先生が答えを省いたあの午後にほんのりすりむいたままの胸
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草むらで大合唱の虫たちは短き秋を知りて鳴くやも
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死ぬまでにやりたいことのリストから「青い紅茶を飲む」を選んだ
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本当は粉薬だって飲めないし、なりふり構わず泣きたかったし
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恐るべきクエチアピンの副作用 豚の飼育のように太らす
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話すこと紙にメモしてこんな事最後の日に言うことじゃない
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満月に飛んだ蝶々の鱗粉をあつめてつくる睡眠薬を
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2:22にゃんにゃんにゃん そんなゾロ目を ふと目にし なんか嬉しい ふふっと笑う
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子ども舌 苦味があっておいしいと言う人みんなうそつきとする
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幼き頃秋の日に教えてくれたカタサセスソサ…途切れる音色
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ゴロゴロし糖質摂って酒も飲む理想と違う前日の自分
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漱石を教授に昔勧められ四行読むとまぶたが降りる
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とめどなく語る目に涙 きらめきは彼女であふれ私ではない
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胸張らず下見て歩く 今日だけはいいよねだって恋と別れた日
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布団敷き短歌集読む お腹からカラになったよ〜心地良い音
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「こわいの」と訴えかけるその人の まだらの渦が見える気がして
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わたしにも期待の星と言われてた頃があったか思い出せない
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うかうかと生きているから知らない傷が腿に走ってわたしをそし
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懐かない猫のあくびに報われたような気がした夏の終わりに
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散歩中のハッピードッグとすれ違う数秒ゆっくり回るペダル
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別れ際 刺客を送り込んでおいた あの人に渡した「塩狩峠」
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白黒で はっきりさせないこともまた 美しさかも 百鼠色
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断捨離と 呼ぶには遠い 仕分け作業 今後の我に 要るを吟味し
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詠進歌って何?と調べ驚愕す まるで遠くの月が身近に
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噴き出して止まらぬ炭酸水のよう こいした時は言葉あふれて
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好きな人?そうねブラックジャックかな告る前からフラれた気分
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また一人 昭和のじいが 亡くなって 透明感が 増す秋の空
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思ってもいない言葉を言いすぎて自分に嘘をついてばかりで
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雨降りに確かめてみた自分だけぬれてないよなカラスのあいさつ
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秋風や何やら寂し夕暮れに虫の音ありて心なぐさむ
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