しまひには たれのこりて見やるらむ 皆紅みなぐれなゐの空のはりを
4
猿が去るカエルが帰る犬もいぬ仲間とケンカ猫寝込む
11
ペイペイと言うたび偏差値1下がり夕陽の母に叱られている
6
開かぬ目で 晴れるんかい、と呆れてる 呆ってパックンフラワーみたい
4
再会を約した店も今は無し白い花咲く独りで来たよ
10
在りし日の繁栄かくも失われ通勤電車のホルマリン漬け
6
神無月時雨はさだめなけれども木の葉の降らぬ里なかりけり
8
円盤をコマ送りしてあのファンサを幾重に脳に焼き付けている
5
紅生姜の翼を広げイカロスは二駅先まで歩いて帰る
6
新米のとぎ汁 植木鉢に撒く いただきますの似合う夕方
15
寝転がり 夜更けに読む ミステリー 今からここは 殺人現場
8
凍雲いてぐも双手もろて温めるいかめしと浜のカモメが旅の証人
9
まさびしき初冬の路地の夕暮れに詠草落とす灯下のポスト
13
〝映え〟なんか気にせず自分の〝好き〟にだけ正直にアップするあげるインスタが好き
10
幼子と二人でシーソー筋肉痛 もはや大人のひとりスクワット
10
庭のすみやさしい光の浮き上がる黄色く笑むはつわぶきの花
13
いつからか自己承認の小道具だ結末決まった小説を書く
7
春秋の花の時にも咲かざりしわが身古野の霜の下草
9
巻いてるがゆっくりとなりそのうちに止まるのだろな母のゼンマイ
16
たまにある 暖かい日が 狂わせる もう諦めた 寒くてもいい
7
義姉あねになる人から「あいつが寂しがる」とか言ってたとLINEタレコミが届く
4
唐突に突風が来て地上から 音を消し去る星月夜哉
4
「また明日」その一言が嬉しくて帰りの坂を駆け上がって行く
10
ほんとうの気持ち隠して信じてた 誰かが決めた幸せの色
13
あきのよにうたよむひとはモンスター やまのせんべーバリボリ食らう
5
珍しく 山手線が 事故遅れ 寒風の下 迂回する朝
4
買い物のカートうっかり手がすべり少しいびつな茹で玉子かな
13
息凍る 朝に犬連れ行く我の 背を生まれたての朝日が温む
14
廻る寿司無防備に食べし日は遠く 今の「普通」もいずれこうなる
8
アマチュアかプロかなんかはわからんがもはやプロだと思うのだきみ
6