歳を取ると欲しいものがなくなると思ってたのに
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今日ばかり頭を抱えて歩きたい 重力に負ける圧縮血管
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緑内障 忘れた頃に やって来る 地震と同じ 災いの元
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とてつもなく巨大な壁を軽々と跨いでやって来る巨人の夢
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窓から見る 夜の道路に は点きて 外の寒さに 手さすり暖とる
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冬景色全くなしに 寒さだけ からとした風そんな冬も良き
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霙舞う 深夜の小路 物静か 屋台の明かり 思わず寄り道
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もし君の頭上に雫が降るときは傘を渡せる一人になるよ
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フリクションの音で高鳴る年度末知らないことに飛び込む春に
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怖いのはインフルエンザやコロナより小じわとたるみ隠すマスクで
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うつむいて君から話してくれるのを 返す笑顔を準備して待つ
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下の名で呼び合う仲に憧れて あなたは呼び捨てで私はさんをつけて
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お互いに点を奪いあう甲子園クーリングタイムスタート
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新品の白タオルでは切なさの吸収力が少し足りない
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猛と暑が掛け合う日々を生きており大袈裟な息、我にさせたり
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花までも星に匂えり我に降る震えて眺む天の川かな
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ぎゅうぎゅうの引き出し開けて哀しみを捨てよ無言の声が聴こえる
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金髪が風にたゆたう今ぼくは秋のはじめの一つと数ふ
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冴えた月見つつ風ごと吸い取りて心に浮かぶ月を眺むる
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床に落つ白髪一本つまみ上げ抱きしめましょう我の人生
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惜しむよに水色の雨落ちてきて僕らの肩にピリオドをうつ
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君の頬真夜中想い手を伸ばす一瞬月に触れた気がして
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コーヒーが 飲めない君の ままでいて 一人で先に 進まないでよ
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被災者の誰もがそこに戻りたいみんないいのよ故郷だもの
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これほどに紅く染まるか一面に散り敷かれたるもみじ踏みしめ「鶏足寺」
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友よりの画像に一面「サンゴ草」佐呂間湖畔に秋の息吹が
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探しまくる 行方不明のスマートフォン 所定の位置に鎮座ましまし
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陽にあたり風に吹かれる心地よさ これだけでいい生きるしあわせ
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まな板の上に採れたてカボチャ待つ夫の出番半切り作業
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展開が強引過ぎて感情が置き去りのまま終わった映画
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