霜月の 晦日みそかのAEON 人にもまれ 焦がれる静謐 伽藍がらん御堂みどう
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雪原のような白鍵さまよひて悲しき調べ一人辿りぬ
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この窓は オリオンが走る ※大六角を立てて 昨夜は月を 追いかけていた
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こんなにも積もっていたと時間差でわかる吹雪で見えてなかった
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目玉焼きつぶれたけれど気にしないパジャマのままの休日の朝
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モーレツを装うスーツ纏っても毛玉だらけのパジャマがイチバン
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ぬばたまの  暗き心に  あなたの手  そっと撫でると  勘違いする
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少年の墓前に咲ける白薔薇の枯れて散りゆく戦場の町
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神秘なる満月のもと進む帰路一寸先はホワイトアウト/濃霧
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夢に見る祭り囃子と大神楽今も心に生きるふるさと
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可愛いさの裏に秘めたる「毒」に似た「苺」は赤い最終兵器
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去る人の残り香宿る年の瀬に白きサツキの帰り花咲く
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バゲットを竹刀のように持つ母のシチューの味に辿り着けない
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三十年住み慣れた家を後にする また新婚ね 小さなアパート
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七割は幸せな人が三割を補充しに行くコメダ珈琲
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前歯ない姪が「ひみつ」と金平糖くれてゆっくり溶ける手のひら
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寒空に 嬉しい知らせ 届きけり 十二国記の新刊出るって💃
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春告げる鳥のさえずり聞きながら古い外套捨てて旅立つ
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楽になるために赦すのか 眼の前をただ茫漠と暮古月逝く
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「寒いね」と言ってもそれはひとり言 「寒いね」と笑う君がいたなら
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君は君それ以上でもそれ以下でもない その言葉で一歩進めた
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幼き日 愛犬前で 涙して 顔ペロリされ 元気得るなり
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アマリリスと見紛うほど大輪に咲きし花瓶の百合は微笑む
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お正月帰れぬ吾子へせめてもと お菜並べて 居酒屋『おかん』 /家族で忘年会
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涙ぐむ理由がこんなにあるなんてあなたがいなきゃ知らなかったわ
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突然の手術の姉を見舞う午後思いがけない笑顔に出会う
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望むこと一つも叶わぬ人生を幸せだった事にしないで
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年の瀬に 老いたる二人の大掃除 赤き指先息吹きかける 
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焼きそばの湯切りで麺をぶちまけたシンクを眺めどうしたものか
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久方の 雨の早朝 鮮やかな カイヅカイブキ 緑濃く伸び
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