チクタクと響く 動かぬからだにフラッシュ焚いて流れる朝露
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一隅を照らす灯りの石蕗つわぶきは誇らず咲きて落ち葉を抱きぬ
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綿棒を鼻の奥まで差し込まる あの検査が厭で医者には行けぬ
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天海の冥色めいしょくまとい鬼気ひそみ背に打ち寄せる波の慟哭
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綿棒の検査を受けて結果待ち 「はずれ」を願う妙な籤引き
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なぜダメか教えてほしい 自販機に拒絶されてる硬貨はわたし
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「じれったい」安全地帯の曲を聴く コロナの症状一進一退
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晴れ渡る 母の生まれし 日に思ふ 空襲逃れ 生き延び『ツナグ』
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恋の病どんな娘でもつらいから君のすきなバンドの曲聴く
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私から旅立ち誰かの物になれ集めて生やしヘアドネーション
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嫌いだよ好きでもあるよ人なんて完全無欠は息もできない
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あれよあれ… あれだってばさ… あれだって! 日に日に増える 夫婦ふたりの会話
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インフルやコロナでなくとも風邪は風邪 微熱こらえて営業回り
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秋冷しゅうれいに負けじと 庭に咲き誇る 見頃の尽きぬ マリーゴールド
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死んだなら何が出来るか知りたくて試しに死んでも戻れませんよ
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奮発しピザを取ったがその味が塩分過多で吐きそうになり/味覚障害?
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誰だってまぶたの裏に隠し持つ今よりもっと高かった空
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あらたまの茜さす空澄み渡り憂き世のおりを染める東雲しののめ
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さりげなく餅の話題をはさむ母そうきたかって話題をそらす/介護
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冷へ込みの深まりぬ 霜月の朝 止めるアラーム 冷ゆる指先
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眼下から 紅葉こうよう映る せせらぎを 無で眺めつつ カニを追いかけ
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天守から 木曽川眺め 時が過ぎ 携帯アラーム 我にかえって
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線路沿ひ 微風そよかぜ揺蕩たゆたススキ 通勤を飽きさせぬ風景
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アゲハ蝶 ビオラの花の 蜜吸ひて 西陽に光る 美しき羽
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自分では死ぬことさえも出来ないとベッドに乗せられ管を繋がれ
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ダンディーで 寡黙な喜寿の わが部下は ポテト大好き 笑顔でほおばる
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行きつけの店 バースデーサプライズ 居合はす客からも拍手を浴び
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戯れに浅瀬に立てば止めどなく打ち寄す過去にさらわれゆきぬ
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風邪ひけば生姜の辛み際立ちぬ 喉によろしと人は言ふけど
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抑えても咳の暴発止めがたし 今は出るなと頼んでみても
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