葉舟
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読売歌壇入選・読売俳壇入選。

スーパーの刺し身国産少なくて黒潮熱く魚も捕れず
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叩くキー目に沁むモニタ青光りあとどれくらい退勤時間
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残暑にてもうしばらくは冷コなど飲むかと職人仲間と茶店
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しんみりと祖父の思い出懐かしむ頑固職人ノミを握る手
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鉛筆の短さ気づき持ち替えるあともう少し画廊の展示
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蛇口から水滴ポトンと落ちる音静まる部屋でテストを受ける
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気にしないでいてと言って去る君の背を眺めつつ胸に込み上げ
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サンダルの化け物が出た泣く息子遊んだ夏を思い出したの
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雷神と風神描く宗達を想像しつつ曇天を見る
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カップ見て陶器か磁器か悩む母伊万里焼だと教えてあげる
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ふと光るスマホのガラス太陽の日が跳ね片目ギュッとつぶりて
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棒飴を子供がねだる秋祭り僕振り返り君は小走り
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老親の手を引き二人散歩する昔は母が僕の手引いて
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川面にも流れる想い浮かび行く果ては海まで届けと願い
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合いの手を入れる漫才寄席の奥暖簾をめくりコンビながめる
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美味なお茶抹茶茶碗を傾ける手の名物をじっくり眺め
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知り合いと出会い挨拶マアマアと頭を下げてお互い汗が
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流水で洗う取れ立て野菜見て暑さも消える台所横
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勢いの良い玉投げるピッチャーの右の肘には細い傷跡
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いつまでも嘆くことなど無いなどと友の言葉でまた歩み出す
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深くなる水面ミナモの縁を覗き込む揺れる水草光に影に
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モニターのマウスポインタ指し示す数字に飽きてコーヒーマシン
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とりどりの色が差し込む教会の荘厳な影ステンドグラス
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想い出が心の底に浮き沈みこんな時には沈んで欲しい
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靴ひもを結んで伸びをする君を蹴りたい背中と書く本もあり
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寄席に来て三枝と米朝名調子次の出囃子聴きつつ外へ
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情けないことなど言うなと叱る父もう鬼籍へと旅立つ夜明け
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苦しみに似た言葉など言い飽きてさて朝一番に水でも飲むか
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皮膚の下紅く破れる屈辱か火のような血が湧き上がりたり
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飛び去りしあの影どんな鳥影か気持ちは既にあの人離れ
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