見送って送られてまた見送って「また明日ね!」で、真ん中バイバーイ
32
多摩川を渡り彼の地で酒盛りや ななとせの縛り介護を終えて
27
気にかける親のもう居ぬ故郷ふるさとの天気予報をついまた見てる
26
バスツアー波静かなり大洗たまの遠出に幸せ覚ゆ
16
親も子も 毒も薬も 喰らいつつ お腹くだして うたかた処方
40
朝の度植物たちに霧を吹くこれも一つの祈りの形
52
1122… 溜め息つきて 足袋を履く 遺影の妻へ「行って来るょ!」と…
35
最期だけ自分の声で泣くことを許されているガラスの欠片
10
きしのふたおやの声おもはする こはるひよりのやはらかな朝
22
オリーブの深緑色ふかみどりいろ 空き瓶に薔薇生けてみて勤労感謝
44
清らかな空気に包まれ癒される 小春日和の出雲大社で
38
偉くなど 成らなくて良いわ 風を浴び ぬくい光に くるまれてたいの
25
指先が母になりゆく初冬の夕 ポテトグラタン肉じゃがにする
32
犬を抱き小雨の中を早歩き 師走の足音から逃げるごと
28
芳香ほうこうが 我の頭を ぬくとめる 妻がのこした 毛糸の帽子
30
重き物 心にありて 歌にせば 東雲しののめあけに かせは外れり
21
ひと様の花壇眺めて昼散歩陽に照らされし赤きマンリョウ
34
「胸貸すよ」「助けてあげられなくてごめん」届くLINEに救われて/会議のあと
21
見上げれば朝の光は柔らかに飛ぶ鳥の羽黄色の落ち葉
18
雪原のような白鍵さまよひて悲しき調べ一人辿りぬ
18
生きるのはしんどいことだしかしまだ飯が旨いと白寿の祖母が
28
僕だけが損をしてると思う日よ今日はあそこの餃子を食おう
38
学校の音楽室からもれてくる練習曲を月も聴いてる
31
もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
10
ついさっき嬉しい知らせ届いたの思わずちょっと小躍りしちゃう
19
これからが寒さ本番膝痛よそんなに暴れないでおくれ、と
26
死にし後 人は何処いずこへ 皆行かむ 薔薇色の雲に 問えば消えゆく
21
飽きもせず年毎に編む冬仕事動画介して何度も何度も
27
細胞を ちぎられ検査に 回されて 吾も細胞の 塊と知る
23
寒き夜 湯気は昇りて ぬるき湯を  追い焚き使い 冬は長き湯
18