此岸から 御祖(みおや)を送る 稚児橋の 灯りの糸は 絶えることなく
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年表の どこかに線を 引くならば コロナの前か コロナの後か
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見つめてた ソースの着いた うすい唇 今ではなぜか 思い出せない
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桃の香が ページをめくる 7月の 僕の歳時記 夏が来たなと
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夏休み 強者どもが 夢のあと ソファの下に トリケラトプス
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秋が来て 金木犀が 香っても 削除できない 偽名のファイル
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君がふと あふれるように 笑うから 一滴こぼさず 受け止めに行く
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電線のスズメをぜんぶ奏でたらラフマニノフが聴こえるだろう
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我のため雑草くさを摘んでは土産とす 認知症やまいの祖母の不変の愛情
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「納豆を高速回転させるとき 苛々してるの覚えて置いて」
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哀しみに刹那打たれて落丁の次第に増えし人生を生く
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『目には目を、歯には歯を』とか 言うのなら わたしの手には きみの手添えたい
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落葉らくようのごとく言の葉降ってこい 短歌うたの種なき 硬き頭に
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雨の日の黄シグナルは寂しかろう心の岐路にひっそりと立つ
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火をくべて ほくそ笑む軍需産業 この手にあるは 水か油か
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大群の羽音を追いて空観れば北風彼方故山の威風
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ほうれい線ひっぱり鏡にかつての私呟きたくなりアイラブユー
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降り積もる雪に溶けゆく夕映えのオレンジ色を鞄に詰めて
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くり返しミセス聴く子の傍らで小さく歌う「母の家計簿」/井上あずみさん
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病棟の枝分かれしてく夜たちを引き止めようと非常灯淡く
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頂いたどら焼きおすそ分けしたら別ルートからまたどら焼きが
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父さんのお母さんおばあちゃんから僕の子へ繋がっている眉毛のアーチ
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老猫の病は我を道連れにただひたすらに静謐な時
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親の前 泣けない子供 たちはどこで 泣いてるんだろう 声がきこえて
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えっまじか「今から帰る」の伝言に慌てて温めなおすシチュー
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題名:「朝、カフェにて」 立ち昇る 香を纏う 漆黒の 底ぞ見えたり いざ参ろうぞ
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最近の家電はシュっとし過ぎてて電源入れる術が分からず
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蕎麦買いに 蕎麦だけ買うの 忘れきて おおむね詰めの 甘い一年 / 反省
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床の間の無い我が家のテーブルでちょっと場違い迎春の花
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床の間に 松と大きな 菊飾り 家族の声を 聞く年としたい / 抱負
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