いや違うそのエピソードは会長じゃなくて社長のエピソードだ 
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予定より早く終わって暇だから好きなアイドルで打線を組む
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おも浮かぶ そろばん塾より帰る吾を 頬被りの亡母はは夜道に待ちをり
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文化祭の舞台でぼくの決めゼリフ飛ばしたあいつ 今は警官
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のこす べにと同じに つややかな 躑躅ツツジと錦木 くれないの赤
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じゃが芋を黙々と剥くピーラーは二十余年の現役選手
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田舎町にトパーズ色の光差す夕焼けチャイムの「恋は水色」
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クラウドと同期できない夏のきみ 指の脂で画面が曇る
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きみにだけ見せた一話のドキドキを今も探して作家になった
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大空に 大鷹おおたかの舞う 夢を見て 腰は痛いが 心晴れやか
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悔いばかり蘇りきて寝付けずに夜の静寂に雨音を聞く
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「談笑に俺の独唱聴かせたる」勝ち負けなんぞまだ追う気かや?
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新米が 吾子より届き 涙出る 親馬鹿ながら 孝行息子
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失言の恐怖症って言いながらいっぱいしゃべるあなたに安堵
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雨音に 慌てて布団取り込めば もう晴れている 遊ばれている
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またですか?(笑)言いたげに言う「コロナです」 サディスティックな医師の微笑み
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「微かに」が良いのだと知る散歩道 金木犀のシャワー浴びつつ
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泣き顔の 眉にも似たり 紫の 細き三日月 連れて歩く
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夫居れば歩くことなどなかったと落ち葉踏みしめ通院の道
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歩けばこそ見ゆるものあり秋の野に知らぬ花の実紅く熟して
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白壁の土蔵を覆う蔦紅葉きらめき揺るるそよ吹く風に
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厭な予感のどがイガイガしてきたぞ これは違うと自分に説明
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薔薇のトゲプチッと取ってツバつけて 鼻の頭に可愛いピノキオ
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チクタクと響く 動かぬからだにフラッシュ焚いて流れる朝露
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綿棒を鼻の奥まで差し込まる あの検査が厭で医者には行けぬ
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天海の冥色めいしょくまとい鬼気ひそみ背にぶつかりし波の慟哭
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綿棒の検査を受けて結果待ち 「はずれ」を願う妙な籤引き
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晩秋の 頼りなさげな日差しでも 燃える赤い葉 心にくれる
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「じれったい」安全地帯の曲を聴く コロナの症状一進一退
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早朝に 落ち葉掃除を する翁 挨拶の声 思わず笑顔に
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