夏草を分け入り訪ね行く道は字名残るも面影はなく
20
『お父さん毎日駅までありがとう』こちらこそと一人呟く
15
べたついた身体で寄ったスーパーにサンマみつけた秋のはじまり
17
吊り橋のようにはじまる新学期そろりと起こしそっと見送る
17
キッチンのケトルの悲鳴聴こえればビーチフラッグのごと駆け付ける
15
まだいない人を思って小さい小さい服を二人で選ぶ
26
畑にて寛永通宝出土せり どのご先祖の落とし物やら
20
はいはいを始めた君の足首に一人前にくるぶしできる
24
アルコールに難溶性のストレスも君と話せばほどけゆくなり
11
エアコンのうちにゐるまにとき遣りぬ 惜しむ間もなくつき愛でる月
9
化粧くらいしろよと宣う人間に晒す素顔は持ち合わせない
9
路傍より残暑を眺む猫じゃらし 行き交う車にふわふわ揺れて
15
親戚の葬儀休みて稲を刈る 明日から雨 神は許すと
8
法師蝉ちょこっと鳴いて止んだのは試し鳴きかなまだ酷暑だから
10
感情の発露はもはや暴力と 菩薩の顔の新人が言い
11
流星は神の槍投げ煌めけり 行方は誰も知る人はなし
7
引き出しが閉まればいいと思ってる 大切なもの全部詰め込む
7
夏休み 終わったような 寂しさを 秋空見上げ ため息九月
8
思ひ出す浜の秋風浦の里安芸あきの秋にも風は吹けれど
8
若かりし 多感な頃の想ひ出が 吾が胸深く縫ひ込まれをり 
9
木の役のあの子が自我を主張してそこから劇がおもしろくなった
14
カレンダーめくれば九月それだけで朝の珈琲香りも変わり
11
陽炎の 残りし午後の 街角で 揺れる晩夏と 初秋の境
13
春ならば三寒四温と言うところ さしずめ秋なら三暑四涼か(関東は)
13
ステンドのグラス通して射す光犬を抱きしめもう眠りたい
9
安心は目には見えないものだから 手を離すときは「またね」と言って
6
まだ暑い九月の朝の公園で年配方がグランドゴルフ
6
コスモスは色づいている立ちくらみぎゅっとつぶったまぶたの裏に
6
あなたなら気づいてない 知ってるわ 私が本気で怒っていること
8
今すぐに全てを捨てて会いに来て なんて言えたら苦しくないのに
6