猫の子の 痩せて食べ物 せがむ顔 それにつけても 早期復興
7
四年間集いし日々を懐かしみ友を見送るフェリー岸壁
11
ひとさじの砂糖で甘くなるのなら あと何杯で変わるだろうか
8
檸檬から香る黄色と雨の音君の手の平美の展開図
10
先週とおなじ下着のきみが棲むWi-Fi不通のぼくの1K
5
幻か水面に浮かぶ鳥居とて潮が引ければそれ現かな
9
風呂上がり 目をつぶったまま 動かない 息子の髪を 乾かしてる俺
8
入り混じりとっ散らかって抗えずエントロピーの増すだけ屋敷
13
せっかくコブシの花も咲いている冷たい雨はもうけっこう
8
私の意見なんぞも何らかの足しになるかと言う「止めましょう」
9
電気、水 道路戻りて 安堵せり それにつけても 早期復興
6
春近しと思いきや、吹雪と氷点下、寒の戻り春の足音遠ざかる
13
ふきのとうの芽、ゆきどけのなかから、こんにちは、二人目の孫のごとし
11
いいやもう 北極星の真下の草原でマドレーヌに 絶望そえて
8
人力車外国人が行き交うスカイツリー見える交差点
8
去り際に カッコつけてた 俺だって 瞼にワイパー いるほど泣いた
10
飛石か四国へ続く道の様瀬戸内海の島ぞ連なり
9
記念日に 必要なのは僕でなく キラキラしてるインスタ写真
8
寝巻かも部屋着かわからぬ服のまま過ごしたんだよ雨降りだから
11
億劫で食わず惰眠を繰り返す さっきの夢でカレー食べたし
12
本棚にしまったままの文庫本 開かなければ彼は死なない
10
おかわりを褒めた母から「高カロリー」かの日の会話も今は昔か
6
君 捨てたもうなかれ 泥だらけの写真 それにつけても 早期復興
1
帰り際振り返る君言いたそう派手な言葉は今夜は止して
1
イライラと机を叩くボールペン課長の顔に苦虫浮かぶ
1
床張りの 冷たさ慣れず 春来たる それにつけても 早期復興
1
狂犬は 人を噛んでも 飽き足らず 仲間を噛んで 狂犬にする
1
狂犬を 放置するのは 人のため 言いたいことを 言わせておけば
1
義人だと おのれのことを 自認する 凶器のような 口で噛みつく
1
正義感 非情になれる 人間は 悍ましいこと 何でもできる
1