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八月
(
はちがつ
)
の光る地面に百日紅
梢
(
こずえ
)
の影を揺らして燃える
20
戰犯とは不肖の綽名われいくさに倚らざれども死なず
3
國民総戦犯ゆゑに絶たれたる昨年の忠魂碑はたれのはか
6
われ義しき國民なれば崇拝すクリスティアーノならず 墓を暴かむ
5
復活祭へにがき蕗煮ていもうとはロザリオなどゆめかけざらむ
4
父殴てる馴犬哀し。頸枷に「愛われを創れり」彫られて
5
神神に主神のあらば 靑藍の仔を降しまづ人間を亡ぼす
5
ぎっくり腰これも気圧のイタズラか 台風一過そろりと散歩
23
期せずして三度帰省のこの夏に 悲しみの中にも故郷は嬉し
33
ハッとした 能面のよう母の顔 もう一度見たいよ昔の笑顔
21
歩けぬが可哀想とは言わないで
老犬
(
キミ
)
は大事な我が家の希望
28
寝ることが仕事の老犬昼時は しっかり目覚めてオヤツをねだる\体内時計?
23
窓際で外に向かって最敬礼 思わず笑みがこぼれた
豆苗
(
とうみょう
)
20
種々
(
くさぐさ
)
の虫の音色を聞き分けて秋の
夜
(
よ
)
夢の中で覚めたり
15
青柿の枝をはなれて地に落つるまでの時間を思い遣る朝
18
眠れない夜ひとり作るオムライス 丁寧に丁寧に慰める
10
歌いつつ自転車を漕ぐ人が行く秋の真昼の心地よければ
18
ふみしめた冷たい土が呼んでいる わたしはいつかあの中にゆく
9
ああ犬よ毛玉散らしていた柴よ 瞳曇っても愛しかったきみ
15
思い出は電車に乗って帰り道川面に映るみかんの夕陽
21
真白な猫の毛並みをお手本に 清くフカフカ生きると誓う
11
枯枝に風の浮かべる月の舟響き冷たき銀色の笛
15
有明の月の白さを手に受けて雑木林の梢に落とす
17
東向きの窓たちみんな輝いて朝を迎える瞳となりぬ
18
高い空飛行機ゆっくり交差して西と南に見えなくなった
15
独りでに望まぬ道を行く思考 自分も自分の敵なのだと知る
14
自我の
舵
(
かじ
)
乗っ取り企む復讐鬼 憎しみ消せる消しゴムが欲しい
14
一月の日射し明るき林間を母と歩けば冴ゆる
阿夫利嶺
(
あふりね
)
15
年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
17
冬と春満天の空掻き混ぜて入れ替わりゆく如月の夜
42
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