川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

笑はれてなさけないのは僕でしたあなたに恋をしてたかもめも
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両肩にのっかっているお疲れさんもう若くない僕におもたい
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松ぼっくり待ってあなたのほほ笑みを思ひえがいてまたころがって
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未来とはどこにあったか朽ちる身は風になれずにとざされし窓
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督促をむかへうたんかなけなしの涙の日本銀行券で
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額縁のうちにひとつの世界あり河のむこうに山とまた雲
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わたしとは堤防であるゆくかはのきらめきばかり見おくりながら
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ひとしづくおちた涙は何のためいまぞ生いたつこの芽のために
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なげやりにタスクをあたへすぎたかなフリーズしてるあなたを待つよ
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天をつくばかりの心意気により呼びさまさんかあすの神鳴り
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カーテンの揺れるはやさで恋をして風をつかまへ雲とならまし
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まぶしさにゆくても知れずありし日にのぞかれている過去のひとみに
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初夏の日ざしは恋の予感にてはるかに見ゆる人妻のひと
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視聴者の欲望にそひ番組をプログラムする祭司は私
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あの年のあの日あのとき目のあひてうれしかりしはきらめく水面
8
道具たち手になじみたるしたしみに身をうづめてんがらくたの山
6
あのころの未来をいまは生きながらまだわからない人や愛とか
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人生をたとへば劇といふのなら楽屋で君の手をとらましを
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絶望と希望のあいの子としてはアンチノミーを生きるしかない
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さようなら * 君の姿もまなざしもながれてきえた * テールランプも
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もう音のあふれてこないヘッドホン * 霧雨のごと白いノイズは
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日本語に居候するカタカナの地中海とは異なる位相
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心とは糸であったかふっつりときれてしまったあなたへの愛
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理解者のいないほほゑみ気品とはにほひやかにて凛として美は
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マンホールあけたらあとは落ちるだけあなたの襞に底なしの愛
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人もまたおもしろき世を見果てしか。されどどのみちいのちはさびし
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野辺にたつなんて星ふる空だろうはるかに街の灯もまじりつつ
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ねぢひとつすりきれました人々のさいはひならばそれでよいこと
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西インド諸島の愛におほらかにあこがれている花冷えの里
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やすらかにこころはなぎて波まから深きそこひにしづみ安眠
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