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犬を抱き小雨の中を早歩き 師走の足音から逃げるごと
28
石垣に枝垂れて生りし柿の実に薄雲染めて夕陽差し来る
34
幸福も不幸もきっと平等だ街ゆく人のきらめく幻影
30
小春日の軒に吊るせる干し柿を揉めばやはらに秋を包みぬ
40
市民展 友の切り絵の見当たらず 老々介護の苦悩を見たり
46
名産の こんにゃく芋を 掘る農夫 腰曲がりても 後継者無く
28
この顔にピンと来なかったとしても君はそのまま幸せであれ
7
笑いつつ 手を取り走れば 粉雪が
汝
(
なれ
)
が睫毛に 我の睫毛に
22
陽射し浴び 窓辺に見える パンジーの 花に水滴 輝きを増す
35
裸木の枝振多彩なるを見て 描き写したし絵心あらば
16
重き物 心にありて 歌にせば
東雲
(
しののめ
)
の
朱
(
あけ
)
に
枷
(
かせ
)
は外れり
21
週明けて全快とまで言えぬ身に慈悲深きかな師走の陽光 /
20
℃
34
整形とハリの先生真逆言ふ気持ち泳ぎて画像に目凝らす
31
ケースからカードを出してひと手間の番号質問マイナ保険証/今日から移行
21
外の風部屋に取り込み揺れている 1枚となる壁のカレンダー
29
学校の音楽室からもれてくる練習曲を月も聴いてる
30
「納豆を高速回転させるとき 苛々してるの覚えて置いて」
17
もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
10
夕暮れに 東の空に 浮かぶ月 流れる雲に 隠れて光る
27
夜想曲弾かんとしてもその中に密かに宿る夜は逃げ出す
16
こちらでは冬に珍し曇り空
明日
(
あす
)
はいっぱい寒くなるらし
21
秋の
か
(
・
)
の 夏より強く我さそふ
果実
(
かじつ
)
の
香
(
かほ
)
り、血を吸う
薮蚊
(
ヤブカ
)
15
北の国 貰いし土産 食べ頃に インカのめざめ 調理に迷う
25
死にし後 人は
何処
(
いずこ
)
へ 皆行かむ 薔薇色の雲に 問えば消えゆく
21
揺れる木々
降
(
ふ
)
りては渦を巻く枯葉
杜
(
もり
)
に満ち満つ冬の音聴く
31
半日で解けきる雪のふがいなさ 役員会の行きつ戻りつ
25
明日から 子供の頃をやりなおして あなたみたいに息を吸えたら
11
朝焼けの グラデーションに 言葉なく 絵画のごとく 空に描かれ
24
五円玉 穴から覗いた幸せは 蝋石・チウインガム・紙芝居
18
残余てふ時を数える年の暮れ 「忘年会」を誘う罪びと
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