苦しいと作って表現したくなり、気が紛れると全部燃やしたい
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やることも決めず飛び乗る旅の道 この身ひとつで楽しみたいの
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酔いしれる二人うねった肉体を重ね貫いて大地の上で
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小鮎炊く圧力鍋で一人分 冷酒薫りて今宵命日
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トカトントンどこからともなく聴こえた 彼と私は似たもの同士
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居なくなり代わりて住まん若竹の 軒を突き抜け夏空を射る
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(かっこ)別にこれは感謝ではないが(かっことじ) いつもありがとう
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拾い画のアイコンとの会話だけど、優しくて、それは嘘ではなくて、
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猛暑日の 首巻くタオル 風呂上がり 汗が速いか 拭くのが速いか
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あんぱんが一個限りの昼食に漫画読み繰る窓際の風
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Camera obscura 深き夜の愉しみ 排気音 遠吠え 波の音
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照りつけるセメント覆う駐車場 ここで咲くのか 片喰かたばみの花
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軒先に逆さ空蝉うつせみ夏未明なつみめい 旅立ちたるや迷いもせずに
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失恋も一週間経ち感傷に飽きてニンニクましましラーメン
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一雨で一気に芽吹く蕎麦の種子たね 吾にもあるや秘めたる力が
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蟻たちが 我慢の限界 でしたと 供述をする 取調室
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ユーカリで 心中中の コアラたち  いのちの電話 必要ですか
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キンカチョウ 頬に線書き デビルマン 相手の戦意を へし折る知恵
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僕だって ここらで本気を 出してみる 優しい人で 終わりたくない
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青天に吐き捨ててみる「どっかいけ」放物線を描いて落ちる
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プールにて 吐水口に 足取られ 親父のあたま 鷲掴む夏
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僕に手を振ってくれない人だけど僕は貴方にずっと手を振る
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児の増ゆる昭和の頃のあり様を 児の減る今の範とせぬかは
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寝ぼけたか ちま猫 飛び起きニャーニャーニャー はいはい どんな夢見ていたの?
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あとがきは 本編にはもう ならぬのだ この先はもう 何も書けない
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日焼け止めサボる ラテアートかき混ぜる 雲の切れ間に太陽しまう
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雨上がり公園遊具ひっそりと水滴乗せて童を待てり
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七月ののっそり沈む夕陽から種火盗んで夜通し語る
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人の来ぬ古きプールを独り泳ぐ ただ方形の重き水量
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紀寿きじゅになる母に祖父母の無事聞かれ返答窮し曖昧にだく
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