Utakata
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蒼鷺
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まっ黒な午前
3
時の床を背に赤さび色の月を見ている
16
祖母の手の古い葉書の「会いたい。」が滲んで見えぬ八月の朝
15
手がないの「て」がないせいで「いきます。」と告げるあなたを留められないの
4
よく知った道を一本逸れただけ 燃えてるようなブーゲンビリア
15
裏山で
法師蝉
(
ほうしぜみ
)
鳴く夕月夜 文字でノートを満たしたい秋
14
紫と緑で描ける朝顔の葉先に滲むレモンイエロー
9
涼風はどちら側から吹くでしょう?夏と秋とがゆきかう
路
(
みち
)
の
15
車内にて寝るおじさんの口からは
御魂
(
みたま
)
がふわり金曜の夜
9
「好きだよ。」とあなたが言ってくれたから 死んでもいいわ満月の下
10
軒先の金魚鉢から仰ぐ空 ラムネの瓶のビー玉の色
12
薄紅の積乱雲が映り込む池のほとりを白鷺がゆく
15
階段の隅におかれた水槽で鈴虫が鳴く雀色時
13
手のひらにおさまるほどの紫陽花が青を深める 今日は梅雨入り
14
石楠花
(
シャクナゲ
)
がぱらりぱらんと落ちた日に今年はじめて半袖を着る
15
はじめての家出で買ったコンビニのコーヒーとチョコ 苦味がいいの
13
若楓アオスジアゲハ晴天と青の種類が今日は豊富だ
10
本日の天気みたいな胸のうち低空飛行のツバメがよぎる
13
5歳児がちまき抱えてズンズンと薫風とゆく横断歩道
14
廃校の桜のもとを訪れた眠りをさそう春の静寂
11
そのへんの伊達男よりイカしてる桜の花をくわえたスズメ
16
明日から田植えはじまる水田に白く揺れるは春の夜の月
17
春の夜の月をペンではえがけない 白く滲んだ雫みたいで
12
薄闇のなかに一本伸びている
骸
(
むくろ
)
の腕のようなススキが
6
はしゃぐ子の足をほぐすは道後の湯ひらりと落ちる桜の花弁
13
川岸の桜がヒラと舞い落ちる四十九日は来週だった
10
新年度だから何って思うけど行きかう人は日だまりの中
12
この星はむかし誰かが見た星で私の後の誰かが見る星
13
風はなく鏡のような凪の海 何も起きるな何も起きるな
21
待ちわびた春はそんなに遠くない 雪解け水がポタンポタンと
16
ピーヒョロと窓の向こうで
鳶
(
とび
)
が鳴く 「空はいいぞ。」と言われたようで
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