積雪の歩道に残る足跡と同じ歩幅で歩くいずさよ
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えんぴつをころがすようにやすやすと答え出せない恋のマークシート
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「愛(かな)し」とは「悲し」に似ててわが胸に一匹の鬼棲ませてやまず
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二十歳なる光の殻を脱ぎ捨ててゆく背なまぶし 息子(むこ)に幸あれ
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湯気の向こう誰の期待も届かない場所としてある朝の珈琲
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スマホから指を離してひらがなの「やすみ」を飲み干す土曜のひかり
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一日で 十五度の差は辛いけど ぬかるむ庭が少し嬉しく
24
「月が綺麗ですね」を待つきみの横顔は月
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捨てられぬ 古き手紙の 薔薇色に 変色すまで また仕舞い置く
24
地下鉄に 凛と咲いてる 一輪の 百合と目が合い 見惚れた初冬
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早朝の ダイヤの乱れに 涙する 神の朝日ダイヤの 乱れを思えば
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皆眠る 刻はつとめて 書を開く このひとときは 我が財宝たからなり
14
雪が解け重なり合った掌は愛が交差し熱が絡まる
8
コロコロと 手足バタバタ 笑う君 僕も笑って 生きていけるよ
10
香しい葉で包まれた桜もち口いっぱいの春を噛みしめ
26
縫いぐるみのお猿を乗せてカート押すばあ様お茶目な幼女になりて
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背伸びしてどんな自分に見せたいの? そのままでいい私は私
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病みて臥せば 枕は砂漠の砂となり うずもれ星と 眠り落ち行く
25
今宵こそ回り道せむ 蒼き森  月のあかりを地図として踏む
25
足腰に力入らず お座りも儘ならぬきみ 寿命乗り越へ
29
白内障目を患いし我が猫は勘を頼りに平明に生き
22
なにもかも集中できない 君のせい 頭で君が踊っているから
9
冬の街 歩くとそこに 溢れ出る 要らぬ思い出 寂しさばかり
21
前世の 記憶を垣間かいま 見たような 霧と光を からめたる風
24
祖母孝行 卒寿の年に ランドセル  われの息子は 貴女あなた曾孫ひまご
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ちょっとだけ 君に寄りたい 冬の朝 わざと取り出す 有線イヤフォン
8
短歌みたいな人生がいいなとか あまりにアバウト それでもいいか
7
深夜なら黒糖紅茶と藤井風  胸の奥まで、ふう、じんわりと
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ため息をつきて曲がれば白き富士雲を払いて満天の青
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みるは入浴剤もいいけれど柚子のおふろに勝るものなし
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