川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

電熱のぬくみに抱かれねむる夜半あなたと夢のネクタリン果汁
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あるじなき蜘蛛の巣いづれこの国も乱れてゆくか吹きつくる風
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轟轟とたかまる声をわけながら吾がこころにはたぎる沸沸
10
イマジナリー彼女の熱にほだされて孵化した夢にいなないた馬
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幸福のかたちをひとつしめしては寒くはないかゆれる水仙
16
未来にはあとかたもない労働のさくさくとして刻まれる時
11
さむざむとしたる月日はあけざるも母の煮ものにいのちなぐさむ
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荒野にてあらむいいねもいらぬから不安と不満のふきだまりより
7
どうせこの花も実りはしないからなにもうらまぬシニカルな恋
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時空をばいつかふみこえ群青の空にあなたと水上庭園
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君がため愛と誠をささげたくなんなら揚げてもおいしいですよ
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紙をすくいたつきははや忘れられ連綿たるはただ文字のつら
7
想念は風のごとくに吹きさりてノートの隅にのこることの葉
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あなたにはもうとどかない歌ですが紙ひこうきにをりて空へと
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さんさんと日のふりそそぐ公園にはつらつと声あがる未来よ
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人生をくだるきざはしどこまでもこころにそふは君の面影
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むなしさはひたひたとして水槽のイメージがある空無でなしに
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暖をとる古き書物を火にくべて煙ときゆるはありしよの夢
7
たぐろうとするとこころもひかれゆくこと葉にかかるみの虫の糸
12
セミロング髪をなびかせさっそうと転ばぬように機嫌なおして
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ぶるんぶるるんといまにも爆発しそうこらえて僕の洗濯っき
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ゆく雲をながめてましたゆっくりとうつろふ時のうつしよの比喩
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種をまく日ざしと雨にめぐまれて未来はばけついっぱいの花
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記憶てふルフランよそは生のため希望かはたは呪いかしらず
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偽善ではないなら露悪しかできぬ人にはあらじ愛の証人
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短歌とは、かつて告白なりしがいまやむしろ夢想の表白か
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ふりしきる雪はかつきえころもでに恋の形見のフォトは一葉
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肩につむ灰はらはむとまろびしに底はいろとりどりの花園
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寒けさにつつまれてゐるあしたには震へのうちにたしかなる吾
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またひとり看とられてけりいつくしみいつくしき婦長の瞳に
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