川野三郎
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495

歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。風に羽ばたく鳥にあこがれて。

鍵盤の音に神秘のとけだしてミルクのごとくカフェのmorning
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政治とはいつか視界もくもるまに自らの火に燃えつきて灰
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沈淪の人としてあり 波あらふあはびもなしに海ふかぶかと
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恨もうか。それとも妬んでみましょうか あなたをぱくんと食べた人たち
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罪のないつもりで生きてきましたが誰かのせいでカタストロフィ
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SNSこだましてゆく声たちよ 人それぞれのくらがりのうち
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冬ちかし、それにつれても木枯らしに吹かれかんかんかんと空き缶
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やりがいで搾取されてく悲しき日本ヤポン やりきれぬブーケを捧げん
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カフェにて女連れたつさへづりを聞くともなしにひとりのパスタ
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地図ひろげ宿をきめたら旅ここち 待っているのはどんな海かな
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なにゆゑに生を受けたか こたへなき問に執行のときを待つ犬
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ぼへさんののぞくスカート〈おなじ頃……〉つげ義春は叙勲せられぬ/こら!?
7
都市の青におぼれゆくまに浮かぶ瀬のないなら君と腐乱したいよ
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人知れず人のこころをなぐさむる 詩人といふはブルーの色か
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遠目には明るく見ゆる火の手にも風おそろしき匂ひはらみぬ
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病とは耐えてゆくこと あらはれるエラー・エラーの波のしげきに
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想像の翼はばたけ 言の葉の空をわたれよ 花しらぬ雁
9
いつまでも若い気分でいるようね。ところがどっこいもうたそがれよ
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薄明に明け烏なくあかつきに 空に吸はれるごとくねぶたし
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SNS、いいねごっこは果てもせず。いやはや僕はちょっと疲れた
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ディストピア、技術の支配に奉仕する人ぞあはれにたちまじる吾
7
詩の秘密をさぐらんとして朔太郎 その都市てきな青さのうちに
7
引き潮の終わったはずの恋なのに またよせかえす切なさは何
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かなたから遊ばん声のひびいては たのもしくある未来のおとなひ
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ガラスこしたどるぬくもり まぼろしと思ふまもなく はなれゆく愛
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ふとおそふゲリラ豪雨の破滅的感情しづめつつ雨あがり
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閉塞す。時代は雲にふたがれて 私はここに空白の詩だ
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このりんご、名前はなにかたずねても 答えてくれない酸っぱさがよい
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まつりごとは言の葉の空までおほひ濁りにけりな わが視界さへ
8
ひねもすに人を恨んだ罰として すとんと落ちたあべこべ世界
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