月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

補聴器を付けても聞こえぬ母なれば 伝える言葉怒鳴りになりぬ
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暑い日に思い浮かぶる海の底 静かで涼し青の世界よ
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半夏生といふ花もらひ裏庭の日陰に植えし全部夏の日
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髪切った孫は鏡でポーズして 心で呟く「私、可愛い」
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火をつけた蚊取り線香携えて 今日も草取り静かに始める
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片道に二時間かけて行く映画 泣きたい時の避難所でもあり
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「失敗」も「残念!」さえもよかったと 言い換え生きるシニアの醍醐味
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「あんぱん」と「国宝」の出て賑やかに 六十代のランチは進む
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幼き日川で遊びし夏の日の 終わりはいつも夕立ち香る
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まだ生きるぐいぐい食べて「美味しいね」九十七歳欠けた歯は無い
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耳鳴りと共に生きると決めた日に 無心に咲いてた向日葵の黄色きい 
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音沙汰の途絶えし息子の声のして 振り返れどもそこはただ夏
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夏の熱閉じ込めたよなヒペリカム そこだけ温度三度は高い
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水筒に入れた麦茶と角氷 熱中症から吾を遠ざける
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原爆の落ちたあの日も今日のよな 青空だったとTVいふ
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七月の空に溶け込む暑ささえ 小鳥は知らず長く囀ずる
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転居して五年の月日流れたり 馴染んで過ごす紫陽花も吾も
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たくさんの「もの」をみてきた百八歳 何も見えぬと静かに語る
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国道と線路に挟まれ我が家あり  通り過ぎ行く人の多さよ
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まどろみと覚醒の間にたゆたえば さらわれて行く銀河の波に
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庭の笹いつも嫌いなあなたでも 切らないでおく七夕の日は
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空色の紫陽花さしたガラス瓶 潔くいることを教える
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草取りに夕べの風とオーディブル ここに幸あり小さき幸が
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早朝のまどろみ乗せて電車行く 今日が始まるリズムと共に
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もう花は空の色した花びらを 広げて空を見つめているか
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朝五時の風の冷たさ届けたし 都会の隅に生きる我が子へ
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寂しさは夕暮れ時の色をして 静かに胸の隙間を探す
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青々と夏吸い込んだキュウリ持ち えみちゃん今日も窓辺訪る
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蛍飛ぶ季節の記憶刻みしは 同級生の母の逝った日
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モルックという名の遊びに時とられ 公民館に広がる笑顔
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