あいつよりましだと思いつつ生きるあいつよりましと思われながら
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「あの魔女は自殺でしたよ その証拠?僕に名前を教えたことです」
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かさぶたになってしまった思い出をむりやり剥がしてまた傷にする
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歯車はもう狂わない最近の運命はみなデジタル仕様
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どなたかが一心に打つ点描の赤橙あかだいだいがきらめく季節
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こうやって年月が過ぎあの頃は大変だったと早く言えたら
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でもそんな寒くないしとコート置き出てきたもののもう帰りたい
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新しいパソコンが来て古いやつ拗ねてもう立ち上がりもしない
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人の声せぬ正月はおとなしく手酌で旨い日本酒を呑む
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いかに踊ろうとも背後迫るのは冷えたどうしようもない風だ
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霜夜には翌朝の土踏む夢よサクサク靴で鳴らす快感
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寒波去り鬼柴田も負けにける秀吉の計あゝ無常なり
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平静を 装う君に 詮索はよそう 代わりにご飯 大盛り粧う
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花菜漬トントントンとまな板と葉を軽くたたく母の影見ゆ
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厚切りの休日加減よく焦がし少し溶かした甘えを乗せる
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「いい加減」季節のお湯をゆっくりと身体慣らしに背中に流す
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炎天の坂のぼりきて星祭り振り返らむとひとりきりかな
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落蝉を拾いて夏の盛り逝く生きるものだけ死ぬことができ
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天界の母と俗世のわたくしが共にみている大き満月
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母遺す細い鎖の腕どけい母が逝きたる三時をしめす
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ピカピカの秋刀魚さばいて三枚に 食す家族の笑顔想いて
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秋桜は風を揺らして夕暮れに過ぎ去りし夏教えてくれる
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靴下の左右が微妙に違う色そういう男子が意外と好きだ
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帰り道バス乗車中に出る涙 あってよかった不織布マスク
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駅を出た昼下がり過ぎの青空にある白い月、誰も見てない
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君だけの傷になりたい治ること叶わぬ一生ものの痕に
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懐かしい歌を聞いては思い出す きみとすべてを集めていたこと
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窓を開け掃除機かけて口ずさむご機嫌な歌、鳥の合いの手
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繰り返し吐いては吸って生きている 止まらぬ呼吸ままならぬほど
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打ったとて響かぬ世界で生きている 自己プロデュースの波に揉まれて
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