テレヴィのなかの日の丸にほほゑめる首脳に光差す優生卵
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三十一の文字は牢獄ならずと舎にいへ蒸し焼かる牝鶏
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愛犬の匂いの残るこの布団 そおっと下ろす小さな骨壷
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街角に早くもツリーが登場し 短かい秋が逃げ去ってゆく
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今朝はまた妻が特別ご機嫌で 良い一日が待っているかな
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後輩にもらった絵だけ持ってきた 知らない土地で星を探した
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今少し 眺めたきかな 遠き日の 夕雲に似て 山のに沈む
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覚めやらぬ 夢の疲れに ぽつぽつと 鹿の子絞りに 鳥は群れ飛ぶ
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無人駅 氷雨で濡れる単語帳 私は私を好きになれない
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寒月のうら寂しげのそのままに今年はいかに凍てつく冬か
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万葉の 人に詠まれた 同じ月 やがて令和も 昔と眺む
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見るだけで満足だったあの影を 今は見るのがとても苦しい
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ピークなる疲労の夜に浮かぶ星やさしいオリオン私を照らす
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頼まれて買物提げて娘来しシンクの汚れを見かねて磨けり
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ケアをすること業にする人たちをケアできたならと密かに思い
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「家じまい無事に済んだよ父さん」と墓に供える白い秋桜
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コロちゃんは白の豆柴ポテポテと短い足で庭駆け回る
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火をくべて ほくそ笑む軍需産業 この手にあるは 水か油か
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年末の 夕方の家事 一人聴く 大貫妙子 身体に染み込む
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白き画布に 向えば百鬼夜行する 未知のイメージ 徐々に現る
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床の間の無い我が家のテーブルでちょっと場違い迎春の花
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未来あす思う いいことばかりじゃ ないけれど 続ける日々が 層になるまで
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苦は楽に 痛みは鎮め 嘆きめ ただひとときは このひとときは
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あらたまの 年を祝いて 飲む屠蘇の 去年こぞより酔ひて ノンアルに替え
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初雪に錯覚ごとき起こりつつ木々に花々咲かせおるなり
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蜂蜜を紅茶に垂らす一年が穏やかなれと出初めの朝に
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馬の尾の 顔払いたるを 叱りつつ 蹄油ていゆ塗り終え 仰ぐ落日らくじつ
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必要とされていることの幸福をわたくしは抱く 湯あがりタオル
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いよいよに小さなアパート二人だけ 新婚生活戻ったようで
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明日から 冬将軍の到来とか 小春日和に 歩きに出てみる
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