ありがとう あなたはたった半年で、全部愛する理由をくれて/ちょっとだけエスパー 文太
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白馬の鬣はためき雪よりも白き吐息で天を駆けゆく
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バス停も正月ダイヤが貼られててこんなとこにも年の瀬が来て
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動かぬと持ち込まれたはWindowsXPエックスピー賀状印刷だけのシステム/いと懐かしき
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君が居ぬ こころの穴の 大きさに 別れて気づく 君のツラさを
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朝靄の中に光の染み入りて白木蓮の蕾ふくらむ
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お経より ボレロがいい と言っていた 父の墓前で 15分間
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僕だけの全米泣いた真っ青な日だったなあまた明日へ忘れる
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ひとりなら、自由で穏やかに過ごせるの 君といる理由を探してるけど
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きたないもきれいも全て薪にして 煤の中でも歌ってよ、スター
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水飲むとずっしり重くなる胃が好きだ 人ってただの筒と思えて
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天高し ノートみたいに端っこに明日の献立書いてあるかも
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痛くない傷に限って誰からも見つかりやすい場所についてる
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初雁の遅れ啼く聲かれがれに蓬老いたれみそらもろとも
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にんげんのことばがつうじないまちでにんげんとしてくらしています
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嵐吹く 私の中の海もまた 光のどけき 日を 願いつつ
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大病をせし弟よや健やかに暮らしておるか案じて祈る
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金魚妻 わたしの鉢はちいさくて 今は自由に游いでいるか
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国会のテレビ中継見入りつつ行方を案ずまつりごとかな
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秋が来る 息子殺した秋がくる 落葉のよに 踏みつけた道
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陽のひかり、きらめく流れ、雲が差す。輝きは去りて夜が来る
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畏れつつ自然のかたちを見過ごして先回りしてまた猛けの余
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バスツアー波静かなり大洗たまの遠出に幸せ覚ゆ
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1122… 溜め息つきて 足袋を履く 遺影の妻へ「行って来るょ!」と…
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最期だけ自分の声で泣くことを許されているガラスの欠片
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きしのふたおやの声おもはする こはるひよりのやはらかな朝
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指先が母になりゆく初冬の夕 ポテトグラタン肉じゃがにする
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亡き父へのダイレクトメールまだ届きとりあえず生きていることにする
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山茶花の花びら降るる日溜まりの僕に秋の日静かに降るる
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芳香ほうこうが 我の頭を ぬくとめる 妻がのこした 毛糸の帽子
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