入るなり目尻をぬぐう床の母 愛なお負けぬ記憶の病
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傘の中滲む視界に出た弱音雨は優しくかき消してゆく
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どこまでが昨日でどこが今日なのか 夜闇に溶けた小道を行きつつ
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研修にきみが来ていた3ヶ月 わたしの胸に続いた白夜
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闇夜でも ムーンライトとふ 焼き菓子を かざして見せむ 中秋明月
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欠けました 月に一夜の暗闇ダンス  だれも見てないあかりを消して
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いつもならつと手を放すのに今日だけは別れ見越しておんぶをねだる
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戦後とは女性参政八十年女性総理を見る日が来るか(十月二十日)
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そんなには期待しないけど「ガンバレ」と小さな声で応援してみる
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気にするな って言わない人のやさしさに  育ててもらった 歌詠む 気持ち
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あの店のこのパン一個で表せる小さく大きな今日のしあわせ
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まだココア買ってないんだ いきなりの冬の寒さはちょっと勘弁
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100曲の中から未練を引き当てて プレイリストのトッパーは峯田
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今週もびっしり埋まったカレンダー 仕事するのは夜八時から
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しゃぼん玉 風の列車に乗ってゆく 小川を越えてコスモス越えて
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待ち侘びた秋到来に感じるはメロスと同じくらいの嬉しさ
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誤りて 南瓜切る手を 傷つけぬ ルビーの如き 血に見惚れ居り
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侍の機嫌損ねた旅の者命惜しくて綺麗な土下座
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制服の四人泣いてる道の端 あそこがきっと世界の真ん中
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キスをして愛を確認する二人俺が見ててもやめないでいる
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バイト先女だらけの時間帯何事もなく無事でなにより
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真っ昼間知らない街で自分より怪しい人に警戒された
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夕方のニュース見てたら容疑者の名前が俺と一文字違い
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人が言う三十路になると肉よりも魚が好きになるは嘘です
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若い頃いれたタトゥーを嫌になり消そうと努力してるから何?
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おっさんがテーブル席に三人で焼き鳥持って誓いを立てる
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カラオケで俺の十八番の喝采に輪唱で追いかけてくるなよ
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だるすぎて回覧板の内容を全く見ずに判子を押した
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みぞおちに一発入れて苦しんでいる俺を肩に乗せて運ぶ
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薄明の空オレンジ色を背景にV字飛行のシルエットたち/白鳥
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