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痛くない傷に限って誰からも見つかりやすい場所についてる
23
初雁の遅れ啼く聲かれがれに蓬老いたれみそらもろとも
25
にんげんのことばがつうじないまちでにんげんとしてくらしています
10
依存せず、期待をかけず、受けいりて
術
(
すべ
)
を覚えし
歳月
(
としつき
)
の果て
39
大病をせし弟よや健やかに暮らしておるか案じて祈る
21
国会のテレビ中継見入りつつ行方を案ず
政
(
まつりごと
)
かな
17
じゃが芋を黙々と剥くピーラーは二十余年の現役選手
47
陽のひかり、きらめく流れ、雲が差す。輝きは去りて夜が来る
8
バスツアー波静かなり大洗たまの遠出に幸せ覚ゆ
16
朝の度植物たちに霧を吹くこれも一つの祈りの形
53
反論を飲み込んだ日のスーパーで長ねぎグッと折り曲げている
29
い
(
1
)
い
(
1
)
夫
(
2
)
婦
(
2
)
… 溜め息つきて 足袋を履く 遺影の妻へ「行って来るょ!」と…
35
最期だけ自分の声で泣くことを許されているガラスの欠片
10
彼
(
か
)
の
岸
(
きし
)
のふたおやの声おもはする こはるひよりのやはらかな朝
22
指先が母になりゆく初冬の夕 ポテトグラタン肉じゃがにする
32
亡き父へのダイレクトメールまだ届きとりあえず生きていることにする
24
山茶花の花びら降るる日溜まりの僕に秋の日静かに降るる
42
茉莉花
(
ジャスミン
)
の お茶を飲んだら 汗が引き 繁忙期なり 正月もなく
27
「胸貸すよ」「助けてあげられなくてごめん」届くLINEに救われて/会議のあと
21
雪原のような白鍵さまよひて悲しき調べ一人辿りぬ
19
太陽になれない我は月になり 静かに君を照らし続ける
45
夜想曲弾かんとしてもその中に密かに宿る夜は逃げ出す
18
これからが寒さ本番膝痛よそんなに暴れないでおくれ、と
26
落葉に侘しさ感ず歳になり残り少ない葉をおもひいる
16
こんなにも積もっていたと時間差でわかる吹雪で見えてなかった
25
地球
(
ほし
)
照らす 今宵の月は 格別で この満月は 二度と観れずや
31
ひなたの猫抱きしめ深く吸い込めば沁み渡りくる宇宙のいのち
23
アッサムを淹れて去年のBlu-ray暖かくしてと祖母が言うから
8
小春日に 黄色の花と 丸い檸檬 浮世離れの 時間切り取る
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少年の墓前に咲ける白薔薇の枯れて散りゆく戦場の町
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