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絵を描くのが好きです。短歌は始めたばかりですが、とても楽しいです。

ひとしきり部屋中の壁を打ち消えた去年の蝿か 壁を打つ音
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いつまでも手首を冷やす袖口の輪に沿ってしみ込んでいる水
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咲き終えてなお真っ直ぐである菊の茎ビニールを貫いている
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正月の蛇口にこびりついている片栗粉 蛸の唐揚げだろうか
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年明けてまず手懐けている活きのいいカレンダー逆さに巻いて
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温かいものに触れたくて三十九°C のお湯でカップを洗う
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空に手を伸ばして秋の日を浴びた靴下一足もぎたてを履く
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豆乳の賞味期限は来年の4月で春は巡るんだろう
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満員の地下鉄を降り満員の信号待ちの日陰に入る
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白日傘軽く畳んで夏の日を終えた木槿の花横たわる
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足元に立ち見下ろせば真っ直ぐに伸びている影のような寝姿
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検診を終えた体は掬われていつもの日々に放されていく
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シャツの背に滑らせていくアイロンの後に広がっている湖
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旅先で着なかった服ひと払いしてから袖を通して出勤
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空に向け小さく息を吐く時の形で咲いていく白木槿
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立葵刈られて露わになっている長方形の東京の土
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カラメルは苦手なままだと言う母の隣でいただく濃厚プリン
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平台の表紙を眺めているだけで広がっていく気がする世界
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泡立ってカバンの脇からあふれ出て日傘は夏を隠しきれない
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全開に蛇口をひねる今日からは汗をかいてもよいものとする
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ウエストを回り続けるファスナーの位置が正午をお知らせします
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できるだけ会社の椅子を低くして潜水をする 私はいません
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梅雨入りに備えて今日はとびきりの水玉模様のスカートを買う
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門だけになった木造アパートに供えられてるコーヒーの缶
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北向きの窓から入ってくる青い光で洗う染付の皿
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春の雨ニットベストをひとひらの分銅を足すように重ねる
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まだ夏になってはいないわたくしが黒いタイツを履いてるうちは
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枯れている紫陽花の色をパレットに薄く溶いてた中三の夏
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銀杏の木取り払われたその跡に墓標のような丸い止め石
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チョコレート色したニットの靴下をたくし上げては幹となる脚
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