おいしいとごはんをたくさん食べるとこ いちばん好きなきみの良いとこ
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受話器越し 苦手な沈黙 それでもいい あなたの呼吸で 眠りにつきたい
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晩飯の鮭がしょっぱく水を飲む今から寝ても一度は起きる
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寒空に薫るおでんの湯気三つ共に頬張った友よ元気か
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かきくらす波のよるべは隔つとも松の根ざしは一つなりけり
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三日ぶり独り夕食ぎこちなく実家と同じ番組を見る
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家もない 友も失い 流浪する もったいないな 戦争ごとき
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捨てられぬ物も想いもあふれすぎ部屋が心がゆらゆら揺れる
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「幸せに」祈る数だけ離れられぬ 不器用な愛を春の日に干す
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子を想ふ心に果てはなかりけり離れがたきも母の真実
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春浅き苔の美し信濃路を歩かば一枝桜咲き初む
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冴ゑ返るベランダの朝 残月を探しつ聴こゆ さゑづりの歌
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北風の冷たさ今日は有り難し 我が家九階までの階段昇りつ /エレベーター取替工事十日間
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木の芽風 綻び進む雪柳 髪切り心軽やかな道
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身を屈め目線合わせる水仙にご機嫌を問う迷惑かしら
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歩道沿ひ並びし 蒲公英タンポポの黄花 散歩の犬目線の春かな
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また来年 雛人形を 片付けて 弥生も半ば 陽の向き変わり
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恋人じゃないがお袋大好きで「妣(かあ)さん二重焼チンするね」
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飯事ままごと乙女椿ヲトメツバキを洋菓子に見立て ケーキ屋営む幼日
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大病を 乗り越え祝う 誕生日 父の破顔に 箸を贈りし
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ゴミ出しもスニーカーの紐締めて まあまあハードな階段生活
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ぽんと出す持病の薬がひとつ立つおやっと思ういい日と思う
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いきなりの 子の帰省さえ 非日常 徹夜の家事も 今は懐かし
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パンくずが 一つ落ちては 一つ拾う 一年後には 一枚のパンかな
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目を閉じて 香る梅の木 凛として 一本の木の 生命いのちの神秘
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とばり降り 雲ひとつ無い 月光浴げっこうよく 照らす大地に 芽吹く若草
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福井にて 黒き涙を 流す地よ のこせし子は今 四歳よつになる
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敷布団 折り折り壁折り上で寝て気分は野良猫 世界を眺め
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ぴかぴかの首輪光らせゆくいぬのやわらかな眼の愛おしきかな
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その角を曲がればたぶん消えてしまう あとは何事もなかったように
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