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遠慮なく気兼ねなく座る優先席 敬老パスを初めて使う日
16
ドアが開き目の前に見えるエレベーター 今日は乗ろうか私はシニア
14
短歌
(
うた
)
を読み思い起こすは故郷の一家総出の田植えの五月
17
眠る
犬
(
こ
)
の耳元にそっと「さんぽだよ」ささやく夫に優しさを見る
21
ビルケナウにガザの髪触れ合ひ混じり死の後も死者なりき兄妹
13
木香薔薇の花言葉を純潔 死へかけがへのあるものならば
9
萌黄野へ蝶たちぬわづか血をふふみおとうとの吹く Gute Nacht
6
近親相姦兆す鳩小屋いもうとは髪切り散らし兵率ゐしに
5
半身不随のあには車椅子へくくりぬ両脚に雛罌粟の一輪 かれき
7
生活の刹那そのまま切り取って湯気が立つよな歌詠いたい
54
急かされているかのように生きている まずい気がする まずい気がする
8
二度咲きは小さく可憐 夏空に薄紫の藤の花咲く
27
夏休み静けさの中出勤す 校庭には
早
(
はや
)
工事の足場
42
音も無く
陽炎
(
かげろう
)
ゆれる濃い桃の
百日紅
(
さるすべり
)
咲く 誰も居ぬ午後
50
五輪祭 地続きで鳴る銃声よ
79
年の広島忌
哉
(
かな
)
35
気がつけば靴も鞄もTシャツも電車柄だね二歳のわが子
38
油絵のような大雲黄金色 夏の夕暮れただ息を呑む
37
「まだ読むの?」疲れた兄ちゃん逃げたいが 一歳あと追う「もういっかい!」
24
波音に耳を澄ませば満ちてくる 人は何処かに
渞
(
みなもと
)
を持つ
38
外国語 学び初めて知る 母語の 身近にあふれる月とお日さま
28
夜のびて 雨雲 空を隠すとも 月日はいつも この世 照らして
26
解体の音もさみしき秋の雨誰かが住んだ家が無くなる
55
海底を二万
里
(
マイル
)
も行くように静かに静かに寝ます おやすみ
39
口内にニッキの飴玉放り込み転がす《
20
時》オフィスを占拠
13
祭り済む小さき村に笛の音の聞こえた様な秋の風吹く
30
分厚めの 段ボール箱に毛布敷き 冬じたくして あのミケを待つ
40
病床の猫にチョッキを編んだ日は独りぼっちの今日を知らない
44
悪くない風が吹いてる小春日は会えない人に会いに出かける
60
ホラー映画見て寝られなくなっている自分 なんだか愛おしいよな
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冬空に明星一つ煌々と遺す光は地上を照らす /追悼 谷川俊太郎様
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