ぽつぽつと落とすパン屑真似るよに 日々を歌って道標どうひょうにする
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いつからかドアがきしんで声を出す度に知らせる家族の帰りを
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八重桜 共に過ごした年月が 古き団地に静かに咲いて
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老眼鏡かけても読めず虫めがねサプリのちらし「ご注意事項」
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自傷のごとき自嘲に充ち充ちて畢竟死は喜劇俳優に外ならず
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父母優生学に分別すはなはだしくおそろしき医師ある
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統計の父ありて確実に死すきみらやさしかる絞首臺へ誘ふも
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春祭り黄砂のすきま漂って空つき刺さる赤いふうせん
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川の辺でトランペットを吹く学生 澄んだ音色が空に溶け込む
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長旅はいかばかりか 「ただいま」のひと言残して眠りこける息子
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この国は未来がないとか滅ぶとかカッコつけるな怠け者ども
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ぽっかりと駅の方だけ晴れていて用はないけど靴紐を結う
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ガラス戸の夏の光が肌に染むフローリングに虹が映りぬ
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脳味噌の長らく使ってない箇所を鍛えられている猫と暮らして
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18時半の夕空明るくて 人生全てを一瞬許す
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40歳の知的障害いい子です撮りまくっては写真を義母に
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「ゴキブリにはツィクロンb」資生堂にごきぶり色の髪の青年
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自動印刷機より出づ少年誌疑はず読む青年の服のタグ
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「うるせえな、生きろ」と続けざまに東宝シネマの台詞へ鸚哥
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リヤカーを引いて行商半世紀句を歌を詠みまた見せている
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アリウムの 悲しき意味を 遠ざけて いつか色づく その日を胸に
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喜びの 光るシリウス 薬指 永遠ちかう あなたとともに
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新月と満月ゆっくり行き来する あなたとわたしのこころの継ぎ目
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校庭に響く歓声 子どもらは朝時から本気で遊ぶ
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蝦夷梅雨の季節でしょうかあの人のお名前忘れ紫陽花をみる
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夕焼けのサーモンピンク揺蕩たゆたって 昼と夜との儚い合間
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感覚と言葉がうまく結べないちょうちょ結びは斜めになって
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気に入った傘はいつでも見失いビニール傘をさし続けてる
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蝶のように舞い蜂のように刺すのつもりでくだるビルの階段
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滝落つる自然歩道下滝カフェのあじさいに降るしぶきや優し
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