川野三郎
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歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。風に羽ばたく・鳥にあこがれて。

種をまく日ざしと雨にめぐまれて未来はばけついっぱいの花
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記憶てふルフランよそは生のため希望かはたは呪いかしらず
7
偽善ではないなら露悪しかできぬ人にはあらじ愛の証人
6
短歌とは、かつて告白なりしがいまやむしろ夢想の表白か
6
ふりしきる雪はかつきえころもでに恋の形見のフォトは一葉
6
肩につむ灰はらはむとまろびしに底はいろとりどりの花園
6
寒けさにつつまれてゐるあしたには震へのうちにたしかなる吾
7
またひとり看とられてけりいつくしみいつくしき婦長の瞳に
7
小さなる箱を手にしたラスコーリニコフをあおる顔なき声よ
6
カーテンの裾から朝はしのびこみ盗まれてゆくぬくもりの夜
7
群衆のうちに孤独をたしかめてとけこんでゆく水彩絵の具
7
人類は滅びたとしてその先に羽ばたいてゆくはるか火の鳥
8
海底をつたひつながる亜空間しづみてゆくは人類の夢
8
幸福の欠けらちらばる世界にてうっかり踏んだら痛いよ硝子(ガラス)
9
鳥の影かすめてゆきしふりかへる空とほくして去(い)にし青春
8
鼻をつく黄はだの空にうかんでる青い太陽わたしの母星
9
現実を影絵のごとく見せてゆくSNSによりしたまし火
7
のみくだす空しき泉もうるほへと心の痛みどめとして酒
9
玻璃こしに冬の日ざしはあたたかく世界のわだかまったるおつむ
4
月光を轢(ひ)いてどこゆくトラックよ冬の寒きに第三京浜
9
存在はもろくはかないものですがどこかで未来をゆらす変数
9
とっぷりと眺めてをりぬ幸福のシーン生まれながらの寡婦のごと
4
恋人の脱ぎしコートの粉雪のふけゆくままにとけはゆる藍
9
ふるさとを思ふ林檎のあき箱につまりてありしその赤や青
7
かたぶきし日ざし照りつく国やぶれ蝿取紙の四畳半まで
5
腐ったらそれで終はりさ口笛にみづみづしくもひびきゆく沢
7
おとうとは墓に幾とせ海原をわたりとついだ鷗のいもうと
5
ただ生まれおちてはつちとかへりゆく道にさざんかまた寒椿
6
世界には知らないことがいっぱいでだから明日も生きてゆけるね
8
そこ冷えにおもはずかぶる羽毛ふとん夢へとおちてはばたけ鳥よ
9