雪原のような白鍵さまよひて悲しき調べ一人辿りぬ
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哀しみに刹那打たれて落丁の次第に増えし人生を生く
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中空に半月薄く張り付いて言葉足らずの帰路を追いくる
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夜想曲弾かんとしてもその中に密かに宿る夜は逃げ出す
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wifiのルーターが月と交信している緑と黄色と赤のランプで
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東窓開けて見る月煌々と 恩ある人の訃報が届く
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地球ほし照らす 今宵の月は 格別で この満月は 二度と観れずや
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寒空さむぞらにしらじらと浮く満月はくもりガラスに雪あかり見せ
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先人の 運んだ 丸太と岩の道 踏みしめてゆく 三輪山登拝
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寒い寒いとお前らはやかましいしうるさいしでもぼくもそうおもう
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檜葉ひばの木の枝の中には遠い土地香りの中に私の中に
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万葉の 人に詠まれた 同じ月 やがて令和も 昔と眺む
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地震なえののち寝返り続く幾度目か考妣こうひならびて静かに座せり
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雪が降る むかし絵本で見た姫がガラスの靴を履く静かさで
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次々と 食べ物こぼす 子どもらに なす術もなく 茄子ひとかじり
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爪切りに小さな教会描かれて師走なればとしばし眺むる
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去る人の残り香宿る年の瀬に白きサツキの帰り花咲く
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三十年住み慣れた家を後にする また新婚ね 小さなアパート
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クリピより ヒルクライムの方がいい 言いたいことが 真っ直ぐにくる /オヤジにはね
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ストーカー先輩が ころした理由わけなど解らずに 愛することが 凶器なんだよ
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孤独死の 行場亡き膿引き込んで おまえの居場所 消してやるから
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牡蠣届き 生を喰えない奴、フライ? 酢牡蠣しかない 加熱用買え
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眠いのか、血圧/血糖下がったか 判らぬ程には寒くひもじい
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冬の田に降り来る鳥は姿変え孤高の鷺から白鳥の群れに
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まだわたし道を聞かるる人にあり冬海岸にほのと南風はえ 立つ
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七転び 八回起きて また転ぶ それでも立てば ナンクルナイサ
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黄金の花梨をぎし指先に可憐な花の面影を追ふ
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病院の 花壇に咲くは 春色の 色とりどりの 冬の花たち
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積む雪のはじめは六花ひとひらのあまねく広く銀世界見ゆ
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犬の世話以外は何もできなんだ それでもこれが僕の一日
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