野良猫をとんと見かけぬ町となり駅前開発ついぞ始まる
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ご近所の子供と遊んで洗われる再び汚れるおばちゃんだけど
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風冷えの 夜はポトフで 温まり 街も嵐の 熱気に包まれ
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桃林は花盛りなり喜寿の春楽し日もあり夢持ち生きる
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春だから訪問看護師入れ替わり前任者の今ずっと気になる
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術もなくニュース見つめる白鳩の口に咥へし反戦ポスター
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地球儀をまわせば指が街を消し 僕らは桜の圏外にいる
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晴れ空の下 走るバスの研修車 桜吹雪のエール受けつつ
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花散らし 頬を撫でるあの風を 僕の手中に収めたくなり
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不運から愛されている女あり男の裏が見える眼を持つ
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最終便  繋ぐ右手の温もりと左手刺さる入場券と
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辛ひ時 腹の底から 絶叫を上ぐる代はりに 三十一みそひとに綴づ
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葉桜や川辺をゆけば陽を浴びて水面みなもを飾る花筏かな
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絶海の小さな野原で浴びる春クローバー群れ紫ポンポン
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原チャリの女性ひと 白きヘルメットの絵 おちゃらけた顔したスヌーピー
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別れの日散りゆく花に送られて残り香撒きつ花道去りぬ
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心地き湯加減に包まれし宵 一日ひとひの疲労 心労かす
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葉桜に感謝をしよう花びらをつまむ指先おでこに触れた
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はな咲くも 風雨が散らし 形無かたなしに  憂世うきよを写す 春嵐しゅんらんの候
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ほろ酔いの花渦まいて桜みち春の嵐に蒲公英の咲く
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校庭のソメイヨシノも静まれり学科授業の開始を待って
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原谷の 花見に集う ともがらに 弥生召されし 君はあらずも /挽歌
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豪州の肉を噛みつつ和牛とはかくも遠きか年金の日々
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「重たいか」心配そうに母の声 荷を持つための我が手なりしも
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鳥の歌いつしかやみて花寒に空の涙の音のみぞする
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門口に座布団積みて哄笑わらひと ズレた軸に手添えなきを悔ゆ
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人間の 春を見続け 人間の 醜さなんか 知りたくなかった
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混じり気のない殺意だけ転がして明日の運勢占ってみる
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旅に発て着の身着のまま知らぬ街立つ駅頭の新鮮さ
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映画の 登場人物に 憧れて コートにブーツで お上品ぶる
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