川野三郎
34
36
投稿数
418

歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

またひとつ昭和は星となりました。たてまつらむかともしびの宵
10
待ってたよ。鈍く重たい金属の貴方の愛で砕かれる僕
8
陰謀論、首までつかっていたとして 心意気にはドン・キホーテを
5
わたらうも意気のあがらぬ川むかふ 風にとまどふ敗残の兵
10
熟れたまま干からびてゆけ かのバルコンに吊るされしあはれ柿どち
7
文芸の飽和してゆく世界ならせめてあなたと埋もれ木のこけ
10
目・目・目 都市には実に多くの目 あるいは記録媒体の目も
10
チョコレート、身体にとけてゆくときに甘い匂ひのたちこめる脳
16
玉木さん玉の力でブレイクす。こんなはずではなかった浮気
10
惨劇のガザ、罪深きはイスラエル 黄泉よみかへり描けよ白土三平
9
柱だつ巨突のしげみよ 臨海に人の造りし神殿のごと
8
この道のどこまで僕をむかふるか セイタカアワダチ草の黄色は
10
指先につたはる熱はやはらかく みちたりてゆくなけなしの性
9
鍵盤の音に神秘のとけだしてミルクのごとくカフェのmorning
13
政治とはいつか視界もくもるまに自らの火に燃えつきて灰
9
沈淪の人としてあり 波あらふあはびもなしに海ふかぶかと
8
恨もうか。それとも妬んでみましょうか あなたをぱくんと食べた人たち
5
罪のないつもりで生きてきましたが誰かのせいでカタストロフィ
7
SNSこだましてゆく声たちよ 人それぞれのくらがりのうち
10
冬ちかし、それにつれても木枯らしに吹かれかんかんかんと空き缶
12
やりがいで搾取されてく悲しき日本ヤポン やりきれぬブーケを捧げん
9
カフェにて女連れたつさへづりを聞くともなしにひとりのパスタ
12
地図ひろげ宿をきめたら旅ここち 待っているのはどんな海かな
11
なにゆゑに生を受けたか こたへなき問に執行のときを待つ犬
12
ぼへさんののぞくスカート〈おなじ頃……〉つげ義春は叙勲せられぬ/こら!?
7
都市の青におぼれゆくまに浮かぶ瀬のないなら君と腐乱したいよ
6
人知れず人のこころをなぐさむる 詩人といふはブルーの色か
10
遠目には明るく見ゆる火の手にも風おそろしき匂ひはらみぬ
7
病とは耐えてゆくこと あらはれるエラー・エラーの波のしげきに
10
想像の翼はばたけ 言の葉の空をわたれよ 花しらぬ雁
9