山駅舎 待ち合い隅の招き猫 左手上げて人来るを待つ
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若冲じゃくちゅうにわとりは夜ぬけ出してとなりのちょうついばんでいる
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誰だって誰かを失い生きていく 色んな後悔心に綴じて
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折り鶴がカサリと落ちる音ひとつ引き戸の指を引き留める朝
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芝生には立ち入り禁止のロープあり 輝く初夏の聖域のよに
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ガラス戸の夏の光が肌に染むフローリングに虹が映りぬ
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あの時が 最後だったと思い出す 未来が見えて だきしめる今
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熊避けの鈴の音聞こゆ緑道で 白き雲見し夏がまた来る
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九州の醤油は甘いいっぱいの砂糖を入れるように彼女も
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ひそやかに小さな本棚組み立てる 幼子眠る土曜日の午後
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18時半の夕空明るくて 人生全てを一瞬許す
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「ゴキブリにはツィクロンb」資生堂にごきぶり色の髪の青年
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珈琲の湯気ゆらゆらと 夜に溶け 遠くに灯りのともる日を待つ
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リヤカーを引いて行商半世紀句を歌を詠みまた見せている
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新月と満月ゆっくり行き来する あなたとわたしのこころの継ぎ目
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切り株が そろそろ休めと声かける 疲れし人を労ねぎらふがごと
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蝦夷梅雨の季節でしょうかあの人のお名前忘れ紫陽花をみる
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群青の 心とそらは 比例して 淋しき今宵こよい 上弦の月
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感覚と言葉がうまく結べないちょうちょ結びは斜めになって
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気に入った傘はいつでも見失いビニール傘をさし続けてる
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蝶のように舞い蜂のように刺すのつもりでくだるビルの階段
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夕食の酒のあてには温しもの ふと思いたる雨の午後なり
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鳥歌ひ魚は泳ぐ思ふまま我ら持ちたし自由と平和
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滝落つる自然歩道下滝カフェのあじさいに降るしぶきや優し
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山々の 隙間から湧く 白雲は 悲心ひしんつづる 付箋ふせんの様で
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勇気出し一人カラオケ行った友 小さな一歩に拍手送るよ
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青蔦あおつたの茂る空き家に残されし白きボールに七月の雨
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本堂の法要さぞかし暑かろと うちわ配りぬ住職も汗
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売店で熊鈴買ひしハイカーが 木洩れ日揺るる上高地往く
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星ならば 見えて届かぬ あたりまえ 君との間 30光年
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