ニュースなく皆既月食に気付く夜我が庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり /喜撰法師 8/100
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左右(さう)の手で 包むがごとく 生姜湯(ゆ)を 惜しみつつ飲む 冴え返る午後
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青年も優しき人も年寄りも理不尽を知る個々の場所にて
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外国語 学び初めて知る 母語の 身近にあふれる月とお日さま
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夜のびて 雨雲 空を隠すとも 月日はいつも この世 照らして
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雨音を静かに聴こう春の朝眠りと目覚めあわいの中で
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名も知らぬ草をひきつつふと見れば黄色や白の花の咲きおり
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雑草と呼ばれし草もとりどりに可憐な花を咲かせておりぬ
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価値観の違う世代に一呼吸ため息一つ空に放てり
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いつまでも続いて欲しい信号が 変わって私今交差点
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あなたから見えていようがなかろうが 今日のわたしは世界一かわいい
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さぁ行こう 心を紡ぐ 物語 みんなと進む この物語
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泥の中 見事に咲くは 蓮の花 ままならぬ世に 光差す日も
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久々に犬も食わないナンとやら 秋刀魚の塩焼き二人で黙食
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あの日さえ離れてくれぬこの思い抱えて歩く枯野の草を
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心配のしすぎと友に言われても手の鳴る方へあなたはだあれ?
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三度目の 金木犀が 香っても 下書きのまま フォルダの中
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嵐吹く 私の中の海もまた 光のどけき 日を 願いつつ
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ナミビア沙漠われゆかねども紺靑の美靑年など泛べ塩湖に
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三十一の文字は牢獄ならずと舎にいへ蒸し焼かる牝鶏
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今朝はまた妻が特別ご機嫌で 良い一日が待っているかな
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ありがちの言葉机に残されてあなたの居場所は遠い日の午後
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晴れ渡る 寒空に見る 星月夜 ゴッホも同じ 空を見たのか
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たまにはと メガネをとって ぼやけてる 街の灯りに ニコリと微笑む
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長押しで電源を切る親指がたしかに息の根を止めていた
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街の灯が幸せそうに見える日は私がとてもちいさいからだ
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入り浸る飲み屋の影にいる子猫そっと抱き上げ毛づくろいする
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万葉の 人に詠まれた 同じ月 やがて令和も 昔と眺む
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去る人の残り香宿る年の瀬に白きサツキの帰り花咲く
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北風の冬の朝には日が澄んで歌の言葉をほどいてくれる
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