みまかりて三十余年経し夏に初めて訪いぬ亡父ちちのふるさと
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行くことは叶わぬけれど山車だしが出る長月二日今夜宵宮
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新米と秋刀魚購いささやかな幸かみしめる十三夜かな
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いくつもの花びら風に舞ってゆく夏の化身の百日紅ひゃくじつこう
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「女だし 告白なんて しないわよ」 あぐらかいてちゃ 先を越される
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秋茄子の光る畑や熟したる無花果見つつ通院の道
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デジタルの目覚まし時計を逆さまにして眺めてる夏が終わる日
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ひりひりと波立っていく心なりほんの些細な出来事なれど
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雷光の度に強まる雨音を一人聞いてる音の無い部屋
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石垣に垂れ下がる葛花咲きてシジミ蝶いく蜜を吸いつつ
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亡き夫の好みしおはぎ供えんと朝から小豆コトコトと煮る
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随分と 薄れた空の 青色と 薄れた君の 声や面影 
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えいやっと私の中の風呂キャンを背負い投げした午前3時
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溶け残る角砂糖こそ甘かりし夜更けてそこに灯る思い出
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馬鹿みたい われを縛るは われ自身 力を抜いて 勇気を出して
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雨続き秋は静かに深まりぬハロウィンを待つかぼちゃのランタン
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あす休み 私の中の 風呂キャンに 今日は負けます おやすみなさい
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何気なく腹肉掴みその厚さにたまげるやら憎らしいやら
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豊作の冬瓜欲しがる人わずか所在なさげに小屋の隅っこ
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風邪の子に焼くオムレツの甘い香と休む仕事の後ろめたさと
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鳥渡る 諏訪湖の水辺賑わかせ冬を遊べや春帰るまで
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白壁の土蔵を覆う蔦紅葉きらめき揺るるそよ吹く風に
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千日の回峰行に憧れた心を共に街路を巡る
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頑なは自ら望み閉じ籠りこじ開けたのはなんと煩悩
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独りでも 生きよと諭す 声に似て そよ吹く風に 母の恋しき
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檜葉の枝杉の木の枝花屋にて並び始めて冬の訪れ
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秒針と分針ズレているような違和感のまま終わった会議
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五平餅売らる茶店の灯も落ちて紅葉祭りも日暮れて終わる
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いなり寿司けんちん汁に串揚げを作り孫待つ猫とじゃれつつ
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一列にまとまるムクドリ鳴くを止め首傾げ見る駅向かふ人
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