有明の月の白さを手に受けて雑木林の梢に落とす
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東向きの窓たちみんな輝いて朝を迎える瞳となりぬ
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高い空飛行機ゆっくり交差して西と南に見えなくなった
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独りでに望まぬ道を行く思考 自分も自分の敵なのだと知る
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自我のかじ 乗っ取り企む復讐鬼 憎しみ消せる消しゴムが欲しい
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一月の日射し明るき林間を母と歩けば冴ゆる阿夫利嶺あふりね
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年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
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冬と春満天の空掻き混ぜて入れ替わりゆく如月の夜
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満天の星空の下バス停にぽつり佇むバスは遅れて
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明日には忘れてしまうささやかな事等飛び立て言の葉に乗り
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諦めが悪いくせしてすぐ逃げる 自分も夢を遠ざける者
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惜別の気持ちを込めてザクザクと踏む霜柱少しおどけて
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残月の光冷たき広場からほぼ貸し切りの路線バスに乗る
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山を行けば幹に苔生す桜ありて少し咲く花に風は冷たし
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「オシャレとは我慢!」と昔聞いたよな ちと寒いけどタイトスカートタイトで出勤
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そこここに開花す桜美しく それで十分お花見気分
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浮かれてた 1年後に来る どしゃ降りの 淋しさの雨 打たれるなんて
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お茶したい刺し子もしたい親友とも宛の手紙も書きたし明日の休日
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海外で ツ と シ は笑顔の記号だと 知ってから見る ツツジ にっこり
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娘の誕生木ハナミズキが咲き誇る 遠くから見ても分かるキミん
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よく見るとツツジの蕾並んでる 順番待ちを楽しむように
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モコモコのパジャマは役目を無事に終え ぬくい日差しを浴びた日曜
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呼び捨てで名前呼ばれる幸福感 名付けてくれたばぁばに感謝
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ホカホカと 太陽浴びる猫ちゃんよ あなたはずっと輝いている
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「化け物になれ」と手招く衝動が吹き込む加害 強張る身体
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ありがとねまた会おうねと声かけて 天日干しする冬物アウター
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文芸に選ぶ言葉が中二病臭い自分に恥ずかしくなる
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人間とルールは相性が悪いよう 勝手が好きな生き物だから
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消えたいと願えど消える勇気なく 生きる事からは逃げられない
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目を細め 首を伸ばしてうたたねを 布団なくともいいのね猫ちゃん
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