道の向こうの堤防の下
18
呼ばれたと何故か思えるこの町に光る水面に僕は映らず
14
ねえ僕も野球のルール知らなくて この世は少し息苦しくて
12
久々に会えば思っていたよりも少し痩せてる父のかんばせ
43
山並みが白く霞んで消えてゆく黒い砂漠を車は走る
11
今少し 眺めたきかな 遠き日の 夕雲に似て 山のに沈む
29
エアコンの音が聞こえる 心臓に包丁を突きつけられた夜
7
あれこれと日帰り旅行の計画を立てる日向でお茶を飲みつつ
7
冬眠をわたしの胸にあく穴でさせたい迷子の野兎を抱く
11
街路樹はいくつもあかりを吊り下げてひそかに星を養殖してる
18
親も子も 毒も薬も 喰らいつつ お腹くだして うたかた処方
43
朝の度植物たちに霧を吹くこれも一つの祈りの形
55
通行人Aにも帰る場所がある 皆足速みな あしばやな初冬のビル街
30
風に舞う 白き六花の 粒滲む 手弱女のごとき 君が睫毛に
22
まつり果てて人影絶えた広場から梯子でピエロ星へと帰る
16
塒から発つ白鳥を追う旅立ちぬ祖母送る日もみた景色かな/三回忌
27
息子のとこ 行くはずだった しょうがない 今日はおうちで いい子にしてる
19