入口の 小さな白い 喫茶店 バナナジュースは 初恋の味
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波多き 人生なれど 刻まれし 愛と記憶は いろどりとなる
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仰向けでいびきかいてるミャースケにもはや野生のかけらすらなく
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雨後の駅 見ゆ細き月 改札へ向かふ人らの背を 見守りて
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曇天のたまに雨舞う一日は唯々ただただ明日の晴れを待ちおり
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くちもとに かかる火の粉を はらわいで  熱さのあじと 匂い眺めん 
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あのひとの 子を可愛がり 恨めしく  思うわが身の はしたなきかな
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くるくると回る落葉で気付くんだ風ってこんな姿なんだね
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同僚ともからの 旅の土産に 温もりぬ 忙しくとも 足痛くとも
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かぶとむしゼリーの澄んだ赤色に光を透かせば夏が聞こえる
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一日の歩数目標少し上げ 落ち葉散り敷く道 揚々と 
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君が前 好きだと言ったスノードームは、雪が皮肉に降り積もったまま
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朝四時に使命を背負ってひた走り僕を追い越すはたらくくるま
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タクシーが角まがるまで両手ふる妻と吾なりの無事ねがひ
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部屋の戸を今朝も眺めてはや二時間 地獄への道ひらきたくない
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けふはまた自己肯定の淡き夜 SNS互酬いいねを探す
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デイケアでおしゃべりはずむ女性陣寡黙な小数男性陣よ
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新品のマフラー整え 無意識に 君の温もり探してしまう
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もし恋がおわるとしたら ぱちん そんな音がなるのかな
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寮跡の敷地にも 木枯しの吹く 枯れ草の中 咲きをる野菊
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野薔薇のいばらは寒さに耐えて茎も実も赤くなりけり 空を見上げて
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残業の後に限って見たことない光り方してるラブホテル
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換気扇 煙と香り 無造作に  吸いて吐き出す 今の我が身か
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いっこやで ピノを一粒 届け来て  のど飴拐い 等価交換
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響きだけ大人な気分に酔いしれる 甘酒の味と君の温もり
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暗闇のオフィスに光るパソコンでご褒美ポチって今日を終えるの
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グラコロはコロコロコロっと転がって、冬が来たぞと知らせてくれる。
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誰しもが 古傷痛む 夜もある 朝は来るから 今はおやすみ
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『私はね健康診断だと思う』認知症だと告げられる前は
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「早いね」と話しかけると「早いね」と答える人のいる温かさ
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