月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

「手術しよ」細き指持つ 医師の言ふ 私は答ふ 小さき声で「はい」
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「生きている」 それだけでいい それがいい ストーブの火は 静かに燃える
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いつまでの命と知らず 今日始じむ 今日の命を 無駄にはしない
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四千歩 毎日歩くと 決めた日の 空の青さを まなこは忘れず
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音もなく 振り積む雪に 街灯の 銀の光の ふわり重なる
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山あいの我が家をかすめ流れたり 流星群は宇宙旅して
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毎日を「最後の日」とし始めたり 朝の覚悟と穏やかな夜
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つれあいと会話の届く距離にいて 時々離れる何億光年
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寂しさは山から落ちて布団へと   今夜は抱いて眠るとしよう
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ふるさとを口にし力士強くなり 越えていかんと伝ふ能登へと (祝優勝 大の里さん) 
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夕暮れの薄墨色のひとときに 月とまちがふ夕顔の白
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心にもワレモコウのごと赤のあり 消せども消えぬ紅色の染み
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吾亦紅 月夜の風にふうわりと 包まれゆれたり小さき赤は
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母の手で植栽されし裏庭に 「ムラサキシキブ」の玉がこぼれる
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金魚には金魚の理由のありたるか 絢爛豪華恥ずかしげなり
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幼子の金魚すくいの手もヒレも 同じリズムで動きを止めず
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教壇にどんな笑顔で立ちたるか 吾子を思ふ日の我はただ母
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同歳の友の訃報の新聞を 指で撫でてる母すぐ百歳
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待ちかねた秋の便りは庭の隅 白の清けさ秋明菊の
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もう五歳まだまだ五歳一年生に 自分で決めるランドセルの色
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煮た栗で母の作りし栗きんとん 深き味わい九十過ぎの
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乾きかけ少し崩れた心持ち 吾の人生の終盤スタート
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月探し空眺むれど見つからず 軒下の闇に夕顔一つ
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庭の隅 吾亦紅咲き 静かなり こういう人に我はなりたし
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亡き叔父の剥きし栗たち冷凍の 面影残る渋皮の茶
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人よりも多い蜻蛉の飛ぶ空に 忘れかけてた寂しさ思ふ
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敬老の祝い母へと手渡して 他日は我も貰い手となる
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ささやかな涼しさ求め窓辺にて 空っぽの自分置いておく夕
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勉強をしたいと思ふ吾に免じ 野の花模様のノート買った日
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あの草を取ればいいとは分かりつつ 手は動けども足は動かず 
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