雪が降る むかし絵本で見た姫がガラスの靴を履く静かさで
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丹精を込めたオムライスプレートにあの子は祖国の旗突き立てる  
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吾子からの 包み開ければ ブックカバー い草の香り 心落ち着く
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夫から「買うもの忘れた」LINEあり 吾も忘れて苦笑いなり
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健診を終えた安堵の空腹に熱いお茶漬けご馳走となり
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コミュ力で刺激をピリリと効かせれば仕事は回って密かにニヤリ
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後ろから 刺すのは貴方の 愛錠か どうか契りの リボンを結んで
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形ある物は全て壊れると 覚悟を決めるも時既に遅し
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風そよぐ 他人の芝から省みて 己の芝は無いものと知る
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朝が来て踏み出す足が震えても 残す靴跡 辿り着く場所
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ふがいなく ふがいなく泣く ふがいなく 泣くキミを見て ふがいなく泣く
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氷雨降る 駅のホームに吾一人 警笛の音冴え冴えと鳴く 
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ぼくたちのにてるところとちがうとこ ならべて神経衰弱しよう
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寝入りばなのゆさゆさ揺るる十秒余。「じしんです」とふアラーム響く
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いつまでも なんかじゃなくて いつもです こどもはこども まごはまごです
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ちま猫ちゃん おでんき ポチッと けしますにゃ なんとなくだよ ねこは きまぐれ
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届かぬが貴方を想い夜は長い 寝起きの心は すきだらけ
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風邪っぽく ウォーキングから遠ざかる 私を責める職場の階段
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自転車に 乗って辺りを 漕ぎ回る こんな老後が 残っていたか
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白き息 冬田ひらけておろし風 し日の友よ いざ疾くませ
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世の中は鏡であると承知して逆さのままで冬に慣れゆく
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薄暗い隅っこの方で休んでる 俺は来年どうしているのか
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我が遅刻より 人の命が大事 救護者の無事を祈る通勤/遅延
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人混みの向こうの空にカラス飛ぶ 呪われし身を突くフラミンゴ
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気に入らぬオムツ八つ裂きばらまいて餌だしやがれケルベロス鳴く
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横断を待つ児ら無視の車どもネズミ捕り速度超過取締でもかかってしまえよ
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藤色のレターセットで手紙書くどこかで生きる別の私に
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ためらえど六十路半ばの吾ならば シルバーシートに座っていいよね?
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年末の挨拶回りの帰りがけ スコッチ一杯肴は夕陽
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老人と夕陽の窓とスコッチと なんか俺ってかっこいいよな
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