夏休み静けさの中出勤す 校庭にははや工事の足場
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音も無く陽炎かげろうゆれる濃い桃の百日紅さるすべり咲く 誰も居ぬ午後
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五輪祭 地続きで鳴る銃声よ 79年の広島忌かな
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気がつけば靴も鞄もTシャツも電車柄だね二歳のわが子
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マスカラが 溶けてにじ滲みし スクリーン 閉じるまなこ眼に 沁みる『ルックバック』
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「まだ読むの?」疲れた兄ちゃん逃げたいが 一歳あと追う「もういっかい!」
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海底を二万マイルも行くように静かに静かに寝ます おやすみ
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口内にニッキの飴玉放り込み転がす《20時》オフィスを占拠
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祭り済む小さき村に笛の音の聞こえた様な秋の風吹く
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この街のいたるところに残る靄 嫌いになっても消えない呪い
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この手だけ、終ぞ会えない、届かない 藍夜が鎖すその菫だけ
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分厚めの 段ボール箱に毛布敷き  冬じたくして あのミケを待つ
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ホラー映画見て寝られなくなっている自分 なんだか愛おしいよな
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冬空に明星一つ煌々と遺す光は地上を照らす /追悼 谷川俊太郎様
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心から溢れた「またね」が困らせた 俯いた君  嘘だよ ごめん
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冬風と戯れるよに舞うとんび 空は遥かに広くて青い
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粗大ゴミ置き場置かれた姿見に映る私に見覚えは無く
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お野菜は三食取りなと言った日から 確かに歳を取った気がする
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もふもふの愛犬いぬの形の空洞を抱えて生きる ささ身を供える
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ありがとうそのひと言ももらえずに 今日という日が静かに終わる
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足下に からだくっつけ 横になる 年老いた犬 ふわりあったか
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切り開く未来の意味を持つと知る 父が娘へ 贈る包丁
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やる事が 終わらぬうちに また別の 優先順位が 割り込んで来る
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転寝うたたねのふくらはぎから沁みてくる猫がいてくれることの幸せ
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簡単な 引き算すらも ままならぬ かたむいていく 我の脳力のうりょく
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満月に誘われるよに南から一等競い春風は吹く
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今日も待つ昭和レトロの喫茶店指切りをした仲でも他人
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「撫でさせてやってもいいぞ」と横たわり撫でるまで猫はそこに居る。ずっと
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気負い過ぎ空回りする吾を見て楽に行けよと風花の舞ふ
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優雅なる馬車に引かれて春は来る轍にとりどり花々咲かせ
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