障害者手帳の相談したあとにオーロラグレーのマニキュアを買う
15
降りてくる 浴衣姿に 目を伏せて ズボンで登る 駅の階段
14
ふりはらう 女の髪の 仰ぐ香に 吹かれて私 脇役と知る
13
長生きをしないつもりで生きてても千百円の指輪に迷う
10
ハンガーに かかった浴衣 出番なく くたびれている 来年こそは
12
湯上りの蛍光灯のちかちかよひぐらしのねのきえゆくことよ
8
なれないと知っていたけど将来の夢の欄にはメタモルフォーゼ
7
この頃は、体がいちばん謎です。微熱は出るわ体重減るわ
10
庭の端 茗荷がたんととれました 酢漬けにしよか 味噌で漬けよか
29
車窓から嬉しそに手を振る人の 先にも手があり それを見ていた
10
戦後っ子貧しき日々もありたれど平和の国に生きる幸運
24
遥かなる夢路は迷路 ゴールまで行ける造りじゃないんだ、どうせ
7
夕闇の波間漂う灯ろうの仄かな灯り我が想い乗せ
20
仄朱い灯り水面にゆらめいてスターマインに夜空きらめく
20
果肉入り飲むヨーグルト ヨーグルト過ぎる世界にかすかに果肉
9
ドイツ語で「はなれないで」と話せるようBleib hier と唱えつづける
9
朝顔をいけた花瓶を置いたからいっしょに見よう 帰らないでよ
12
髪型を鳥のトサカに見立てると見える世界が少し優しい
13
大丈夫 怖いことなどないんだよ だって僕たち手をつないでる
14
猫たちはやっと気づいた冷却のマットの良さに 夏も終盤
30
目の前を日焼けした子が駆けてゆく慌てなくても夏はあるわよ
30
いつだって元気なふりの向日葵の夕暮れの背にかける労い
32
我がつまの作りしカレーは絶品で娘を誘う口実にもなり
31
今日もまた暑くなるのか 涼風と虫の音いたる朝の平和よ
24
ねこたちに休みはないから日曜も同じ時間にご飯をねだる
28
午後7時 「暗くなった」と呟いた 鬱で休んで 無駄にした夏
12
いつもなら野球をみてる時間だが虫の音ばかり響く食卓
26
金髪が風にたゆたう今ぼくは秋のはじめの一つと数ふ
29
床に落つ白髪一本つまみ上げ抱きしめましょう我の人生
28
月光夜どうしようもなく秋の風あしたは桃を買ってきましょう
27