月夜ぼたん
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ただ歌を詠むことが好きなおばあちゃんです。よろしくお願いします。

月探し空眺むれど見つからず 軒下の闇に夕顔一つ
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庭の隅 吾亦紅咲き 静かなり こういう人に我はなりたし
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亡き叔父の剥きし栗たち冷凍の 面影残る渋皮の茶
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人よりも多い蜻蛉の飛ぶ空に 忘れかけてた寂しさ思ふ
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敬老の祝い母へと手渡して 他日は我も貰い手となる
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ささやかな涼しさ求め窓辺にて 空っぽの自分置いておく夕
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勉強をしたいと思ふ吾に免じ 野の花模様のノート買った日
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あの草を取ればいいとは分かりつつ 手は動けども足は動かず 
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古稀といふ通過点すら理由にし旅の計画横浜、鎌倉
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ざらざらと山崩る音 今日もして 豪雨の爪痕まだ足らぬかと
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ゆるやかな寂しさのあり九月には 秋明菊の蕾見に行く
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抱き枕欲しがる伯母のわがままは 誰をも知らぬ孤独の化身  
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百七の歳を重ねし伯母の眼に 時々映る遠くの景色
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台風の胸痛ませる天気図の 赤色の下いる人思ふ
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通せんぼした秋茜追い越して まだ夏の中生きてる私
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向日葵のゴッホのごとくさしてみる 真夏の喧騒静かに現る
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向日葵の中心の色 手術後の 夫の傷の色に少し似
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秋桜を切りに出掛けた畑にて 出会った風に亡父がいた
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朝一に「風の通り道」作ってる 最初に味わう風の中に秋
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諦めた夢の一つを取り出して 相談している 自分の歳と
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隣室の母のいびきの絶え間なく 安否確認これにて終了
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高齢者ばかりの我が家の食卓に キュウリと茄子の並ばぬ日無し
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夏の日の 小さな涼風 密閉し 送ってやりたし都会の息子へ
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宝くじ買いに行く吾に家族皆 「一組バラで」と声弾ませて
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神輿引く少女の浴衣 水色の 「わっしょい」の声疲れた笑顔
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歩行器を忘れて歩く母なれば 忘れて嬉し足の痛みを
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「考える」「考えない」を交互させ 吾の哲学の草取り続く
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「老いが寂しい」と言ふ友に 流星群の日時知らせる
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あの日には眩き強き熱波あり 八月六日は祈り願う日
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盆近し人の姿のない街に 等間隔の赤ちょうちん揺れ
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