ミツバチ便り    フォロー 32 フォロワー 33 投稿数 152

五十年生きても我の舵取れず心臓弁にもそっぽむかれて 

靴底で「じっ」っと震える振動は何日分の命か 蝉よ 

この白き部屋も終わりと知る母の最期の珈琲砂糖多めで 

この痛み夜空に放り投げればいい一生圏外という逃げ道 

一葉のかたち様々アゲハ飛ぶ緑の密度高い日曜 

進める日進めない日があって良い 右脳と左脳寄り添いあって 

立ち上がれ転んでもいい走り出せ向かい風ゆく君はまぶしい 

見上げたら今の私と同じ色裏切られること空もあるのね 

木も街も油断している窓の雨青葉の向こうに初夏の鉄塔 

ラムネよりあの日の泡が溢れだす目にも指にも甘い想い出 

告白をすると私は卑怯者白い百合って鉄砲みたい 

古い地図捨てて真白な草原へ怪我をするのはのぞむところと 

探しても本当の私なんてない ようやくわかる人生半周 

キッチンに「昨日ごめん」の置き手紙 もっと綺麗な字で書け息子 

YouTube止まり画面の暗さにて銀歯光らすわれの顔あり 

想い出は数に限りがありまして忘れていくね ごめん母さん 

熊よけの電気が走るフェンス超えしなやかに巻く黄緑の蔦 

前髪を1ミリ直す我が息子後頭部の毛寝癖のまんま 

階段と風呂場と居間に手すり付けほっとしたのは父よりわたし 

持つ物が増えるスマホと老眼鏡夫の薬と拗ねた子の肩 

良き主婦を演じた今日の一日を両手を伸ばし明日に備える 

もう少しもう少しだと筆は言うリモート前のリップラインは 

クロゼット隅に刀が眠りおり「とお」と振ったら散れる折り紙 

雪の朝友が逝き葬儀は無しと 心で通夜すコロナ恨みつ 

大きくて温かだった父の背は愛と哀とを教えてくれる 

雪、雪、も傘などささぬ彼の地では 半袖まぶしカーリング女子 

姑を「いい義母ははなのよ」というたびに私の寿命一年のびろ 

切りすぎた前髪つまみ気にしないふりができるわ母親だもの 

マフラーに六花が咲いて息で溶け昼の白月おとなしく消ゆ 

茶だんすの奥に未封の赤ワイン今夜飲もうか一人飲もうか