雨の降る 少し前には 土の香が 森の香りも 運ぶ春の日
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師の夜も長いだらうか『山月記』人虎の交わり忘形の友
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枯渇した土に恵みの雨が降り 萠えいづる春へ 拍車をかける
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あたらしい 詩うまれてく春らしく 老木朽ちても 生を刻みて
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晴れ間なく ずっと雨降り続いてる だあれもいない わたしのまわり
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「背中向け寝ているのはね後から愛して欲しいのよ」はもう過去
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まだ君と さよならできそうにないから すこしさ 春泥棒になってしまおうか
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「終わりたい」母の言葉の裏側に 「生」への切望見え隠れせし
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ドクターヘリ つまの生還 時を経て まさかの坂を 幾つ登れり
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陸橋に揺れるスカート西陽差し冬の終わりは風の音に知る
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らしさって縛られちゃうと自滅するものなんですよほどほどがいい
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さりげなく苔を纏った若桜 粋な着こなし春を誘って
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歯車となりて文句を云い友は回りつづける文句を云いて
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スーパーに行くけど欲しいものはある?エンゲル係数アゲていこうぜ
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初物のデコポン悩んで やっぱ割る 熟し加減が すこし足りぬか
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アスファルト化粧直しの雨上がり北風戻る通院の朝
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情景の言の葉の声 聞けたらば ペンを走らせ 推敲重すいこうかさ
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「かわいいね。」白にほんのり乙女色にじみひろがる梅の花たち
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雪柳 早も数輪咲きめて 陽射し無き日の慰めとする
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今日はただ 聴く人になり 友の声 丸ごと受けて 笑顔で返す
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明け前の白き煙は立ち上り二本の煙突双子のごとき
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「私」だけ 忘れなければそれでいい 父の笑顔は永遠の陽だまり
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いいことがあって夜明けのコーヒーを飲む暇ありも喧嘩し帰る
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「久しぶり」言った瞬間巻き戻る 心の鍵を預けし友に
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雪洞ぼんぼりに むつみて座る 人形の 頬の白さの 妖しき花冷え
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「おやすみ」と 喉を鳴らした猫の背に 魔法をかけて 灯を消すキッチン
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「やったか」と言ったばかりに残党の不安がわたしの寝首をかいた
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重だるい幕を開ければ花ばっかむやみに咲いてばかにしやがる
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子の熱に眠り削りて添う母に 豆電球の明かりやわらに
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眠りから覚める合図や梅一輪開きて庭の色づき始む
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