夜風には若葉の匂い溶け出してひたひたひたと夏は近づく
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夜風吹く音聞きながらスマホ出しぽちぽち綴る 日々のあれこれ
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哀の香 夜風に混じり 消えてゆく 命の煤煙 君には秘密
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夜風吹く君への気持ち夜露なく。僕は独りでベンチプレスさ。
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夕立にやわらかく濡れた右肩が ある夏の日を特別にする
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嘘をつくこともなかったまだ君を知らないままの世界線では
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夏の雨には体温があったから思わず傘を閉じてしまった
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陽に干した布団のように心地良い三十五度の万年床は
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月さんと 夜風にあたる さし飲みは 炭火のつまみで 今宵も一献
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晴れた夜 夜風になびく 黒髪は 月光に照り 白絹しろきぬのよう
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もう陸は遠い 人魚の私には奪うことしかできない ごめん
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粘膜で触れ合っている世界一近いはずなのに分かり合えないね
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お盆過ぎ夜風涼しくなっていた。網戸ごしから風を尋ねる
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夜風吹く 秋のかおりを 運んでは 芋栗スイーツ 恋しい季節
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希望なら手に入るけど絶望を歌うためには足りぬ文字数
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夜風吹く 秋のかおりに ほお寄せて 思いは恋か 秋の夕餉か
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いたずらにボディーシャンプー泡立てて投げつけたよな秋空の雲
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街中に反芻されたあの時の 言葉が僕と同化してゆく
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エチオピア 見たこともない故郷の 匂いを嗅いで 少し落ち着く
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この涼しさを覚えていたい次の夏まで 私だけが忘れてるのかも
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来ぬバスを 待ち侘びて鳴く 雨夜鳥 跳ねる雫の リズムに乗せて
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日常に 少しの噓を 散りばめて 繋ぐ言の葉 紡ぐこの歌
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振り出づる鈴虫の声弱るなり夜風や寒くなりまさるらむ
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マヨコーンピザのコーンが転がってどこかへ消えた金曜の夜
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死んだツバメよ 明日を飛べない冷たい羽根よ 何を残して空に還るか
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音楽になりたい 何もしなくても美しいまま存在できる
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ふんわりと 金木犀の 風香り 本でも読んで みようかと思う
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眠たげな 二人の隙間を吹き抜ける 青い夜風は行くあても無し
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帰り道 秘密の友達 ビルの陰 ツナ缶片手に 「んな」と一声
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紡がれた言葉を するめの如く噛み 広がる味は 純文学の
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