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戦争にゆかさるるわれらの平和 「今そこにある危機」を忘れて
5
ぜんそくのこどもの病室あかりがみえる 明けないよるをなみだぬぐいて
15
めいわくをかけてもいいという人に 肩ちからぬけ安堵のためいき
12
口ずさむ孫のミサ曲やさしくて 生きる深きを海面にえがく
15
リハビリのジムにときめく冒険は コードがともの宇宙遊泳
11
サンタにも病魔とりつきリハビリ中 さちとどけたい杖つきつつも
8
ふらふらにリズム追いかけリハビリで こころとからだおどるエアロビ
13
蟻ひとつころさぬひとのやさしさは 競う世のなか踏みつぶされて
19
朝まだきあかりの家のあちこちに 通院の闇ほのかに照らす
10
更年期という手袋をはめつつ冷え性という靴下も履く
20
断乳に張り裂けるほど泣く吾子を 抱きしめる夜 卯の
小晦日
(
こつごもり
)
41
正月に夫の顔をまじまじと見て気づくなり永井荷風似
17
玄関であからさまなる孤独みて俯き知ったパンプスの傷
19
美味そうに何食べてんだ佐川君一口くれよなぜ隠すんだ
10
善人の言葉の棘がささる時 来る朝だけが良薬と知る
16
その場所で壊れそうなら引けばいい 根性論など机上の空論
15
照明をダウンライトで暗くする 君の寝息が
沁
(
し
)
みこんでくる
14
こちらへと羅針盤の指す向きは 樹氷の森の白き嘘なり
13
尿が出ないびっくらこいて病院に行ったら酒の飲み過ぎだとさ
7
毎日を丁寧に暮らすその意味を 未だ分からず普通に暮らす
26
谷川の氷も解けぬ山里に霞ぞ春を空に知らする
7
春来れどなほ降る雪に鴬の初音待たるる山里の空
15
若水に映るは老いの影なれど汲めば心ぞ新たまりける
9
家人寝て、一人コトコト小豆炊く 静かな夜の季節を惜しみ
43
コトリ鳴る鎮座まします仏壇の母のお骨は押し合いへし合い
13
花咲けば青田を翔る風が待つ ゆっくり進めよ ゆらゆらの春
25
階段を駆け上がってたねあの頃はよろける老犬と今朝もお散歩
12
卒業と入学の
間
(
ま
)
の春風は、こぶしの白い花を揺らして
45
病棟の 父への葉書に歌一首 余白で伝わるものの多かれ
27
気がつけば 短歌口調でぶつぶつと おもしろ可笑し 春待ちの午後
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