朝の度植物たちに霧を吹くこれも一つの祈りの形
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1122… 溜め息つきて 足袋を履く 遺影の妻へ「行って来るょ!」と…
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最期だけ自分の声で泣くことを許されているガラスの欠片
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きしのふたおやの声おもはする こはるひよりのやはらかな朝
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オリーブの深緑色ふかみどりいろ 空き瓶に薔薇生けてみて勤労感謝
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清らかな空気に包まれ癒される 小春日和の出雲大社で
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偉くなど 成らなくて良いわ 風を浴び ぬくい光に くるまれてたいの
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檜葉の枝杉の木の枝花屋にて並び始めて冬の訪れ
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犬を抱き小雨の中を早歩き 師走の足音から逃げるごと
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亡き父へのダイレクトメールまだ届きとりあえず生きていることにする
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石垣に枝垂れて生りし柿の実に薄雲染めて夕陽差し来る
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芳香ほうこうが 我の頭を ぬくとめる 妻がのこした 毛糸の帽子
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重き物 心にありて 歌にせば 東雲しののめあけに かせは外れり
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ひと様の花壇眺めて昼散歩陽に照らされし赤きマンリョウ
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「胸貸すよ」「助けてあげられなくてごめん」届くLINEに救われて/会議のあと
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見上げれば朝の光は柔らかに飛ぶ鳥の羽黄色の落ち葉
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生きるのはしんどいことだしかしまだ飯が旨いと白寿の祖母が
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もう過ぎた十一月に降る雪は私のようにきえてゆくもの
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ついさっき嬉しい知らせ届いたの思わずちょっと小躍りしちゃう
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これからが寒さ本番膝痛よそんなに暴れないでおくれ、と
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死にし後 人は何処いずこへ 皆行かむ 薔薇色の雲に 問えば消えゆく
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飽きもせず年毎に編む冬仕事動画介して何度も何度も
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細胞を ちぎられ検査に 回されて 吾も細胞の 塊と知る
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寒き夜 湯気は昇りて ぬるき湯を  追い焚き使い 冬は長き湯
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寒空さむぞらに 風に叩かれ 舞ふ紅葉もみじ 我も叩かれ あかぎれ痛し
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落葉に侘しさ感ず歳になり残り少ない葉をおもひいる
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再来年のチケットが来たミュージカルどんな私が観に行くのやら
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群青と 黒き稜線 月あかり 今年最後の 明日は満月
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初雪や誰の上にも平等に細き枝にも縁取るごとく
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目覚めれば 庭一面の銀世界 厳しき冬に覚悟を決める 
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