絵を描くのが好きです。短歌は始めたばかりですが、とても楽しいです。
空に向け小さく息を吐く時の形で咲いていく白木槿 1
立葵刈られて露わになっている長方形の東京の土 1
カラメルは苦手なままだと言う母の隣でいただく濃厚プリン 0
平台の表紙を眺めているだけで広がっていく気がする世界 1
泡立ってカバンの脇からあふれ出て日傘は夏を隠しきれない 4
全開に蛇口をひねる今日からは汗をかいてもよいものとする 6
ウエストを回り続けるファスナーの位置が正午をお知らせします 2
できるだけ会社の椅子を低くして潜水をする 私はいません 4
梅雨入りに備えて今日はとびきりの水玉模様のスカートを買う 1
門だけになった木造アパートに供えられてるコーヒーの缶 2
北向きの窓から入ってくる青い光で洗う染付の皿 0
春の雨ニットベストをひとひらの分銅を足すように重ねる 2
まだ夏になってはいない私(わたくし)が黒いタイツを履いてるうちは 7
枯れている紫陽花の色をパレットに薄く溶いてた中三の夏 3
銀杏の木取り払われたその跡に墓標のような丸い止め石 0
チョコレート色したニットの靴下をたくし上げては幹となる脚 0
紐付けをされたくなくて現金で支払いをする3時のおやつ 0
ぶり返す寒さに揺さぶられていて固まっている蜂蜜だって 0
夫(つま)を待つ夜の欠片を縫い合わせパッチワークの星空となる 1
スーパーにたどり着けずにコンビニで弁当買って帰る花冷え 0
ちり紙を丸めたように咲いているようにしか見えない春もある 2
この部屋でポトスの葉にも私にも等しく降り積もっていく埃 1
洗濯機に履いてた靴下放り込み冷え始めてる春の指先 0
た行その他のプレートの棚にいて輝いている最推しバンド 0
一輪のユリの重さで落ちている腕明け方の床から拾う 5
真昼間の住宅街を縦笛の音だけが行く『喜びの歌』 3
つけすぎた鈴ガラガラと玄関で鍵を出すたび祓われている 0
逃げまわる赤子のようだ掴めないお湯につやつや浮かぶ丸餅 2
電柱に寄せられた雪 ゴミの日が過ぎたのにまだ残されたまま 0
カーテンを大きく開けて雪を待つ 警報なにそれ聞いてないから 2