舌根が苦くて甘い 深夜二時 唾液に溶けた睡眠薬で
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凍える朝 連なるつらら 軒の下 つらさに漏れた 小声の波形
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かなしみの しみ落とすため 探すことば 本に齧り付く ぼくは紙魚
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虫よろしく 日々を蠢く 僕の眼は 鳥のように 魚のようにと
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狭い寝間 子が真ん中で 親が隅 縮こませまいと 窄み、おやすみ
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壊しては拾い集めたぐちゃぐちゃの これの名前は君が決めてよ
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人間と 人間同士 話すより 一人一人が AIペット
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幸福を 語る相手を 間違えて 熱くなっても 喧しいだけ
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最高の価値創出こそぼくのボスあんたじゃないんだおめぇでもねえ
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「いつ来たの?」と訊ねる 小指の先の紅い切り傷
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ゆらゆらと 揺れる私の 手を取りて あの目は君を 見ていたという
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本質が愛なら私は愛せない 私のあなたが増殖していて
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誰しもが 訪う歳を意識せず 気付けば大人 どころか夫なう
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春寒(はるさむ)に 悔いることなし 君の影 朝の陽射しは 夢かうつつか
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人絶えて 訪れ無きは 詫びしからずや 清水湧き凍つ 早瀬渦巻 水しぶき
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歳取って 死んで行くのが 当たり前 葬儀屋さんの コマーシャル聴き
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心捨て ベルトに乗って 運ばれる 製品ですか 人間ですか
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小さなる 虫歯削らず 抜く如き 扉の処理に 異議を唱えき /管理組合総会予算案
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整然と 材刻む音して もうお昼 お腹空かねどランチタイム
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婆さんよ! 笑うくちびる 目に焼いて 枝垂れ桜の 花は散らさじ
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違法改造バイクに「さびしい」とモールスを送られタオルの畳み方を間違える
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青纏い私は綺麗に歪になった 春の売り買いとかしよう
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バスに乗り 向かう病院 着くまでに 乗り物酔いと 人酔いで 
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タクシーで 帰る我が家 三十分 早く着けと 目を瞑る我
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冬深し 茜に燃える 富士の背に 雲海に埋み 薄墨染まる 春隣
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碧冴ゆる 白煙上がる  雪富士の  滑り轟き 山の背なだれ 静けしや
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目の前の 即物的な 幸せが 持て囃される そういう時代
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人類が 魂捨てて 飛びついた 架空の世界 幻の都市
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雨垂れの如き尿(ゆまり)の侘びしさを人麻呂ならば如何に詠みけん /歌聖柿本人麻呂
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お通じという言葉では伝え得ぬ生みの苦しみが三日おきに来る /阿鼻叫喚
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