もう父に 届かぬ歌を 詠む夜道 去年の桜は今年もそこに
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あかり むせび泣くよな 虫のは 夏のおわりを 告げる絶唱
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来客にすました高い声を出す米寿の母の現役感よ
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原爆忌から敗戦忌へ傾るおほきみに籠る聲の玉音
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朧月と寄り添うように山々は佇んでいる穏やかな夜
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言葉にはならない気持ち 春風が吹いて撫でてくこの感情を
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落涙し 絵になる女と ならぬ我 顔面格差に なお泣けてくる
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サックスの深い音色は時をかけ心に届け夢みるごとし
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携帯も 本も見ずただ 穏やかな 景色を眺む 各駅停車
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あの頃はヒロシマだった広島の戦後八十年も戦前
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ベランダのチューリップ今朝咲きそろい 孫は晴ればれ卒園式へ
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嬉しきは鳥の囀ずり聞く朝と狭庭に開く花を見し午後
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一人背負しょい二人はバギーで「こんにちわ!」細い身体でたくまし 母は / 娘
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猫を撫で コーヒー淹れて ウタカタを あとは天気が 上がるのを待つ
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夜桜が 風にさざめく 根もとには 美しき魔が ひそみ誘う
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五分咲きの 桜の下の ベンチにて 缶コーヒーで 心をリセット
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にぎにぎと はなのもとにて 宴持たむ 花も人世ひとよも はかなくあれば
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春の雨つぼみを濡らし花濡らし 風を誘いて花吹雪へと
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温室に滴る苺の甘さほど想う気持ちは夏を待てずに
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命日は春爛漫の花の頃笑顔の似合う君が決めた日
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涙から笑顔に優美満開は2位発進の春色の自己
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手につかみ 口に入れたい 孫三女 満面の笑み 見とれる時間
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「ジャガイモの芽出た?」「三本な」楽しげな会話を聞きつエアロバイク漕ぐ
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「今ここ」の 感覚がなく なりそうな 優しく白む ワシントンの桜
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みどり濃し湯に泳ぎきる菜の花よ熱燗酌みて早春を知る
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車座で何を語るや若き人 花ぼんぼりに明かりを取りて
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吾の膝で ウトウト眠る 愛しきみ 無邪気なようで 悟りのようで
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この世から逝ってしまった人達と桜の下でおしゃべりをする
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何もない日が幸せと言えるほど 良い環境に置かれてみたい
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聞こへ来るエンジン音さへ春の音 冷気ほどけし朝の向こふの
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