ひたすらに眠ることと食べること 愛しさ増して 我が家の老犬 \ もうすぐ17歳
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空を飛ぶ夢など見たことないけれど自転車からはいつも落ちてる
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あの日さえ離れてくれぬこの思い抱えて歩く枯野の草を
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心配のしすぎと友に言われても手の鳴る方へあなたはだあれ?
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三十一の文字は牢獄ならずと舎にいへ蒸し焼かる牝鶏
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「三人で来たかったね」と逝きしを偲びつつ行くコスモスの道
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ありがちの言葉机に残されてあなたの居場所は遠い日の午後
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長押しで電源を切る親指がたしかに息の根を止めていた
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入り浸る飲み屋の影にいる子猫そっと抱き上げ毛づくろいする
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大陸の 友と語りて笑いあう 小さき外交 祈りかさねて
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滝の音聞こへ来そふな油絵の水霧飛び来て吾にかかるごと
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想い出は街をぐるりと歩いた日 兄の遺した紬をほどく
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雨の日の黄シグナルは寂しかろう心の岐路にひっそりと立つ
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父さんのお母さんおばあちゃんから僕の子へ繋がっている眉毛のアーチ
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目薬をささんと上をみれば空、カラスよこぎる いっぱいに空
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幾人の旅立ちの日を立ち合いて去年の夏のぬける青空
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独り身の寂しさ煮詰めたかのようなレトルトカレー食む寝正月
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そんな夜はひっくりかえったスリッパとお話するのさ。おもて向くまで
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ただ焦がれ貴方に会えたそれなのに 遠く掴めぬきみの手のひら
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「わたしのお母さんはおばあちゃんです」ちょっと恥ずかし次女の作文
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噴水が落ちる間際に映し出す街は眩しく崩れていたり
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寒風に負けるもんかと下向きの椿の花が一輪二輪
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搜すあて会うつてなども閉ざされて屋根からの雪ドドドっと落ちる
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初雪が名残りの柿を白く染めめぐりそこねた季節を隠す
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見上げれば紅梅咲いてこの空のどこかにきっと精霊はいて
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一筋の祈りみたいな名前やね「のぞみ」私は東京へ発つ
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習い事ともに学びし青年の病いに伏せつつ心痛しんつうきわむ
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肌と肌触れ合うことの滑らかな心地の中で夜溶けてゆく
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行った店 歩いた道に観た映画 記憶の花が咲き誇ってゐる
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嵩高に積まれる雪を眺めては大きイチゴをひと口に食む
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