ここに今 わたしがいると知っている わたしのために篝火かがりびを焚く
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「分かるよ」と絶対容易く言わないで でも君だけは きっと分かって
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鳥籠の中で産まれた鳥は皆 飛び立つことを病気ビョーキと思う
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アスファルト 押し上げ根っこが背のびして 立って春待つ 桜の並木
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そこにある 風じゃない声 耳澄ます 人差し指で評する前に
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君のそのふざける癖をやめないと薬指ごと噛み千切るから。
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こんなにも貴方の色に染められた。傷んで価値が消えた髪の毛。
7
そんなのに誓ってないで神様は君なんだから私を救え。
5
インクとかこんな時代に滲ませて間違えすぎた手紙と涙。
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眠るの耳元にそっと「さんぽだよ」ささやく夫に優しさを見る
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カーネーション長持ちさせるって難しい 日に当て水やり大事な花たち
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スピードに今さら驚く遠い国旅する息子と瞬時のやりとり
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手抜きでも「美味しい」と言ってくれるひと それで上がらぬ私の腕が
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人知れぬ痛み悲しみ誰も持ち 短歌うたで知らさる分かつ喜び
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娘から「これから行くね!」突然に 今日の予定は「孫」に変更
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後追いの一歳児連れてフラダンス ママの背中はゆりかごになり
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プレゼント箱を開けるとまた箱が 最後の箱には指輪がひとつ\思い出①
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「こわれもの」小包届く海越えて 現れたのは ふわふわコアラ\思い出②
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丁寧に紙とテープで修理する 夫と半生歩んだ聖書
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葉も枝も切られてしまって丸坊主 桜の樹々は寒そうに立つ
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ビルケナウにガザの髪触れ合ひ混じり死の後も死者なりき兄妹
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半身不随のあには車椅子へくくりぬ両脚に雛罌粟の一輪 かれき
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獣園に感傷姉妹うちなげくも錘鉛の槍かまへをりし闘牛士
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喫水柩に降る雪柳をとめは蹄鉄を履かせをり 馬に
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油絵のような大雲黄金色 夏の夕暮れただ息を呑む
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復活祭へにがき蕗煮ていもうとはロザリオなどゆめかけざらむ
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蝉時雨 ふと立ち止まり目をつむる 矢の如くゆく光陰の中
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どんなにか素敵だろうかあの人に〝ありがとう〟って伝えられたら
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降る雨の雫の中に秋がある 清めの如くわだちを染めて
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茹でたての枝豆を噛む喜びよ 夏という名のご馳走がある
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