俺だって誘惑したいわけじゃないヒトが勝手に押し付けるんだ
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無条件自分への褒め難しい なんの根拠も信用もない
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我が未来剥ぎ取るように飲むクスリ残り数えつ今朝も九つ
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よるふけて下宿にかえる苦学生 おばさんの 味おにぎりのまつ
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生きてれば 些細なことも 一苦労 楽ではないよ 貧乏暮らし
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白球を追いかけている人たちを横目に独り下校する夏
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隙間から導き出した結論を消しゴムで消してまた最初から
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口角に残っただけの笑み残しどうせなら恥 楽しめよ俺
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おお涼し!ふるさとの朝 天然のクーラーの中で深呼吸する
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真夏日も桜の木陰で癒された 照りつけるにキミが恋しい
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大空にピンクの大輪 芙蓉咲く 色鮮やかに「夏だ!夏だ!」と
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どしゃ降りが上がって一気に蝉時雨 この声もやがては懐かしくなる
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頑なに夏は綿と思ってた 確かに涼し エアリズム着る
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「暑くても食べらさるしょ」の祖父の字と富良野メロンのあたたかき涼
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読みきれぬほどにメールはくるけれど一番ほしい君からこない
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「てへぺろ」の絵文字で終ったラインみてちょっと笑ってえんぴつを折る
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英靈碑肩欠けて零る菊の蘂 かくごとくひと殺むるは雄
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わが祖父は英靈か 虐殺ののち肩口に消ぬる緋の初霜が
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ぼく達の歴史にわたしはいないからヤグルマギクの花言葉って  ?
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「正しい教育と歴史認識のもとにわれわれパリ市民は生まれた」
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シオニズム 角砂糖水へと溶けて水薔薇国家の仔羊の頸
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わたしヒトラー。わたしロベスピエール。もしもし。ユダヤ人を――
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温かいココアを飲めばとろとろと身体の中に灯火ともる
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いつもより数分早く出た朝は空も街もなんかパステル
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明星の方に向かって漕いでいく今日もなんとか稼いだ帰り
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冬晴れの団地の中の公園は遺跡のようで空は静かで
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鳶色という言葉知るあの人を思い出してるその眼差しを
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靴下を、二枚重ねてもよいのだと気付かないままで越した冬
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悪条件の損な仕事を押し付けて定年の花束はなかった
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白鷺よ 優雅に川を 練り歩く 早春はるの川辺は ランウェイなり
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