ちょっとした狂いで春は涙だけ流れ出胸で受ける術なし
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いねられず 咳止まぬ我が背中をば さすりぬ母の手 幼日の夜半よわ
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ぶきっちょで上手くできずにべそかいた白詰草の乙女のティアラ
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内定も卒論もただの紙だけど 僕は震える肉体ひととしている
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傷が付き触れると落ちる背のうろこ一つ一つを拾いてあるく
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助手席の私を越えて春の山 見えぬ動物けもの呼吸いきに霞めり
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入浴をすれば色々捗るとわかっていても出来ぬ風呂キャン
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墓前には無常を諭す親はなく必滅語る生家の更地
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何年も 無限の愛を くれた母 このままずっと 笑顔でいてね
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西の窓 沈みゆく陽をでた夕刻 今家々の屋根が遮る佳景
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残された夫の動画ひとつ 何度もスクロールし 声聴きに行く
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猫を撫で コーヒー淹れて ウタカタを あとは天気が 上がるのを待つ
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給食は残さず食べるべきなんだああそれなのにキノコが見てる
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プッチーニの アリア聴きつつ 濡れ縁に 爪切りて居き 春の彼岸に
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晩年の母 慣れぬ手つきで嬰児ひまご抱き ひろがる笑顔最後の写真
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花や木々 空の蒼さや風さえも 短歌うた詠みめし日々変わりゆき
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藤壺の花の重荷と伏す影の深きを君は踏みて行くらむ 〈題詠 壺〉
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荒田こうでんあぜにひっそり植えられた膝丈ほどの桜にも春
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晩飯の鮭がしょっぱく水を飲む今から寝ても一度は起きる
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かきくらす波のよるべは隔つとも松の根ざしは一つなりけり
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三日ぶり独り夕食ぎこちなく実家と同じ番組を見る
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路地裏の 街灯の下 本を読む カレーの匂い 叱られる子
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映画あれ見た?なんてことない会話でも スマホ越しだと遠いね 春は
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子を撫でも殴りもしないだろうカメラの前で命を贅沢品と呼ぶ若者らは
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日昇りて 晴れゆく嶺に 陽溜まりて 陽炎揺るる その影菩薩かな
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冬の朝 地に落つる間に 牡丹雪 独りゆく 雪の足跡 振り返り
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大切にしたいと願うあの人の水晶玉を壊して眠る
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自転車の たみも移民申請し ながらスマホが 合法下のジム
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変な人 他人のことなど 気にしない わが道を行く それでいいじゃん
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いいことを 強制すれば 悪いこと 道理に合わぬ 牢獄世界
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