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戦争に秋深まりぬ咲き及ぶ石蕗の先しがみ付く蟷螂
5
きときとの バスは満員 坂道を 右にひだりに ゆれて頂上
/
除幕式
12
姑を入所させたとまだ言えず窓に額をつけて月みる
22
淡桃のみぞれはすでに脳にあり八度八分の唇は待つ
14
ここに今 わたしがいると知っている わたしのために
篝火
(
かがりび
)
を焚く
36
幼子が小声で歌う鼻歌を 聞いて
瞬
(
またた
)
く冬の星々
36
物置きの奥の奥にはスノボーがもう戻れない冬の香りす
15
晩熟を滴る麦と稲が穂のふたつわかれになりにけるかな
6
戦争にゆかさるるわれらの平和 「今そこにある危機」を忘れて
5
ぜんそくのこどもの病室あかりがみえる 明けないよるをなみだぬぐいて
15
めいわくをかけてもいいという人に 肩ちからぬけ安堵のためいき
12
口ずさむ孫のミサ曲やさしくて 生きる深きを海面にえがく
15
リハビリのジムにときめく冒険は コードがともの宇宙遊泳
11
サンタにも病魔とりつきリハビリ中 さちとどけたい杖つきつつも
8
ふらふらにリズム追いかけリハビリで こころとからだおどるエアロビ
13
蟻ひとつころさぬひとのやさしさは 競う世のなか踏みつぶされて
19
朝まだきあかりの家のあちこちに 通院の闇ほのかに照らす
10
更年期という手袋をはめつつ冷え性という靴下も履く
20
断乳に張り裂けるほど泣く吾子を 抱きしめる夜 卯の
小晦日
(
こつごもり
)
41
正月に夫の顔をまじまじと見て気づくなり永井荷風似
17
玄関であからさまなる孤独みて俯き知ったパンプスの傷
19
美味そうに何食べてんだ佐川君一口くれよなぜ隠すんだ
10
善人の言葉の棘がささる時 来る朝だけが良薬と知る
16
その場所で壊れそうなら引けばいい 根性論など机上の空論
15
照明をダウンライトで暗くする 君の寝息が
沁
(
し
)
みこんでくる
14
こちらへと羅針盤の指す向きは 樹氷の森の白き嘘なり
13
尿が出ないびっくらこいて病院に行ったら酒の飲み過ぎだとさ
7
毎日を丁寧に暮らすその意味を 未だ分からず普通に暮らす
26
谷川の氷も解けぬ山里に霞ぞ春を空に知らする
7
春来れどなほ降る雪に鴬の初音待たるる山里の空
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