もやい解き子ら旅立てば食卓に影のひとつが縛られてゐる
16
月めくり世界遺産のカレンダー行きたい国が毎月変わり
16
花びらにほのかな霧の咲きなびく紫淡い胡蝶の蘭や
15
レンギョウの明かりのともる通学路転ばぬように迷わぬように
14
間違えて間違い抜いて辿り着く住めば都で眺める虹よ
11
銃座にて 見据える仇は 幼き日 我と遊びし パン屋の息子
12
ひたすらに幸せだけを詰め込んだ箱庭の中微睡んでいて
10
飛行機に乗ってどちらへゆき女婚活のためちょいとヒマラヤ
11
往来の絶えた通りをからっぽの郵便箱が否認している
10
ボイジャーが宇宙の果てを目指すころ私は部屋の灯りを点ける
10
夜明け道 足もと照らす水たまり 夜中の雨の匂いを残す
10
リクルートスーツの彼女の哀しみが伝わらずとも沁み込んでくる
10
街灯にユスリカの群れ 東京にまだ居場所のない四月の僕ら
9
あったかい日のあとにまた寒い夜酒蒸し作り昆布茶を飲み
9
白雲をまばらに隠す鳥たちは天国なんて目指していない。
9
水瓶の水を分け合う民として近江にありし工場研修
9
世界からこまごま飛び出る糸くずで作ったの、極彩色の繭
8
「水の色は水色ですか」と問うている 朝日を弾く水面を見ている
8
さようなら 最期の別れ 休んでね 記憶とともに 涙が溢れ
8
逆風で腹一杯の鯉のぼり。吾にはなきその強きメンタル
8
かお皐月さつきの空に遅桜人目もあらでひとり散り失す
16
幼き日の孫動画見る かたはらの眼差し見れば 子も親なりぬ
20
胃の中のドロドロ抱えて会社道 蛹の中は醜いものだと
7
夜更けて 雪降り積もり 日は昇り 独り雪掻き  人笑みこぼれ
8
フラレぬる博多名代の石材屋「売り物すべてはかいしたい」と
7
三時頃雨は止んでて陽は照ってだが散歩する気力はなくて
7
柔らかな愛だけ信じていたいからシフォンケーキにホイップ添えた
7
沈黙の長さを別の感情にすり替えられてしまう雨の日
7
治らないわけじゃなくって治したくないから抉った もう別の傷
7
命尽く ラストページは静寂の すでに届かぬ 我知らぬ父
10