人生の 単位足りずに 留年し 神様からの 居残り授業
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戦争にゆかさるるわれらの平和 「今そこにある危機」を忘れて
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父母優生学に分別すはなはだしくおそろしき医師ある
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老犬キミはもう聞こえてないのね雷が 逃げ回ってたあの頃懐かし
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あいどるの靴のなかを調べたら五寸釘のひとつやふたつ
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メイクして着飾るよりも起きたての君の顔こそ魅力じゃないの?
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桜木の並木に降るる花吹雪古い団地を淡く抱いて
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突然の雨に二人は目を合わせ 同時にひらく傘がぶつかる
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大の字に寝っ転がって昼寝する 風鈴チリーン 涼風運ぶ
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カートから 桃をもどして キウイにし 豆大福は 空気となった
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チチチチチ 朝一番の台所 何処にいるのか ここにも秋が
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来週は秋のお彼岸らしいけど積乱雲は山盛りのまま
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の岸も の岸もなし 海原を 白銀に染める 羽田の朝陽
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たくさんの具材をそれこそ生姜まで千切りにして金平きんぴらひとつ
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伝説がはじまりそうな顔の子が駅のホームにつま先で立つ
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シャーペンで引いたみたいに細く降る雨の日だけは詩人になれる
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ひきだしの奥のフリースひっつかみ季節は急ぎ3マス進む
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虚空から何を招いているのやら 逢魔ヶ刻に揺れるススキは
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じゃがビーとジントニックがあったらな 月のほかには何も見えない
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一つ石二つ体を寄せ合いて一つ衣の夫婦地蔵よ
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電線のスズメをぜんぶ奏でたらラフマニノフが聴こえるだろう
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寝る前のポテトチップスばりばりと 月と一緒に太る晩秋
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冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
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壁に穴母の眉間に皺ふたつ少年たちは大人になりぬ
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あさまだき夜と朝との境目でまどろむ時間わたしの時間
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寒い朝父の寝床は天国で煙草の匂いきらいじゃなかった
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ふるさとに向かう列車に乗るときは十の子どもにわれはもどりぬ
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幼らは今日も哭いてるあのまちで世界は何もできないままで
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昇っては沈みあしたもまた昇るお日さま私がんばれるかな?
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一面に白き寂寞降り注ぐ庭にくれない差す寒椿
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