蒼鷺
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投稿数
144
ひきだしの奥のフリースひっつかみ季節は急ぎ3マス進む
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車窓から見えるススキの穂は白い 今年はじめて長袖を着る
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灼かれると知っているのか?夕暮れの蛍光灯に飛び込む虫よ
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シャーペンで引いたみたいに細く降る雨の日だけは詩人になれる
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アトラスの良き理解者は袋詰めされたミカンだ一番下の
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伝説がはじまりそうな顔の子が駅のホームにつま先で立つ
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夜半の秋 窓から伸ばす 手のひらに 月の光が 燦々と差す
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丁寧な暮らしをしてる気になった 湯気立ちのぼる鯖の塩焼き
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来週は秋のお彼岸らしいけど積乱雲は山盛りのまま
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まっ黒な午前3時の床を背に赤さび色の月を見ている
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祖母の手の古い葉書の「会いたい。」が滲んで見えぬ八月の朝
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手がないの「て」がないせいで「いきます。」と告げるあなたを留められないの
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よく知った道を一本逸れただけ 燃えてるようなブーゲンビリア
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裏山で法師蝉ほうしぜみ鳴く夕月夜 文字でノートを満たしたい秋
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紫と緑で描ける朝顔の葉先に滲むレモンイエロー
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涼風はどちら側から吹くでしょう?夏と秋とがゆきかうみち
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車内にて寝るおじさんの口からは御魂みたまがふわり金曜の夜
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「好きだよ。」とあなたが言ってくれたから 死んでもいいわ満月の下
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軒先の金魚鉢から仰ぐ空 ラムネの瓶のビー玉の色
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薄紅の積乱雲が映り込む池のほとりを白鷺がゆく
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階段の隅におかれた水槽で鈴虫が鳴く雀色時
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手のひらにおさまるほどの紫陽花が青を深める 今日は梅雨入り
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石楠花シャクナゲがぱらりぱらんと落ちた日に今年はじめて半袖を着る
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はじめての家出で買ったコンビニのコーヒーとチョコ 苦味がいいの
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若楓アオスジアゲハ晴天と青の種類が今日は豊富だ
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本日の天気みたいな胸のうち低空飛行のツバメがよぎる
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5歳児がちまき抱えてズンズンと薫風とゆく横断歩道
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廃校の桜のもとを訪れた眠りをさそう春の静寂
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そのへんの伊達男よりイカしてる桜の花をくわえたスズメ
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明日から田植えはじまる水田に白く揺れるは春の夜の月
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