蒼鷺
44
41
投稿数
122
石楠花シャクナゲがぱらりぱらんと落ちた日に今年はじめて半袖を着る
10
はじめての家出で買ったコンビニのコーヒーとチョコ 苦味がいいの
9
若楓アオスジアゲハ晴天と青の種類が今日は豊富だ
10
本日の天気みたいな胸のうち低空飛行のツバメがよぎる
12
5歳児がちまき抱えてズンズンと薫風とゆく横断歩道
13
廃校の桜のもとを訪れた眠りをさそう春の静寂
10
そのへんの伊達男よりイカしてる桜の花をくわえたスズメ
17
明日から田植えはじまる水田に白く揺れるは春の夜の月
17
春の夜の月をペンではえがけない 白く滲んだ雫みたいで
14
薄闇のなかに一本伸びている むくろの腕のようなススキが
6
はしゃぐ子の足をほぐすは道後の湯ひらりと落ちる桜の花弁
14
川岸の桜がヒラと舞い落ちる四十九日は来週だった
12
新年度だから何って思うけど行きかう人は日だまりの中
13
この星はむかし誰かが見た星で私の後の誰かが見る星
14
風はなく鏡のような凪の海 何も起きるな何も起きるな
21
待ちわびた春はそんなに遠くない 雪解け水がポタンポタンと
18
ピーヒョロと窓の向こうでとびが鳴く 「空はいいぞ。」と言われたようで
32
いつだって月に叢雲むらくも花に風 スマホの写真データは何処いずこ
13
雪雲が山の頂包むとも春をはこべよ蝋梅ろうばいの花
26
一粒の涙も見せぬ家までは ファンデは戦装束いくさしょうぞくなれば
21
おとなしく聴力検査うける子の肩ごしに見る 白い氷雨を
19
神様がそういないとは知っていてロト6に並ぶ雨の夜
15
どうしても眠りの森へ入れない ウルフムーンにえてみようか
17
さっきまで栗きんとんは山だった こっちを見ないこたつの息子
27
コーヒーを出勤前に流し込む セーブポイントみたいなファミマで
13
あれっきりLINEは既読にならない 波打ち際にボタンがひとつ
14
晩秋に君がどこかへ行ったから 月も私もあのときのまま
14
あなたより頼りになって温かい ヒートテックが冬の恋人
15
こんな日は自分の影を供に飲む 弓張月をグラスに浮かべ
14
古書店で太宰を一つ手にとった その気にさせる秋の長雨
30