葉舟
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読売歌壇入選・読売俳壇入選。

しらじらと明ける朝焼け涼しさがだんだん暑くなる時過ぎて
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カブト虫捕まえに行く雑木まで蜜を塗ったら明日まで待って
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嗚呼なぜかなぜか知らないこの気持ち恋と言うには狂おしすぎる
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川沿いの家の暮らしも長く過ぎ涼しい風にも慣れた年月トシツキ
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夏祭り焼きトウキビをかじりつつ隣の君を気にしたりして
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意味深な言葉を聞いて涙ぐむもしかしたらそれって告白
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新しい気持ちになった始業式ちょっと苦手の科目も努力
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顔に浴び冷たい水の爽やかさタオルで拭いて窓から光
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朝からの上司の叱責身に沁みて次の仕事は直すと決意
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影法師グランドに伸び響く音ミットにボールを繰り返し受け
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見に来てよ君の声聞く台所パプリカの色鮮やかに映え
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カブト虫そろそろ道具揃えだす息子もなんか忙しそうだ
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まあなんて事なのと言う叔母を見て満面の笑み甥の合格
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色ガラス使ったコップ手造りの職人の技切れ味スッと
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川べりを歩む足下影が伸びもう川面まで紫になり
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とりどりの色紙遊ぶ子どもたち参観の日も晴れて良かった
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見ず知らず声かけられた女性から道を聞かれて残念な気に
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伸び代がある年頃と言われたりあの大木の如くなれれば
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だらしなく着崩すパンツダンサーのカッコが良いと思う思春期
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流麗な音が流れて窓ガラス風吹く音がかすかに聞こえ
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ああアレか父の呟き耳にして亡き祖母好きな干菓子を買いに
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読み終えたドグラ・マグラの文庫閉じさて休日の午後は出かける
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導きの手さえ来ないとく君に何と声をかければ良いか
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濡れた道黒い雲間クモマに光射すふと気持ちさえ明るく変わり
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たらちねと言われて意味も分からずにジッと見つめる教科書の隅
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かぶる水キラキラとした粒落ちて光るプールの水面ミナモが揺れる
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蟷螂トウロウカゴに入れたる子供の目笑みを浮かべて声発したり
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屈強な武士達まみえた合戦の寂しき影が風に変わりて
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夏の雨慌てて走り込むヒサシ思い出すのは出会いか別れ
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名物の茶碗を師から手渡され震える指で茶筅を回す
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