「お母さん寒かったね」と初雪をかぶりし母の墓を拭いぬ
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気が狂う ほどの激しい 静寂が 君と僕の 横たわっていた
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未来あす思う いいことばかりじゃ ないけれど 続ける日々が 層になるまで
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感情を表すことが不得意で真っ直ぐ言える人が眩しく
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風生まれ そら舞うたてがみ 技ならぬ業より出づる つよき足音
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銭湯のえんとつ消えてのっぺりとつのを失くした下町の空
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はからずも連れて帰った参道の 玉砂利たちは靴底におり /「初詣」
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団体に寄付したぬいよ、さようなら かわいい天使にもらわれてよね
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「ごめん」より「おやすみ」と言う大学生 許されているのは私のほうか
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ひび割れた 吾の手のひらの ぬくもりで いやせるものが 有るのだろうか?
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見慣れない 寝癖つけ走りくる吾子の 涙の跡を見ぬふりし抱く
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白い空をじいっと眺めている猫のうしろ頭をにんまり眺め
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くれないの実の鮮やかが目に沁みる 我が難(病)転じてくれるか南天
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年始から 残業続く 吾の身にも 福は来たりと 半月の言ふ
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結露、結露 滴るしずく拭えどもパッキンの黴ニタニタと黒し
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母が逝き未だ悲しい涙出ず葬式欠席後悔もなく /悲しき現実
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暖房の部屋の窓際ピキピキと氷の城のような冷気よ
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不安でも一日ずつを生き延びて 詠み返す日に泣けますように
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時雨来る予感のあたる冬夕焼け 着膨れて行く五分のポスト
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大家らの寝静まる朝ひとときの 安寧求めジャズなど流す
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タイムマシーンあればあの日の僕の背を 叩いてやりたい「傲慢だよ」と
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悪くない情緒不安定は君じゃないその原因が君じゃないから
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なぐさめも励ましもまだ受け取れぬ貴方の胸の閉じたグローブ
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雀二羽 ぷっくり膨らみ 植え込みに 天敵のない 青空のもと
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束ねたる規定の髪は一尺を超えて初めてウイッグになる
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白みゆく凍てる道行く車にはあからむ富士のあしたが乗りぬ
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俺の番人生ゲームサイコロを 振るようにして今日を引き受け
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縁側で三つ編み結ひし母の手の熱を帯びゆく幾春ののち
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「泣けるわ」とスマホを閉じて見上げれば三十一文字の空広がって
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家族写真 いるはずだった 吾子の分 猫が一緒に 笑っているよ
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