寒き冬高速徐行闇に浮かぶフェラーリ赤く熱波のよに燃ゆ
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溶け残る角砂糖こそ甘かりし夜更けてそこに灯る思い出
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うたげ終え 友飲み残したる 杯の 祭りの後に 似たる寂しさ
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この蜜柑可愛いねって幼児おさなごが笑えば今朝は温かい朝
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いつかまた明るい短歌うたを詠みたいな 秋空のよな澄んだ心で
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歳重ね別れが身に沁む吾がいて別れに慣れゆく吾もまたおり
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この街のどこが好きかと尋ねられ涙を堪え海と答えた
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洗濯機 小春日和にフル回転 空も涙も からりと晴れた
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まるくなるそれはとても難しいケーキのナッペと同じくらいに
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ばあちゃんが大事にしていた金木犀シロップにして思い出を浸す
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蟻地獄ごとく今でも抜け出せぬ 君を想って「たら・れば」地獄
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あの山も この山もまた 唐松の 黄金おうごんの山 ドンと座したり
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赤味噌の味噌汁味が決まらずに 四半世紀も過ぎてしまった💦
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十三夜 見つめる月にごあいさつ 聞いてもいいの言ってもいいの
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鏡見てこんな顔ではなかろうと目を見開いて皺伸ばす夜
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いつもより三割増しの大きさで月は静かに側に来ていた
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奥津城おくつきのきぬぎぬにすそふむ人の 常世とこよにかへす波はあらじと
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里山のどてら色した紅葉は派手さは無くも心和ます
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時知らず 月に朝顔あでやかに 濃紫こむらさきやら臙脂えんじ しぼ
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四季桜 天へ向かいし 枝の先 満月照らす 可憐な蕾を
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縁側は 小春日和の ぬくみ 父の居た場所 子猫の寝床
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冷え増して雨は雪へと変わるらし立冬の夜の静かな儀式
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空いてても一人で行くとこの店はカウンターしか勧めてこない
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錦秋のもみじ映した山の湯にゆれる湯波に吾はほどきぬ
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モフモフの絨毯に変え炬燵出す なにもせぬ日の夫の居場所
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香ばしい枯葉のにおい 交じり合う 小雨の後の緑のにおい
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板前に なると誓いし 友の子の 煮付けを食べる 初のお客に
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お疲れさん 朝の青空 白き月 君は今週 主役となりて
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気をつけろ焼き飯を慌てて食うとカッとレンゲが前歯に当たる
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おまえだけイメージ良いの俺という悪がいるから成立してる
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