さよならを告げた訳では無いけれど逢いにゆくにも理由すら無い
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月命日 長き通い路耐えかねん 泣かせてくれるな待宵の君
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留まらぬおくと面影おもいつつ 君の口癖さえ忘らりょか
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滲みゆくロングコートの主はき 抱けど話せど片道切符
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ふじの色見えぬ澄空結露越し センチメンタルだけの残月
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茜空彫るは富士のみねの黒 じきに消えようあおに交じりて
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軒の下明けてくれるな松の内 友の年賀はたった四枚
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ひび割れのモルタル寂し公団前 人は変われど街も変われど
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来し方の出逢い全てが星となり瞬いている真冬の銀河
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故郷の冬は寒くて冷たくて夜は暗くて星が綺麗で
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家の中いたるところに時計有りせかす用など有りはせぬのに
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ゆるやかな丘の連なる英國の夏の夕べはどこか哀しき
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モノクロの雑踏掻き分け上野口 デッキの雪さえ心ぬく
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音痴でも構いやしない気持ち良く歌う息子のもう見れぬ過去
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人知れず春の種蒔く人のよに雨はそぼ降る日の出の前に
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字が綺麗それだけなのに得をする人柄までも綺麗みたいに
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手強てごわくて金串かなぐしに聞くさつま芋蒸して確かめ蒸しては確かめ
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誕生日おめでとうとは嫌味かと迷いながらも飛ばす飛行機
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枝先の つぼみ見ながら 手入れする 梅の老木 風花かざはなが舞い
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池のすみ氷張らずに残りたるわずかな場所に鴨のひと群れ
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わたくしは母であります女ですよわい五十をとうに過ぎても
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丸くなり風を受けつつ眠る猫でたくなるよな背中をむけて
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松の木の敷き詰められた葉の他にあれだけの風も跡は残らじ
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寝転がり床に射し入る陽だまりに手を伸ばしたら春つかまえて
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空見つつ結露の窓を拭きながら真冬日の月惜しむ僕あり
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部屋あかりパチリとつけて夕刻を夜へと変えて夕餉ゆうげの支度
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生姜ねぎきびしい季節もあと少しお守りとして日々使いつつ
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待ち切れぬ信号の紅向う岸 君の背中はもう第三者
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もう明日あすか。予定持たない休日は意味を持たない日々と似ている
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夜更けにてカップヌードル食いたくて湯気まで食いぬ寒さ避けつつ
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