この世には善人なんて居ないのかそう思わせる人的受難
24
くり返しミセス聴く子の傍らで小さく歌う「母の家計簿」/井上あずみさん
20
子に会えぬ 淋しさ募る 仕方なし 他人ひとの命を 救う為なら
30
喜んだふりして要らぬカレンダーを貰うも恒例行事となりぬ
22
金色の 光幾筋ひかりいくすじ 漏れさすは 樹魂じゅこんの爪弾く 琴の糸なり
21
公園の枯芝に降る朝霜の静けき白で始まる一日ひとひ
27
客室の全てが彼の絵と聞きしK市に生きた「影川」の秋
23
すりきれたままの命とすりきれた弁当袋で季節をこえる
16
日常の 泥の中から ときめきの ことばにのせる 三十一文字
10
腰骨のあたりにホカロン心地よし タオル差し込み じわりと伝導
17
堕天使ルシファーの元の名前は金星で 天上界の専務級とぞ(悪魔①)
16
布教には敵役かたきやくが必要と 降格されしルシファー哀れ(悪魔②)
15
ルシファーを絶対悪と特定す いくさの仕方とさもよく似たり(悪魔③)
15
人といる楽しさ知った三ヶ月「うぇん」とひと泣き呼び鈴代わり
12
新約にルシファーの名はあらわれぬ イエスも意外と買っていたかも(悪魔④)
12
つり革に首を吊られているような懐かし友は僕に気づかず
8
トリシアがあんまり可哀想だから来年スティーブンキングキングの読破を誓う/独り言です
14
いつもより 髪を整え 新しい 服を下して 病院へ行こ
9
くすみカラーが好きだから私もくすむ黄色だけは好きになれなかった
5
降り注ぐ雨のなか一人踊って帰ったらしい 多分朝だったはずの飲み会帰り
4
中冬に ジャンボ翁往く 報せ聞き 天へと一打 ウェッジを打ちたり
8
今日もまた ばあ様たちに 責められて 言い訳をする おいらは爺
4
好きだった駄菓子が僕より先に死に 先月癌で母が、死んだ
5
あの人と趣味が合ってると思ってたベン図の真ん中見ていただけで
7
目を離した隙に本棚を倒すとかもしてくるおじゃまぷよ
4
敵は去り 正論が勝ち 安堵する 笑いが戻り 騒がしくなる
3
ホイッスル 軍事教練 調教に 使うものだと 思っていたが
3
情けなや 人をあたかも 震えさせ 家畜のように 扱う時代
3
人間に 自由の権利 与えない そこは地獄の 囚われの家
3
ぐったりと している娘 背負う時 重いと言った 母の強さよ
3