Utakata
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めくれゆく記憶のなかで少年になった父へとバニラを運ぶ
16
夕方の沓脱ぎ石はひんやりとおなかをだしていぬが寝ている
19
盆送り
叢雨
(
むらさめ
)
に待つ東屋の墓石の向こう
烏
(
からす
)
が啼くに
11
防波堤 一人たたずみ 波しぶき 迷える心 打ち砕きゆく
10
さわがにの子らが隠れた岩かどにまだ夏だけがこちらを見ている
10
爽やかに洗濯物を取り入れて干し竿の先 見ゆる筋雲
12
カロリーの高いものも自炊なら健康的なような気がする
10
峠道 大型バスを先頭に連なる車列は大蛇のようで
9
爆弾を抱いて散った若人の無念の叫び雲のみぞ知る
12
野垂れ死ぬような気がしていた父に 存外友が、いるのを知る夜
33
女郎蜘蛛ひかりの領土編みあげて露のダイヤをちりばめて待つ
9
独りではもう泣かなくていいからと 鈴虫がやっと鳴き始めた
8
雨待ちて 雷鳴轟き近づきて 降るぞ降るぞは雀の涙
11
寝不足は親の勲章 吾子のため哺乳瓶煮る夜中の三時
7
タンはらみホルモンライス生ビール焼き手はあなた完璧な夜
7
長い長いメールを母は我に書き寝苦しき夜が明けて送りぬ
7
君からの 残暑お見舞い 見返した 今でも君は 変わらず綺麗だ
7
エッチ
前
(
ぜん
)
は奉行だけれどエッチ後は縮緬問屋の隠居になるの
6
ことごとく臓器提供したようなキャラメル色の蝉の抜け殻
15
友達の友達の友達……そうやって赤の他人と慰め合って
6
果てぬ波 粗き砂抱く とこしえに 海思うたび 愛は深まる
6
「また今度」じゃなくて「来週空いてる?」と予定の海に
錨
(
いかり
)
をくれた
6
一夏を 詰め込み遊ぶ 故郷の 静かな海に 映る島影
17
富士山の五合目までのバスツアー 残暑避け行くぶどう狩り付き
8
起き抜けの乾いた喉にありがたや 冷えた
梨
(
ありの実
)
晩夏の馳走
19
「被災車両」呼び名変えたかなど思う自治体メールで「今」を知りつつ
14
サツマーゲ 『薩摩揚げ』と知りたる日 小五の夏の 大人びた日
8
酷暑に背丈を低く耐えたなす秋の雨で急成長
5
闇雲で無闇に増やした足跡も 遠くで光る星くずになれ
5
こう見えて腕っぷしには自信あり だから一人で生きてきたのよ
8
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