無機質に暖められた教室の日暮れの速さに感じる寂しさ
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母船出えっさほいさと小舟旅いつかなれるか自由な帆舟
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爪切りに小さな教会描かれて師走なればとしばし眺むる
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恥ずかしい 誰もいない家 ハミングをやめる必要なんてないのに
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人数分お菓子を買って来たのにさ 一人に全部食われて悪夢
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崩壊は 偶然に見えて必然で 乗り越えられない作りをしてる
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昨日よりたしかな愛がほしいから日記に書いたあなたの名前
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フード越し風が鳴るのを聴いている星瞬いて流れて消えて
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風呂桶を少し擦って洗ったと 威張り赦されるの小五まで /五十の大家は掃除もできぬ
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やすらかに息づかいさえ聞こゆればそばにゐるだけそれで足りたり
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夫にもQRコードつけたもれ トリセツ不明で五十年過ぎ
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横文字の洒落た料理は苦手らし冒険いらんと夫は言ふなり
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触れる縁 見るも聞くのも 我が内に 肩先にともる ペテルギウス
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目の前の巨大な愛に気付けない愚かなところも愛おしかったよ
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炊きたての米に納豆、炒め物のせて醤油をまわし食う夜
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此身をば 現世に留めるものは 唯一つ 朝な夕なの スタンプメッセージ /ホットライン
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ダイソーで可愛いピアス買い漁る美女と呼ばれた意地があるから /還暦
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火をくべて ほくそ笑む軍需産業 この手にあるは 水か油か
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易疲労感 脳の病の宿命でちょっとの事でクタクタになる /統合失調症
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就職も範囲が狭い障がい者 若さが欲しいチャンスが欲しい
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本年の最後の会の詠草で乙女恥じらう相聞の歌
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湯気たてた丸ストーブの大やかん 加湿器ミストに消へし吾の昭和
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星空がきれいに見えるスポットがそばにあること忘れていたよ
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灰色の空が心にのしかかる得体の知れぬ不安拡げる
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メイクした特に用事はないけれど化粧の甘い香りがうれしい
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朝からの雨は昼には雪となり追い越し車線を行く車なく
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目を閉じて  今日を据え置き  夢心地  まぶたに浮かぶ  明日の面影 
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明日こそ明日こそはとただ今日を見ないふりする今日この頃です
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年末のスタンプ選び始めれば浮かび来る顔貴方にはこれ
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嘘を吐き重ねた服を脱ぎ捨てて正体見せる月夜の鏡
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