風邪の子に焼くオムレツの甘い香と休む仕事の後ろめたさと
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モフモフの絨毯に変え炬燵出す なにもせぬ日の夫の居場所
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帰り際氷のくぼみのところにストロー当てて残りを吸った
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じゃが芋を黙々と剥くピーラーは二十余年の現役選手
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秋風に秋明菊の細き身の白花ゆれて散り行く夕べ
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想い出す時間が徐々に減っていく 気づかないふり今日も明日も
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昼休み空を見上げて伸びをする守衛さんへともみじ葉の降る
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嬉しさに 笑顔があふれ 悲しみに 涙 流せる そんな人が
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ヒリヒリと痛む寒さの帰り道あまりにクリアな星に驚く
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風と言う 獣の咆哮 低く流る の為に甘き ワイン買い置く
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一つ石二つ体を寄せ合いて一つ衣の夫婦地蔵よ
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公園のメリーゴーランド子供らを大人に変えて一人老いゆく
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エンドウの 苗が日に日に 伸びており 秋の陽差しを 栄養にして
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迷いおれば 風をはらみて カーテンは 帆を上げる 今、船出をせよと
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湯たんぽが温め続け待っていた布団の中は愛のある家
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嫌いだよ好きでもあるよ人なんて完全無欠は息もできない
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秋冷しゅうれいに負けじと 庭に咲き誇る 見頃の尽きぬ マリーゴールド
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秋の花色とりどりに無人駅 農高生の手入れし花壇
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病院で 最期に我の 名を呼びし あの日の母が 忘れ得られず
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ガラス越し淡く舞い散ることもなく 変わらぬ私 置いてゆく秋
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さりげなく餅の話題をはさむ母そうきたかって話題をそらす/介護
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アゲハ蝶 ビオラの花の 蜜吸ひて 西陽に光る 美しき羽
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青色に ラッピングした 恋という 砂糖菓子の溶け 雲のてのひら
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アパートでこっそり君と十二年 僕の魂 猫色帯びて
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自分では死ぬことさえも出来ないとベッドに乗せられ管を繋がれ
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霜月の 高き秋空眺むれば 北から飛び来る白鳥の群れ
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行きつけの店 バースデーサプライズ 居合はす客からも拍手を浴び
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今朝もまたルーティンひとつ崩れゆく 生きづらさ的ルーティンの翳
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城勤め無難な黒は好きなれど不思議と水色効率上がり
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さび色の 切れたネジ山 見て焦る 自分にも開けられなくなっている心
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