川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。
かつて朔太郎曰く「詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめ」と……

いつまでも若い気分でいるようね。ところがどっこいもうたそがれよ
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薄明に明け烏なくあかつきに 空に吸はれるごとくねぶたし
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SNS、いいねごっこは果てもせず。いやはや僕はちょっと疲れた
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ディストピア、技術の支配に奉仕する人ぞあはれにたちまじる吾
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詩の秘密をさぐらんとして朔太郎 その都市てきな青さのうちに
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引き潮の終わったはずの恋なのに またよせかえす切なさは何
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かなたから遊ばん声のひびいては たのもしくある未来のおとなひ
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ガラスこしたどるぬくもり まぼろしと思ふまもなく はなれゆく愛
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ふとおそふゲリラ豪雨の破滅的感情しづめつつ雨あがり
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閉塞す。時代は雲にふたがれて 私はここに空白の詩だ
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このりんご、名前はなにかたずねても 答えてくれない酸っぱさがよい
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まつりごとは言の葉の空までおほひ濁りにけりな わが視界さへ
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ひねもすに人を恨んだ罰として すとんと落ちたあべこべ世界
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とめどなく涙こぼれて袖ひちて 心の底が抜けたようです
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港から港へ旅をしていった恋する人もいづれかは母
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永井荷風、時代のずれにしのびたる その生きようを模範とせんか
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ふんわりと抱いていました。あの人のイマージュだけを ぽつねんとして
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銃弾の突きぬけてゆく衝撃に気づくもなにもころがりむくろ
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去る人は日々にうとくぞなりまして あのは誰とくっついたかな
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青空を眺めやるにも 病床にうらやましきは はるかゆく雲
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笑ってる。君のこころの振動が伝わってくる愛の揺り籠
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松林、あひまに海の見はらされ 閑雅なカフェにしばしやすらふ
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秋晴れにさそはれてゆく散策に憂さはらさんと 日もさんさんと
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大空に首をもたげていた奴は、あっあれは……VHSビデオで観てたゴジラだ!/1984
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蟹さんよ。あなたは何を隠してる 磯の香のする堅き甲羅に/物名歌
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そはそはと互ひみかはす不安げなまなこにうつるビル群の影
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ふりおろす棒に悲鳴をあげたのは犬であり そして内なる私/奇妙な仕事
7
福引きで大当たりしておおげさに ビンコ!とはしゃぐ幼き先輩/物名歌
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よせかへす波を見ていた 永いこと とけえぬ謎は不可思議の海
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果てるまで隠さなければ この僕の憂ひうつした青き血潮は
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