春蕃
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長野県在住 春に蕃 

吊るされて寄り添う影は青い渦 智慧はただ風 苦海の波間に
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流氷を渡るちいさな手ひかり わらう はしる きしむ怪獣の貌
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街路樹の影青ければ 午後の陽その陰にまたクマのまどろみ
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吹き抜ける北北西の風街灯に 小雪うつって消えておや猫
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地方都市イオンモールと市営バス 屋根のカラスがまた増えていく
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ここはかつて熱帯雨林だったと 砂の風さえ頷くような
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眼差しが 混ざり眩しく燃ゆる火に 繭玉揺れて ここが居場所で
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糸越しに風の手応え張り詰めて トンビは遥か松の向こうか
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外海のなか舵を取る無垢な子ら 波打つ様に潜って喋って
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初日の出目もくれず富士染まり待つ みかんつまんで 「もう少し」と母
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はしるはしる北風小僧 冬型の 富士ゆきとばせ 屋根まで飛ばせ
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透明で 清潔な風 にほんばれ しめ縄ほどく心地がして
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潮風の手触り残りあかあかや 山盛りみかん 居間を照らして
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なにしようか考えてたらもう夜 ただ気だるさに身を任せて
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焦るさ お湯が水だよ ふやけてく 手を見つめて 握って潰す
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雲の指 太陽転げ落ちていく 陰影起伏図 谷を削って
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雪滲む スケッチブックに 水鳥の 尾羽すべらせ 白む里山
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クリスマスの空気を読めず 産まれた私 晴れの日だって
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満腹でいられる幸せ噛み締めて 天蓋越しのアルデバラン
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ランドリー 温泉みたい あいまいで ひとりになって 黙々畳む
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ゴミ捨てへ 薄雪きらきら 暗い道 右へ左へ 決めポーズ
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めくる手が 冷たすぎて 外は雪 知らぬ子供が すうすういってら
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冬至か ダイダイ柚子の斜陽 眩しくてさ 洗われちゃった
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終わる日の 合図のような灯油香 思考が冬に やさしく染まる
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耳鳴りが ノイズ含んで滲む筆 ああこりゃダメよ 没だよこりゃ
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襖越し 何かが座る 音も無く 直視したら ダメだろうな
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先生も 走り回るよ 師走まで 弟子もバタバタ 幕降ろすよ!
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制御不能 行く末悟り 自らを 爆ぜて砕ける 星にも見えて
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歓喜せり カイロス万歳 空高く スピンスピンで ポンと消えたり
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雪降るか かじかむ手上げ お飾りを 明るいみかん なかなかに映え
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