おぼろげな輪郭たどる若き日の 消えなば我は我でもあらずや
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ほんのりと赤に照れるや内気なる陽射し薄くも南天の映え
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一瞬で 四十年を 巻き戻す 同窓会は 五層の窓に
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宵越しのクリームシチューのブランチを独りで食べても何処か寒くて
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卓上の 乾いたパンと 揺れる音 見たことない夢 紫雲の木漏れ日
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受付の仮の机で待つ人の かみのつむじに年輪を見る
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冬を告ぐ風と語らうすすき野に抱かれうずむ白きいしぶみ
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行き先が未だ分からぬ船を漕ぐ親も友らも乗せたまんまで
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石蕗つわぶきの立ち居そよぎは人よりも高雅な言葉発してるよう
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寒いからいつもより少し近くなる冬の夜道のタンデムシート
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吹きすさぶ風強かれど 冬野菜 大地に根を張り じっと春待つ
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ネットで得しパソコンの設定条件を順次ためして迂遠をゆかむ(医師脳)
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お月さん、競争しやう。お日さんに見つかる前に床に就くのよ
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静謐せいひつの水面の小鴨潜り初む波紋のひろがる水輪の五輪
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朝日浴び輝くばかり銀杏の葉 蜘蛛の糸にてゆれる一枚
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外国人が多い通勤駅には今日も色んな言葉飛び交う
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嬉しさと気恥ずかしさをないまぜに赤い着物で娘が笑う
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知らないと 損だよなんて 思うより 知ってよかった ラッキーが良い
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紅つけてくねくねおどる男みて 違和感おぼゆと言ったらNG
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コンビニの中は暖房効き過ぎて歩くと汗が止まらぬ小雪
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赤色の幟に白字で書かれたる大売出しはもう来ないのか/Black Friday
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少年は 一番星の 輝きに ついぞ気付かず 家路を駆ける
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じまんなる琺瑯ぶねに湯をはれば 指の先から骨に暖しむ
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我が裸体かがみにうつして悦にいる 還暦過ぎとはたれも思はじ(言ってもた)
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人のため作ったシチューを独りしてからにするのもむなしいもの也
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生業なりわい苦海くかい舳先へさきなるひんがし照らすアルデバランや
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巨悪にもひるまなかった「報ステ」の「報道」部分のネオンは消えて
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妻も娘も真夜中3時起こさないよう句を歌を詠むウォークマン
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働き手不足シニアが頼みだと嘘だ雇ってくれないじゃない
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全て待ち望んでいた日やっと来た初恋の古希美人再会
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