絶版の歌集をさがす 白樺の林のような古本屋にて
26
「寒いね」と 言えば彼女が 手を出して 「手、繋ごっか」と 君は笑うの
15
ダージリン 疲れた体 染み入って 香り佇む 夜の事務所に
27
愛人に合格出来ぬは見た目よりおしゃべり好きで秘密にできない
23
日に三度、犬を吸わねば生きられぬ さふいふ身体にいつしか成った /犬好き
21
厳寒に 餅花飾る小正月 五穀豊穣願ひを託す 
23
飛び立たせたくて放てぬこの腕かいな母という名の檻を編む日々
29
今までの悔い一つずつ拾いゆく暗がりの先に輝きを置け
28
あなたってふわっとしてる誉め言葉みたいだけれどそうでなかった
29
算数か哲学なのかいまひとつ割り切れなきや 離合集散
19
カツぬき梅食べますか天神さんげんかついで本番前夜
20
小寒に黄砂が春を連れて来る ダウンを脱ぎて散歩に出るか
16
ナチスから逃れ「命のビザ」持ちて日本上陸敦賀港なり
29
いくつもの 眠れぬ夜を 乗り越えて 赤く滲んだ手 いざ本番へ/先輩方、頑張って下さい…!
24
忘れゆく父の瞳の澄みゆきて幼子のごとき父を抱きしむ
31
我が妻ををんなとおもふ寒の入り夜のとばりの窓をうつ風
18
万人に 松葉まつば竹節たけふし 梅の実の  如き幸福 われ寿ことほぎぬ
15
積雪の歩道に残る足跡と同じ歩幅で歩くいずさよ
18
わたしからはなれていった心臓が健やかに鳴り続けますように
15
話を聞くとき目を離さないあなたは頭の裏側も見えてそうだね
11
綺麗事口にしていた恥ずかしさ『心はカネで買えないじゃない』
29
そうだよねよく解ったよ心まで動かすものが札束なのかい
21
あなたがさ別れる前に待ったのは『慰謝料いらん.!』の言葉だったか
25
お金では私の傷は治らないこのトラウマも脳障害も
28
怨み節直球投げても良いのなら数多飛び出す堪忍袋
29
「また明日」西日が照らす 交差点 仄かに薫る クチナシの花
22
「ごめんね」を言えぬまま積む言の葉の 尖りて母を、僕を、傷める
34
肋間に貼りしホカロン寝てる間に腰をも癒しルンバのごとく
17
傾いた 店でパン屋を 営んだ アッパレ神戸の 叔母の生き様
27
「愛(かな)し」とは「悲し」に似ててわが胸に一匹の鬼棲ませてやまず
28