キョロキョロと 置いてきぼりに気づいたか  白鷺しらさぎ 一羽 仲間の後追う
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スッキリと枝切りされた柿の木々 実りを終えて青空仰ぐ
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嗚呼こんな時もあったよね 姉妹きょうだいで 母の遺影の写真を探す
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終焉の時が近づき母想う 夏の再会 も一度かみしめ
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うたごころはや死にしかば現實の實ももたざるはなごろもかな
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さればいにしへの戀はらからの今際の面散る昨日いきてしか
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山の端へけぬるかたへへ花霞たつけふをかぎりのいのちならまし
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まこと亡びとももふ歌たらざりしいきのこりとはわがことならば
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佛頭焚かれ やかれもせずにをのをのがとらはるるは上手ならずや
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人間に意思などあらじ 「むかふ家に百合の黄の花がたつたやう」
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さばさばさばこきくれなゐのはねごろもたててふるなむしらかみのゆき
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雪花ききづたへなる聖靈の耳霜灼けてなほ靑かりしかども
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やっちゃった! 気が弛んだか ぎっくり腰 嗚呼また始まる 動けぬ日々が
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祖母の手に見える干し柿焦茶色しわくちゃだけどそのぶん甘い
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君が過去詠んだあらゆる葛藤がどうしようもなく私でもある
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松の枝堪えきれずに折れている幹の中身を雪に埋めて
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鍋の出汁沸いて昆布を取り出せば冬はゆっくり時間がすぎる
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この電車動くと君は過去になる雪がやむころ想い出となり
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朝になりジャムもつけずにパンかじる生きたくもなし死にたくもなし
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友からの「HELP!プチ鬱」ライン見て可笑しくはあり聞きたくはなし
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暗闇の中で煌めくシャンデリア五色をうそぶく悪魔の手招き
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咲いたから急いで君を呼んだけど来ずじまいだね死んだミニバラ
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小さな子コンクリートの道を蹴る巻いた尻尾は自信の証
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やわらかく降る雪見ればよみがえる雪かきをする父の姿が
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カレンダー今年初めてめくった日新たな私の老いがはじまる
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立春の朝の日差しは透明で隣の家の屋根の雪落つ
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地方都市イオンモールと市営バス 屋根のカラスがまた増えていく
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胸痛み必要悪は叩かれる最期に魅せる小林多喜二
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すっきりと伸びていってるもみの木と折れ肌むき出すもみの木痛し
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ごみ捨てを君がする前名前なき家事をしている私を知ってる?
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