万葉集 栞のページに 遠距離の我が身重ねし相聞歌有り
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遠き日に読み耽りたる 万葉の みたまに橋を架ける言の葉
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ふれあふれあ爆発したら影響を及ぼすくらいすごいふれあ
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人草絶ゑて弔鐘へ祷る慰霊碑へ霙 皇帝とは誰なるか
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敗戦忌 すめらみことへゆくすゑをしめし若き柩工は死せり
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戰犯とは不肖の綽名われいくさに倚らざれども死なず
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國民総戦犯ゆゑに絶たれたる昨年の忠魂碑はたれのはか
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われ義しき國民なれば崇拝すクリスティアーノならず 墓を暴かむ
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知らせ受け義兄あにの葬儀の準備する 近づく台風 不穏な朝に
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蝉の声 嵐の前の静けさか 手持ちぶさたにシフォンケーキ焼く
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ぎっくり腰これも気圧のイタズラか 台風一過そろりと散歩
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期せずして三度帰省のこの夏に 悲しみの中にも故郷は嬉し
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ハッとした 能面のよう母の顔 もう一度見たいよ昔の笑顔
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歩けぬが可哀想とは言わないで 老犬キミは大事な我が家の希望
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眠れない夜ひとり作るオムライス 丁寧に丁寧に慰める
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ふみしめた冷たい土が呼んでいる わたしはいつかあの中にゆく
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ああ犬よ毛玉散らしていた柴よ 瞳曇っても愛しかったきみ
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ガチャピンよおまえはどこを目指すのか己が極地の地平線行く
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人生を達観したかのそんなふうまるであなたはみつをのようだ
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高い空飛行機ゆっくり交差して西と南に見えなくなった
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独りでに望まぬ道を行く思考 自分も自分の敵なのだと知る
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自我のかじ 乗っ取り企む復讐鬼 憎しみ消せる消しゴムが欲しい
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柚子の木に柚子の実のなる庭ありて売却物件なるぞわびしき
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一月の日射し明るき林間を母と歩けば冴ゆる阿夫利嶺あふりね
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ファミレスで2時間位もてばいいこれが笑顔のタイムリミット
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年を経し杉の根元は影差して朝日に映える梢の緑
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手挽きミルゆっくり回す日曜日眠る我が子を起こさぬ様に
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冬七に春三分程日の光 少し切なくなる白い色
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満月に誘われるよに南から一等競い春風は吹く
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ぼたもちを 自分で作って 棚にのせ 偶然じゃない けれど幸せ
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