川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。風に羽ばたく鳥にあこがれて。

視聴者の欲望にそひ番組をプログラムする祭司は私
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あの年のあの日あのとき目のあひてうれしかりしはきらめく水面
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道具たち手になじみたるしたしみに身をうづめてんがらくたの山
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あのころの未来をいまは生きながらまだわからない人や愛とか
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人生をたとへば劇といふのなら楽屋で君の手をとらましを
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絶望と希望のあいの子としてはアンチノミーを生きるしかない
5
さようなら * 君の姿もまなざしもながれてきえた * テールランプも
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もう音のあふれてこないヘッドホン * 霧雨のごと白いノイズは
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日本語に居候するカタカナの地中海とは異なる位相
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心とは糸であったかふっつりときれてしまったあなたへの愛
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理解者のいないほほゑみ気品とはにほひやかにて凛として美は
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マンホールあけたらあとは落ちるだけあなたの襞に底なしの愛
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人もまたおもしろき世を見果てしか。されどどのみちいのちはさびし
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野辺にたつなんて星ふる空だろうはるかに街の灯もまじりつつ
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ねぢひとつすりきれました人々のさいはひならばそれでよいこと
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西インド諸島の愛におほらかにあこがれている花冷えの里
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やすらかにこころはなぎて波まから深きそこひにしづみ安眠
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無器用に好きとつたへた言の葉の座礁したままあなたの沖に
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ゆく春にとどまる人にたまさかにめぐりあひしをいのちといふか
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恋するとこころは弱くなりましてあなたの膝にもたれてる夢
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ゆくりかに果たされました逢瀬にはあらはれてゆく足が冷たい
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解釈は自由ですよといふほどにまばゆき星の海に溺れて
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こころから貴方のことに惚れましたそれは嘘ではないけどあすは
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消灯の時間ですよと声がした * こころをオフにした * 僕は寝た
5
否定形でしか語れぬ愛があり虚空にゆれるあてどない手は
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朝まだきこころは憂きにたえかねて啾々として落つる涙は
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なんてことない歌ですがいちおうは書きとめておくけふのメモワール
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めくるめく魔術にたばかられまして馬の踊りて化けたのは鹿
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その道を誰のものでもない道を太陽のもとあゆむ二人は
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外形的行為によって飾られたこころといふは私の絵画
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