吹雪後の満月が照らす人々の必死の除雪語る雪塀
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目玉焼きつぶれたけれど気にしないパジャマのままの休日の朝
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モーレツを装うスーツ纏っても毛玉だらけのパジャマがイチバン
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先人の 運んだ 丸太と岩の道 踏みしめてゆく 三輪山登拝
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少年の墓前に咲ける白薔薇の枯れて散りゆく戦場の町
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檜葉ひばの木の枝の中には遠い土地香りの中に私の中に
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地震にもクマにも負けぬなぜならば母を守る使命があるから
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次々と 食べ物こぼす 子どもらに なす術もなく 茄子ひとかじり
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見切り米 半額処分に 飛び付くも 見切られてなお 高く感じて
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内側に残るレッドに先ほどの口づけ思うマスク生活
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楽になるために赦すのか 眼の前をただ茫漠と暮古月逝く
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「寒いね」と言ってもそれはひとり言 「寒いね」と笑う君がいたなら
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やる事とやる気が上手くからまらず「まぁいっか〜」がわたしを救う
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いつの間に「お母さん」とはわたくしのこととなったの覚悟もせずに
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突然の手術の姉を見舞う午後思いがけない笑顔に出会う
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窓開けて透明な空気冬ざるる消えてゆくならこんな朝がいい
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薄暗く冷たい雨降るポスターの「階段掃除雨天決行」
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父母を父母と呼ぶこと出来るそれって当たり前じゃないよね
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老いて目も うとくなる日々 縫い物はせぬが料理はまだまだいける
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死ぬるとは夢から醒めることであるだからこの世を愛しているの
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夏からは病に伏すという君の住む街は雪 今日も明日も
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師走はね まことにまことに 師走なんだ 押し寄せる コロナとインフル
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冬の夜救急に立つ半袖の温きナースのみ手にゆだねる
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本心を探すのだけどどれもみな眉唾もので嘘くさくって
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監督の喝よりずっと効果あり タイムアウトで君を見つけた
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電話口 後輩の声 懐かしく 深夜残業 頑張ったよね
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金色に 棚引く雲の 切れ間から 冬の夕陽が 光り輝く
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あるがまま受け入れようか抗おか 加齢の波にゆらゆら揺れて
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三十一の 言の葉ほどけ 湯に浮かび 掬いては結い またほどきたる
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「キャンセル」の陰気な語感いとわしく 「風呂スキップ」と我は言ふなり
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