川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

社会詠、かえって難しいことを知らない人のあふれた歌壇
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見とどけてやった映画のあじけなく記憶されてくことぞ悔しき
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一日に数ページほど読みすすむ 文のあとさき はるけくもあるか
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鬱病は乗りうつってくもの故に あなたのフォローはずして御免
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むなしさを気圧のせいにしてみても 心ふたがりいかんともなし
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真夜なかの鏡に映っていたものは のっぺらぼうの顔をした僕
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献血に捧げてきたる吾が血潮 はるか社会にながれて消えた
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思い出のなかのあの人 そのままでいてほしいから もう逢わないの
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東京の氷雨に濡れてゆくほどに夏の恋しくなる神無月
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欲望のままに生きたいわけでなし ただよっている差異の波まに
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目を閉じて音に世界を感じとる。犬の散歩に追いこす自転車
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驚いた。もう二時間も歌ばかり詠んでいたとは、おそと真っ暗
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運命はもうさだまっているとして たしかめてゆくこの身ひとつに
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短歌とは、日々に思ひをすくっても くめどつきない泉であるな
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風船は小さくなってゆきました。いつかぱちんとはじけたら空
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いそいそと僕のおうちにやってきた 三年前の新型スマホ
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晴れてきた窓こしの空の青さには、部屋にいながら旅ここちする
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念のためご一報申しあぐ。noteにて、週刊うたかた秀歌選を投稿しました。
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やみくもに百首もよめば いい歌がいくつかのこる しきしまの道
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週刊誌、フォトの向こうのひとひとの目ぞおそろしく 避けております。
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山の辺にたふれた僕を助けむと薬をはこんでくれたリスさん
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あきらめのつくもつかぬもおなじこと けふもこよひも歌ばかりよみ
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会いたいと思う気持ちはつのれども 会ってどうする その先がなし
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うかばれむ 身はとこしへにくちぬとも 世界のどこかにあなたがいれば
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恋バナに花を咲かせていたるどち 百年のちはみんな墓場よ
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寒さへとおつる速度を秋といふ 毛布に思はず抱きついた夜
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たいそうな文明批評は立派だが、元気なくなる。西部邁よ/「虚無の構造」読了
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上の句は言葉にならぬ思いです 小箱のうちにしまう思い出
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私とは誰であろうか おいっそこの誰か 名前をよびかけてくれ
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このつらき思ひもやがて歌となり はばたいてゆくときを待ちつつ
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