「じゃあまたね」まばたきひとつしないままコーラで流し込むハルシオン
2
もうだいぶ塞がりかけた傷だって触られるのはやっぱり痛い
9
とりあえず出された薬をとりあえず飲んでとりあえず今日を生きる
2
太陽やあの子みたいにいつまでも灯り続けるひかりがこわい
3
あいつよりましだと思いつつ生きるあいつよりましと思われながら
3
「あの魔女は自殺でしたよ その証拠?僕に名前を教えたことです」
3
かさぶたになってしまった思い出をむりやり剥がしてまた傷にする
3
歯車はもう狂わない最近の運命はみなデジタル仕様
3
どなたかが一心に打つ点描の赤橙あかだいだいがきらめく季節
7
こうやって年月が過ぎあの頃は大変だったと早く言えたら
9
でもそんな寒くないしとコート置き出てきたもののもう帰りたい
4
新しいパソコンが来て古いやつ拗ねてもう立ち上がりもしない
4
人の声せぬ正月はおとなしく手酌で旨い日本酒を呑む
14
いかに踊ろうとも背後迫るのは冷えたどうしようもない風だ
5
霜夜には翌朝の土踏む夢よサクサク靴で鳴らす快感
4
寒波去り鬼柴田も負けにける秀吉の計あゝ無常なり
3
花菜漬トントントンとまな板と葉を軽くたたく母の影見ゆ
2
埋葬費をりしもてなぐさみに染む罌粟防火壁のもとに額づけ
2
放蕩の返済が果追はれつつ葡萄に裸婦は序する福音、鳩卵
2
約翰よはねまぎらはしくも謄本へ添ゆる洗礼名さへみわけがたかり
1
娼婦私生児しかれども父祖にてはなやかなる頬 じつを衒ひて
1
夜が明ける 空の黎明 紫に 蓮咲く頃 はや目を覚ます
8
夏茜、戻れずともまた逢いにきていいですかと君きいてくるから
2
コーヒーのお湯沸かしてる間 早く出しすぎたアイスをながめる
5
梅雨の末街の向こうに光がさす 多分あそこに夏がある
5
コロナ禍よ早く過ぎろとAmazonが届くたびマスク探すこの手間
6
意地悪な電話とぎこちない手紙 貴方の利き手すら愛おしい
6
この街に雪は降らねど 積もったと君が囁く電話越し 冬
14
これまでの自分をいくら赦しても今日の自分が罪を重ねる
16
透明な花瓶は傷も透明で 割れる前なら触っていいよ
16