土をわり芽吹く緑のえんどうの産声聞こゆ木枯しの笛
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好きだから時間をかけてやわらかくふっくらくらと黒豆を煮る
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子の帰省に ついて意見が 対立し 言葉通じず  異星人に見えた
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さみしさと 煩わしさを 比べたら 前者がマシと ひとりごと言う
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図書館で多めに借りていた本をようやく読める一月五日
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お月さま受験の子らを見守ってカゼひかぬよに雪降らぬよに
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友に似た高校生にふりかえるお下げの頃にもどるふるさと
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沈む日はまぶたの奥でなお光りあきらめわるい私みたいだ
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口々に父の思い出母の味家族にもどるふるさとの夜
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知らぬまに手術痕きずあと撫でて眠るくせ夢の中では母の手だった
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あと五分眠っていたいと思ってた 今は眠れず朝を待ってる
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遠い日の君の涙を思い出し眠れなくなるこんな夜には
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変わること変えることなどできないとあきらめたとき親子になった
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挨拶もせずにふらりとやって来て母の好物プリンがふたつ
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昭和ドラマ 演者のその後の 人生を ひとりひとり 検索してみる
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雪の中直会なおらえの菓子配り行き祓いの神事一つが終わる
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少しずつ 距離を置こうと してた事 わかっていたよ 今元気かな
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初雪が名残りの柿を白く染めめぐりそこねた季節を隠す
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カ―テンを開けても外はまだ暗く月と星との時間の最中さなか
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そういえば授乳の頃も思ってた せめて一晩ぐっすり寝させて
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父母ちちははと弟たちと住んだ家ドアを開ければみんないるよで…
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眠れない眠れないから何かして上手く行かずに追加の眠剤
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早朝の三時にやっと眠くなるホットワインの催眠術師
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ホットミルクに似た声の人だった まろやかに溺れてくみたいな
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この部屋に占める「私」が増えた日の 少し大きくあくびをする九時
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将来を見て酸いも甘いも言えぬから「自分らしさ」と呟いている
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朝一番 全国ニュースに故郷の名 暴風雪の町を案ず
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想像す雪のない地はどんなにか白一色にただただ絶望
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新しい モノがはじまり 少し前 新しかった モノが消えゆく
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春忘れ芽吹きを忘れしおれゆく市井の一票どこかに消えた
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