ありがちの言葉机に残されてあなたの居場所は遠い日の午後
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入り浸る飲み屋の影にいる子猫そっと抱き上げ毛づくろいする
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大陸の 友と語りて笑いあう 小さき外交 祈りかさねて
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滝の音聞こへ来そふな油絵の水霧飛び来て吾にかかるごと
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雨の日の黄シグナルは寂しかろう心の岐路にひっそりと立つ
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父さんのお母さんおばあちゃんから僕の子へ繋がっている眉毛のアーチ
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目薬をささんと上をみれば空、カラスよこぎる いっぱいに空
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独り身の寂しさ煮詰めたかのようなレトルトカレー食む寝正月
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そんな夜はひっくりかえったスリッパとお話するのさ。おもて向くまで
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ただ焦がれ貴方に会えたそれなのに 遠く掴めぬきみの手のひら
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「わたしのお母さんはおばあちゃんです」ちょっと恥ずかし次女の作文
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噴水が落ちる間際に映し出す街は眩しく崩れていたり
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寒風に負けるもんかと下向きの椿の花が一輪二輪
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初雪が名残りの柿を白く染めめぐりそこねた季節を隠す
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見上げれば紅梅咲いてこの空のどこかにきっと精霊はいて
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一筋の祈りみたいな名前やね「のぞみ」私は東京へ発つ
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習い事ともに学びし青年の病いに伏せつつ心痛しんつうきわむ
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肌と肌触れ合うことの滑らかな心地の中で夜溶けてゆく
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行った店 歩いた道に観た映画 記憶の花が咲き誇ってゐる
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嵩高に積まれる雪を眺めては大きイチゴをひと口に食む
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晴れ空に老若男女集う日の美よ美のままであれ航空祭
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外交の都合に翻弄される熊猫クマ 日本恋しと鳴いてはおらぬか
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来世とか あるとしたらば 犬かネコ 木とか花とか クジラがいいな
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遠出して昔の赴任地通りなば 思ひ出手繰たぐりて多弁となるつま
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雪にさす 朝陽あさひの色は 生成り色 忘却の彼方かなた 竹を編む人
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悲しみの 雨にうつむき 泣いてては 空に昇った 虹に気づけぬ
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きさらぎの 神に捧げる さかきには 新芽がのびて 雪のふる春
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いつもなら隠さず物言う賢人の言わぬ本音に優しさを見る
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カサついた くちびる見つめ 今夜だけ 映画のような 君を信じる
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退職の日は近づきて 吾の中に 被害者という 鬼が目を出す
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