中央のタビビトノキの丈高く誰かを待つや北の地に生き
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ビル壁に映る秋空だけを見て七日が過ぎる 媼ひとりで
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誰からも忘れ去られてここにいる そんな行く末を願ふものたち
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雨上がり柔き陽の差す朝の庭ゼフィランサスの白、風に揺れ
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三十一の文字は牢獄ならずと舎にいへ蒸し焼かる牝鶏
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女王蟻に肖し式服の白纏ふ偶像たらむ。宰相寫眞も
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花の名をしらぬこころにふれるとき花の熱だけのこるのでしょう
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ゆく秋の硝子を透かすしづけさと 色づく柿に落つる涙と
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この街を自分の街と思えても別れは来ると今日が囁く
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くもらせて雨を降らすも人ならば 晴らせて照らす故も人なり
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木犀の香る坂道一歩づつ杖を頼りに空仰ぎつつ
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十七年たくさんの幸せ有難う! 愛犬キミのお家よ 骨壷を置く
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我ごとく友を喜ぶ吾子清しグリーンカードのあの日の勇者
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ベランダで スマホを空に 向けながら 平安の夜と 同じ月見る
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積雪を彩るカラマツ散り敷きて足裏あなうらにそっと秋との別れ
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日が変わり 仕事終りの 溜息と 珈琲一口 苦笑いかな
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公園のメリーゴーランド子供らを大人に変えて一人老いゆく
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ふっくらとみがきニシンの準備終えソウルフードを仕込む冬の日
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君を待ち小鳥のきもちなぞってるオリオン座ほど簡単じゃない
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誰だってまぶたの裏に隠し持つ今よりもっと高かった空
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再会に「どなたですか」と問う姉の海馬をそっとのぞけぬものか
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オフィスには ポインセチアの 鉢植えが 光を浴びて 赤く輝き
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ふかし芋もはや多くは口にせずなお父へ湯気届けたくあり
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勘当を失言と言ひ繕ひし父よそれを失言と云ふ
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ダンディーで 寡黙な喜寿の わが部下は ポテト大好き 笑顔でほおばる
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結婚の知らせを聞いた 今日もただ自分一人の肌寒い部屋
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夕焼けに重なる父娘の長い影今日という日忘れたくない
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「来る」「来ない」気まぐれなリス待ち望みいつも桜木目の端にあり
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南国は 都会まちで疲れし 吾癒やす 果てなく続く とうきび畑 
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湯たんぽを買った 一人は寒いから 湯たんぽを抱き 命と思う
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