Utakata
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あんなにも憂鬱だった リビングに差し込む光で足を
温
(
ぬく
)
める
10
六歳の子にブチ切れている私 二十年後の私よ助けて
10
ドライブの好きだった母今ならば分かる私も遠くへ行けたら
7
緑児の時期より見知った顔なれば吾子は亡き医師の手には怯えず
12
あたたかな こうけいだけを みていたい わらうこだけを みていたい
21
「取り壊し」の立札かかる廃屋に
的皪
(
てきれき
)
と燃ゆる梅花の
炎
(
ほむら
)
10
甘い夢でしたねいっさいがっさいは ドアを開ければ暖かい嵐
14
脳内の写真館に入り浸り大事なあの子にそっと手を置く
11
脳内の写真館に椅子を出しあの子の前でしばし休憩
9
待っててねいつか行くからその時はチュール持ってく猫じゃらしもね
11
助けてよ 誰でも良くは 無いけれど 孤独に耐える程 若くないのよ
10
透明度
30
%
の富士山をてくてく歩くおばけの私
5
血の滲む憎悪でさへも風葬でいずれ綺麗な骨になるから
12
キャンディーボール 子が持てば古の竜の護りし珠となりにき
7
五月雨の戦場ヶ原炎燃え影なき媼の
背
(
せな
)
は悲しき
8
春キャベツ やわらかくって千切れやすくて もみくちゃの私の芯
6
お魚に春って書いて
鰆
(
さわら
)
です 春が好きなら好きだといいな
14
楽しげな子らの声きく朝の空見上げ我が子の明日をおもう
11
ポリポリとスナック齧る
14
歳幼き君の姿かさなる
9
どうしたらいいのかわからなくっても それでも一歩 この子の一歩
19
修学の旅に行かれぬ子に友が土産持ち来る やさしさの夜
14
連休は 実家に帰れど 家事三昧 この30年 羽休める
(
は は
)
実母
21
おせんたく、
背
(
せ
)
曲げ丸まるぬいぐるみ 天日干ししてほんとごめんね
12
バスを待つ老婆の指と指輪との隙間の三日月形の年月
15
言葉さえ残っていない空っぽで悲しくもないそれが悲しい
11
手に入れたのは幸福な思い出でわたしはなにも失ってない
10
書き溜めたわたしの歌が寄り添ってくれる一緒に泣いてくれてる
15
当たり前の 空気の流れに 流されて 言の葉
溢
(
あふ
)
れ 歌詠みにける
24
妹が アイス棚前に 二十分 選び取るアイスは いつもと同じ
11
あの空に浮かぶ雲みたく風に乗り 君の所へ流れ着きたい
16
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