犬を抱き小雨の中を早歩き 師走の足音から逃げるごと
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石垣に枝垂れて生りし柿の実に薄雲染めて夕陽差し来る
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幸福も不幸もきっと平等だ街ゆく人のきらめく幻影
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小春日の軒に吊るせる干し柿を揉めばやはらに秋を包みぬ
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市民展 友の切り絵の見当たらず 老々介護の苦悩を見たり
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名産の こんにゃく芋を 掘る農夫 腰曲がりても 後継者無く
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この顔にピンと来なかったとしても君はそのまま幸せであれ
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笑いつつ 手を取り走れば 粉雪が なれが睫毛に 我の睫毛に
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陽射し浴び 窓辺に見える パンジーの 花に水滴 輝きを増す
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裸木の枝振多彩なるを見て 描き写したし絵心あらば
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重き物 心にありて 歌にせば 東雲しののめあけに かせは外れり
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週明けて全快とまで言えぬ身に慈悲深きかな師走の陽光 /20
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整形とハリの先生真逆言ふ気持ち泳ぎて画像に目凝らす
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ケースからカードを出してひと手間の番号質問マイナ保険証/今日から移行
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外の風部屋に取り込み揺れている 1枚となる壁のカレンダー
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学校の音楽室からもれてくる練習曲を月も聴いてる
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「納豆を高速回転させるとき 苛々してるの覚えて置いて」
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もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
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夕暮れに 東の空に 浮かぶ月 流れる雲に 隠れて光る
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夜想曲弾かんとしてもその中に密かに宿る夜は逃げ出す
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こちらでは冬に珍し曇り空明日あすはいっぱい寒くなるらし
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秋のの 夏より強く我さそふ 果実かじつかほり、血を吸う薮蚊ヤブカ
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北の国 貰いし土産 食べ頃に インカのめざめ 調理に迷う
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死にし後 人は何処いずこへ 皆行かむ 薔薇色の雲に 問えば消えゆく
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揺れる木々 りては渦を巻く枯葉 もりに満ち満つ冬の音聴く
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半日で解けきる雪のふがいなさ 役員会の行きつ戻りつ
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明日から 子供の頃をやりなおして あなたみたいに息を吸えたら
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朝焼けの グラデーションに 言葉なく 絵画のごとく 空に描かれ
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五円玉 穴から覗いた幸せは 蝋石・チウインガム・紙芝居
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残余てふ時を数える年の暮れ 「忘年会」を誘う罪びと
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