Utakata
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ミツバチ便り
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地を離れ友と疎遠になりつあり仕方ないわと豆腐を崩す
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あれは母かもめとなりて飛ぶ海の緑の深さ深い霜月
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葉と書いて紅葉と読む季節なり赤いてぶくろポケットから出す
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夢うつつ涙の先に船浮かべオールを漕いだ先には母が
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朝日浴び雪虫溶けてしまわぬか冬のお便り配らぬままに
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あなたから良い香りするラインきて触れた背中の熱さをおもう
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夫には言えぬ五文字をいつ言おう言えないままで終わるもいいか
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この人が若い私にこの指輪渡した頃の煌めきさがし
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紅葉の葉海に投げればたちまちに海にも秋がおとずれるんだ
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みぞれ降る公園あたりで立ち止まる冬の前には休憩しましょ
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窓枠に忘れ物あり夏の虫わたしも同じ人生一度
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親指の深爪しくしく痛む先かすかに感じる冬の後先
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花も実も葉すらないけど生きるため枯れないためにいろはすを飲む
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朝焼けを珈琲共に眺めいる時間切っ割くサイレンの音
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ご葬儀についてスタンプ絵文字無し字だけのライン流れてきをり
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いつからか爪の甘皮剥くのやめ分厚くなりゆく面の皮かな
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山は紅遠きことこそ美しく鮮明である息一つ吸う
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「これからよ、人生は」などと言われをり笑顔で隠し途方に暮れる
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Amazonで売ってはいない優しさを集めて夜を乗り切っている
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焦れずに習慣として逢う君とつないだ手には海がないこと
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朝焼けの朝をきれいに開いてくチャックのような白いカーテン
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美しく咲いた桜の今はもう落ち葉となりて皆がゆく道
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風邪をひき眠るあなたにたくさんの幼き頃の寝顔が宿る
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そんなことしか言えないのかその口はたまには私を可愛いと言え
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すすきの穂グラスに入れて触れてみる小さく揺れて秋に挨拶
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紅黄と染み入るように色冴える屋根の向こうの眺め深秋
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命日や臍の緒眠る白箱を開けては耽る母の面影
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雪虫の純白の背に冬が来ぬハンドクリームぬって待つ雪
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ビアホール出たら下弦の月ありし避けることなく雪虫が舞う
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母が逝き形見の時計腕巻けば脈を打つよな寂しさ湧いて
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