川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

のりあひの車は木々にわけ入りてもうじきですよあなたのお墓
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欲情のあふれゆくまにカレーライス焦げていたのは愛か未来か
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花は咲きまた散りゆくを人の世に老いてあるのはただ見るためか
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空間をさまよふ視点*ひびく声*さかまく好奇心はかなたに
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呼んでいる誰かの声を耳にして窓をあけるとそこは青空
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端的に事実をいふと私には生きることそれ自体がつらい
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あこがれの地球のくらしけふからは一緒に食べられますねおにぎり
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春雨の濡らす大地は黒々とはるかあなたは筋肉隆々
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街路樹の陰にいとしき人はなくきえ失せたのはあなたか僕か
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みづからのうちよりあふれくるものに苦しんでいるあなたは詩人
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村祭いまはない鬼いづくにかさすらひのはてをさまりし墓
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ポワントでたちしあなたの視線へとまぎれてさりげなく僕ですよ
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盃に花びらひとつうかべてももはやかへらぬおもかげに友
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蜘蛛の子をちらす予感をはらみつつ青嵐の吹きすさぶ騒擾
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たくさんの人のかたはらゆきすぎて透明となる私はどこだ
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やさしさはあなたの肌をなぞりつつときにたしかめられる絆は
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知をわけるそれは毒かもしれないが君のうちなる酵素をたのめ
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つまらないことも誰かのなぐさめとおもへばやさし濡れる電飾
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空間と時間のうちに生まれおちあこがれている鳥や樹や陽に
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郊外をいまバスがゆく畠あり団地があってすべてが春だ
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やはらかに地をなめながら飛翔するここちもうはの空にメロディ
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再武装していた僕のひとみにはどこまでいっても果てしない青
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鳥たちがわたしに歌をくれたのであなたにとどけようとはる声
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SNS紀元前史にこんこんと伝言ノートや交換日記
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百日の仕事を遂げた顔をして煙草くゆらす君のあかつき
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いやつぎに再生される映像にのざらしのままあなたの土管
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詩歌とはたとへば原野に吹きつくる風かこころの奥つところの
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神様は孤独にたへずくしゃみしたそんな因果で生まれた宇宙
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大君の御言かしこみうれひつついざ事あらば血は剣大刀
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着飾りてひそやかに夜にまぎれこむかなたに甘美なる裸体もゆ
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