朝六時 いつもの親子「いってきまーす!」ランドセル二つ 元気に駆け行く
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孫が来る 退散するまで待っていよう 朝の掃除が夕方になる
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奇蹟のかけがへは誰がつぐなふか瞭然と蘇りなき慰霊碑の石
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戰乱の臭ふ 澁谷交差点群衆も靴鳴らしかへらず
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呪はるる國民たるを耐へず戰争の責任転嫁さる 死者へ
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増長すこの若者らみづからを皇帝と呼ぶすめろぎ擱きて
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歴史喪失そののち四月朔へと雪 長靴の裡入るけがれ
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翰筆は機関銃より強きとか 誓約書へ白黒き撥字止めて
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聖マティアス銀行口座開設ゆ種入麺麭殖えゆきて弾けり
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渋沢栄一銀行券煌々しく詐欺す 殖民に朝鮮國ありしをしらず
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兌換紙幣ひらひらと燃ゆ戦前の国家ゆのがれゆくはムーシェ
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0は1へ球体は立体となりぬ人体迷宮幾何学の大理石
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黄金比律に六弁花百合の落雁はかわきをり 誰そこぬも
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人体機関へ昏き淵あり鐡芯の骨組みきウェヌスは婦人
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老犬キミはもう聞こえてないのね雷が 逃げ回ってたあの頃懐かし
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一歳が初めて言った「パッパッパー」アンパンマン お熱の今日もしゃべり続ける
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早々はやばやと鳥は見つけた秋の味 庭に散らばる柿の食べかす
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夕立に涼む身を突く蝉の声 わずかばかりと雲追う心
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すわ陽炎 冷え込む耳朶にサイレン音  野分祭りか窓辺の午睡
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虫の音が 誘う枝葉のさざめきに 薫る季節の色を想う
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颯爽と走る若者つい見とれ 背中を見送る私と老犬
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画面には笑顔溢れると孫が 心によぎる会えない寂しさ
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かき氷味を覚えた一歳は 大きなあーんで兄の後追う
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賑やかなさえずり声に見上げれば 豊作の柿でヒヨドリ宴会
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翔平の 刻むベースは晴れやかに  押して迎える秋の朝
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秋探す 夕の陽のジョグ  息急いて 脚止め迷う夜道かな
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満月に ウサギを描く心持ち  子犬の毛にも ススキを愛でる
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「まだ読むの?」疲れた兄ちゃん逃げたいが 一歳あと追う「もういっかい!」
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やっぱりね楽しさ倍増アンサンブル フルートの醍醐味仲間と味わう
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二十年ここで寝たんだこのベッド 嫁ぐ日近し涙あふれる\思い出
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