帰り道 花びら乗せた野良猫になぐさめられて 3マス進む
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雨上がり 川の両岸一面に 活き活きと咲く 野の花愛らし
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ただ一つ作れる料理はカレーなり 夫の定番メニュー 母の日
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言の刃を ふりまわしたい気分の日 斬ったら切れていたのは自分
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「行って来ます」出勤する息子を見送れば ほのかに漂ういつもの香り
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髪なびく車掌の流るる横顔をページめくれぬ車窓から追ふ
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どくだみの花咲き初むる朝の雨心は道に惑ひぬるかな
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ゆるされぬひとがゆくときかかわりしひとのおもいはどこへむかうか
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浪人生 ふと死にたいと 思う夜
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石鹸のあわ黒くなりし小さきて井戸より出づるスイカの赤さよ
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母の手のぬくみの残る古き棚かはらぬ場所に我が箸のある
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左腕メメント・モリの文刻む美容師の人所作美しく
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蝉たちはすぐに鳴き出す雨上がるこだましていく生命いのちの音色
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キッチンに鎮座している鳳梨ほうり一つ今日の私の心の気球
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少しずつくらくなってく嘘みたく終わらぬ季節の終わりを想う /恵雪様に共感を込めて
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てのひらに収まる小さなスニーカーそんな季節もそろそろ終わり /吾子三歳
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白桃とプラムの香り 線香と夕立あとの路上の香り
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紙巻きのくわえタバコは夕暮れにぽつと灯せりノスタルジーを
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君がためテクノロジーに背を向けて今朝も落ちゆく高台の雫
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あした咲く つぼみさがして 安堵する 半分いじょう かれてる朝顔
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今回はきちんとサヨナラ言えました 来世でまたお逢いしましょう
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傷ついて 終わる恋愛 それでも良い。 何でも良いから 恋がしたいのだ
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君からのサヨナラメール優しくて 未来永劫みらいえいごう月は綺麗だ
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逢えなくて話せなくても大丈夫 そうたましいで繋がるふたり
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愛された記憶があれば生きていく 勇気が湧くさ前へ進もう
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学校を 休みて母と 飯を食ふ 外の喧騒 茫然と聴く
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惣菜を皿に乗せずとも小言を言われない一人暮らしの空虚
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彼岸過ぎヒョロリ伸びくる曼珠沙華風にゆらるる残り香の舞い
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灯の薄き道の真ん中ひきがいる追い立て追い立て虫の音のむら
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打ち水にきらめく芽なり紫陽花の挿し木を包む秋風の色
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