川野三郎
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525

歌人であるよりも、三十一文字の詩人でありたい。風に羽ばたく・鳥にあこがれて。

小さなる箱を手にしたラスコーリニコフをあおる顔なき声よ
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カーテンの裾から朝はしのびこみ盗まれてゆくぬくもりの夜
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群衆のうちに孤独をたしかめてとけこんでゆく水彩絵の具
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人類は滅びたとしてその先に羽ばたいてゆくはるか火の鳥
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海底をつたひつながる亜空間しづみてゆくは人類の夢
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幸福の欠けらちらばる世界にてうっかり踏んだら痛いよ硝子ガラス
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鳥の影かすめてゆきしふりかへる空とほくしてにし青春
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鼻をつく黄はだの空にうかんでる青い太陽わたしの母星
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現実を影絵のごとく見せてゆくSNSによりしたまし火
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のみくだす空しき泉もうるほへと心の痛みどめとして酒
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玻璃こしに冬の日ざしはあたたかく世界のわだかまったるおつむ
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月光をいてどこゆくトラックよ冬の寒きに第三京浜
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存在はもろくはかないものですがどこかで未来をゆらす変数
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とっぷりと眺めてをりぬ幸福のシーン生まれながらの寡婦のごと
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恋人の脱ぎしコートの粉雪のふけゆくままにとけはゆる藍
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ふるさとを思ふ林檎のあき箱につまりてありしその赤や青
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かたぶきし日ざし照りつく国やぶれ蝿取紙の四畳半まで
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腐ったらそれで終はりさ口笛にみづみづしくもひびきゆく沢
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おとうとは墓に幾とせ海原をわたりとついだ鷗のいもうと
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ただ生まれおちてはつちとかへりゆく道にさざんかまた寒椿
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世界には知らないことがいっぱいでだから明日も生きてゆけるね
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そこ冷えにおもはずかぶる羽毛ふとん夢へとおちてはばたけ鳥よ
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とびきりのSNSをあげましょう檻にあなたはぼっちの主演/人間園
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色彩に世界はひらかれてゆくかこころ惹かるる額縁の窓
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闘争の傷はいえたか人といふさがをかかへて河馬に噛まれて
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ヒーターのほこりの焦げてゆくときに燃えてしまえよこぞの悲しみ
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見せかけの愛はいらないでもやっぱ嘘でもいいから優しくしてよ
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南北の諸国産物くらひをり世界の結び目として私
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終電にあすへと生きるたくさんのあはれいのちは涙ぐましも
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隣国の戒厳令に在りし帝国におもひはす令和六年
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