ミツバチ便り    フォロー 29 フォロワー 29 投稿数 150

探しても本当の私なんてない ようやくわかる人生半周 

キッチンに「昨日ごめん」の置き手紙 もっと綺麗な字で書け息子 

夕陽浴び「なんもさ」「だべさ」の帰り道優しく包む大雪山さ 

産まれたる姪は桜のくちびるで我に笑み向け頬温かし 

行く春にほどけそうなる 人を避け人に避けられ透明になる 

来年は入学式に行ったきり息子のシャツを畳む手休め 

エナドリに月光の入る余地はなく見守るだけの 子は受験生 

珈琲を濃いめに淹れて含んだら四月はつま先で去ってゆき 

手で作るピストル真似てこめかみに実弾たまがあっても構わないよね 

YouTube止まり画面の暗さにて銀歯光らすわれの顔あり 

髪をふく摩擦音ただそれだけで一人の夜はノブが冷たい 

人工のまつ毛が騒ぎ若かった彼女の面影仄めかしては 

宙に浮く割り箸の先蕎麦がありショウウィンドウは嘘といえ愛 

想い出は数に限りがありまして忘れていくね ごめん母さん 

熊よけの電気が走るフェンス超えしなやかに巻く黄緑の蔦 

前髪を1ミリ直す我が息子後頭部の毛寝癖のまんま 

階段と風呂場と居間に手すり付けほっとしたのは父よりわたし 

持つ物が増えるスマホと老眼鏡夫の薬と拗ねた子の肩 

良き主婦を演じた今日の一日を両手を伸ばし明日に備える 

もう少しもう少しだと筆は言うリモート前のリップラインは 

クロゼット隅に刀が眠りおり「とお」と振ったら散れる折り紙 

雪の朝友が逝き葬儀は無しと 心で通夜すコロナ恨みつ 

大きくて温かだった父の背は愛と哀とを教えてくれる 

雪、雪、も傘などささぬ彼の地では 半袖まぶしカーリング女子 

姑を「いい義母ははなのよ」というたびに私の寿命一年のびろ 

切りすぎた前髪つまみ気にしないふりができるわ母親だもの 

マフラーに六花が咲いて息で溶け昼の白月おとなしく消ゆ 

茶だんすの奥に未封の赤ワイン今夜飲もうか一人飲もうか 

真っ白な雪のかたちの帽子あり朝焼けが降るなだらかな丘 

テレビつけカボチャの種を煎っている冬の時間は夏より長い