君がためテクノロジーに背を向けて今朝も落ちゆく高台の雫
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花までも星に匂えり我に降る震えて眺む天の川かな
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ぎゅうぎゅうの引き出し開けて哀しみを捨てよ無言の声が聴こえる
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魂の 入れ物ひとつ ぼんやりと  駅のベンチで 電車 見送り
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咲く花火横から見るか下からか夏は気にせず過ぎ去りますよ
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おみやげを見ると死ねない わたしの死後の親しき人をおもいみるから
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文字も無く駅そば写真のライン来る立山かまぼこに思ふ旅先
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毎朝の 純白の心を 引き連れて 都会の空気に 汚しに行こう
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金髪が風にたゆたう今ぼくは秋のはじめの一つと数ふ
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冴えた月見つつ風ごと吸い取りて心に浮かぶ月を眺むる
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惜しむよに水色の雨落ちてきて僕らの肩にピリオドをうつ
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女子らとは まるで違った 足音が どどどどどどど 男子のリレー
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行くことは叶わぬけれど山車だしが出る長月二日今夜宵宮
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今日を終え 空っぽになった 教室に 喧騒ぬぐう 秋風が吹く
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葛の葉が石垣おおう坂道にけたたまし声ツクツクボウシ
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ゆく夏のゆうべに浮かぶ茜雲 夏ってなんだか幻みたい
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何となく太くなりしかコガネグモ庭に居続けひと月が過ぐ
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大合唱 玄関開ければコオロギが 秋も近しか猛暑日の夜
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君の頬真夜中想い手を伸ばす一瞬月に触れた気がして
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孫たちの祭りの土産ういろうを みたまに供えお下がりを食む
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見えるけど無いかもしれない星を見て君と語った秋が目の前
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切実な祈り明日が来ないでと 青色光に慰め求め
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義父植へし老木なりたるイチジクの小さき実集めジャムにする朝
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チチチチチ 朝一番の台所 何処にいるのか ここにも秋が
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十六夜に 悲しみのパス蹴り出せば ゴールキーパー彼方より来る
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濃い顔の上司に頷く塩顔のイケメン話を前のめりに聞く
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朝イチの美しき声はキミだった! ひょいと現る小さなコオロギ
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人間は考えるあしの意味知らず 調べつ歩く葦の水辺を
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満面の笑顔でミスドのドーナッツ たまにはいいネ ママひとりじめ
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懐かしい匂いと声に乱されて 危うく君を引き止めかけた
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